3、勉強会と.....。
第9話 勉強会 1
一歩を踏み出すのが怖かった、と言える。
どういう意味かと言えば俺の状態の事である。
俺はこれまでずっと人を巻き込むまいと生きてきた。
少しだけ経験値を.....。
ゲームで言うランクアップしようと思っても.....足は歩道から進まず。
後ろに戻るだけで歩み出せなかったのだ。
信号はずっと赤で.....横断歩道を進めずに居たのだ。
誰もこの信号を変える事は出来ない。
そう.....思えたのだが。
だけど周りは違うと手を差し伸ばした。
そして俺の赤信号を青信号で破っていく。
何だってコイツらは.....こんなにお節介なのか。
思ってしまうが.....涙を流す点を考えると。
もう限界だったのだろうな、と思う。
身体は、だ。
だから悲鳴を上げてしまったのだろうな。
情けないけど。
だから泣いてしまったのだろう。
思いながら.....桜が舞い散るのを見ながら5時限目の中休み。
ボーッとしていると栗谷がやって来た。
「聞いた噂だけど.....はーくん。デートするんだってね?七水ちゃんと」
「.....どっから聞いたんだよ.....」
「ふーん.....良いなぁ。良いなぁ。私もデートしたいなー」
「.....」
あからさまになってきたなコイツ.....。
栗谷は俺が好きだ。
だから表にだんだんと感情を出し始めている。
推し進めている感じだ。
俺は盛大に溜息を吐きながら.....栗谷を見る。
「.....栗谷。俺はデートを無理にやっている。だから行きたく無いんだ。本当は」
「でも行くんだよね?」
「.....ですね」
「.....決めた」
突然、ふんっと鼻息を荒くした栗谷。
何だよ一体。
思いながら.....見ていると。
栗谷がニコッとした。
「私の家に泊まって」
「.....何を言い出すんだお前は.....」
「おうちデート」
「.....は?.....正気かお前は」
正気なのか?
確かにおうちデートという言葉有るが。
勘弁してくれよ。
俺は.....そんな事をする余裕は無い。
思っていると背後からバシィッと引っ叩かれた。
「この二股がぁ!!!!!」
「智明テメェ!イテェ事を!殺すぞマジで!!!!!」
「テストがもう直ぐ有るだろうが!何?おうちデート?馬鹿じゃねーのか殺すぞ!!!!!」
「ハァ?テメェかかって来いや!」
そんな感じで取っ組み合いをしていると。
栗谷が、あはは、と満面の笑顔を見せてくる。
そして俺達に涙を拭ながらニコニコした。
俺は?を浮かべる。
「本当に仲が良いんだね。二人さん」
「え?.....いや、まぁ」
「まあ.....うん」
「一卵性双生児みたいだね。あはは」
つーか。
そういや思えばコイツから声を掛けて来て.....友人になったよな。
懐かしい記憶だ。
思いながら智明を見る。
智明も苦笑していた。
「お前に出会って最高って思ってんぞ。俺は」
「俺もな。お前が居なかったら.....世界は変わらなかっただろうな」
「ハハハ。.....まあそれは良いがおうちデートの件が終わってない。イチャイチャすんな」
「.....良い加減に諦めろよお前.....」
どいつもコイツも.....面倒クセェこったな。
考えながら.....苦笑する。
すると栗谷が手を叩いた。
そして俺達を見てくる。
「そうだ。みんなで勉強会しない?したい」
「.....勉強会?」
「そうだよ。智明くん。みんなを誘ってさ」
「そりゃまた良いこったな。何処でするんだ?
私の家でやらない?と栗谷は笑みを見せる。
俺は.....智明を見た。
智明は、賛成!、と嬉しそうだ。
額に手を添えながら.....俺は溜息を吐く。
「分かったよ.....んで、いつ頃するんだ」
「今日しようか」
「.....じゃあ七水も誘うわ」
「うん。任せるね」
そうしていると。
チャイムが鳴った。
智明は、鳴ったから戻るわ、と帰って行く。
俺はその姿を見送りながら.....栗谷を見た。
栗谷は再びニコッとする。
「楽しみだね」
「.....そうだな。俺は.....あまりそういうの好きじゃ無いが」
「まあまあそんな事言わずに。あはは」
そんな会話をすると。
教員が入って来た。
俺達は授業を受ける。
少しだけ放課後の勉強会の事を考えながら、だ。
☆
「じゃあ行こうか」
「.....そういや、引っ越した件も有るしお前の家に行くの初めてなんだが」
「あ。そうだっけ?じゃあ案内するね」
放課後になった。
栗谷、七水、智明、俺。
その4人で栗谷の家に歩き出す。
そして下駄箱を開ける。
そこに.....ん?
「.....何だこれ」
縦型の白い便箋が入っている.....ってオイオイまたかよ。
七水の下駄箱の方を見るが.....入れたのは七水では無さそうだ。
考えながら手紙を改めて見る。
すると栗谷が俺に声を掛けてきた。
「どうしたの?」
「あ?いや。何でも無い」
咄嗟にその手紙はポケットに突っ込んだ。
何の手紙か分からないが.....後で開いてみるか。
思いながら.....俺はハァと息を吐いて。
そして鞄を背負った。
「じゃあ行こうか」
「おう」
「はい」
「.....おう」
そして栗谷の家で勉強会をする為に。
俺達は歩き出した。
手紙の事が少し気になったが.....まあ後でで良いか。
思いつつ栗谷に付いて行く。
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