第7話 貴方の事が好きです
この世界は普通に軸を持ってして廻る。
それも.....ほぼ法則通りに、だ。
例えばそうだな。
デカルトの運動の法則の様に一定に、だ。
いや.....ガリレオだろうか。
表現するなら。
だけどそれで有っても。
俺達は廻る様に普通とは限らない。
何故かって?
俺を、七水を、智明を、栗谷を見ていて分かるだろ?
この世界はアイロニーに満ち溢れているんだ。
アイロニーは皮肉という意味だ。
この世界はアイロニーなのだ。
その全てが、だ。
ソクラテスだっけか、そこら辺の哲学者が言った様に、だ。
だから.....上手くいかない。
俺はその様に考えながら.....目の前の智明と話している栗谷を見た。
栗谷は嬉しそうに俺にニコッとする。
智明も笑みを浮かべている。
俺は.....もし。
もしだが、コイツらを俺の事情に巻き込む様になったら確実にコイツらからフェードアウト、つまり遠退くつもりだ。
何故かって言えば。
幸せを壊すぐらいなら離れた方がマシなのだ。
俺は.....他人の幸せを壊すのは好きじゃ無い。
だからもし、何か有ったら。
俺は真っ先に抜けよう。
ただひたすらに願うは.....その時が来ない事を願おう。
思いながら外を見ていると。
栗谷が話し掛けてきた。
「どうしたの?厳しい顔をして。はーくん」
「.....いや。何でも無い。.....お前らが楽しそうだなって思って」
「うん。智明くん、話してみると面白い」
「お。言ってくれるね。栗谷ちゃん。ハハハ」
俺にとって.....幸せとは今の事を言う。
だから俺はこの幸せを壊すぐらいになったのなら。
死ぬ方がマシだ。
思いながら.....会話を聞く。
「次の時間って何だっけ?はーくん」
「次は.....現文だな」
「マジかー。面倒いな。小説を読むとか。ラノベ読む方がマシだぜ」
「それは確かにな。ハハハ」
頭を抱える智明。
俺はその姿を見ながら.....教科書を出した。
すると栗谷が、あ、そうだ、と声を出す。
教科書が無いんだよね、と言いながら、だ。
俺は栗谷に向く。
「じゃあ貸してやるよ。一緒に見よう」
「え!.....あ、そ、そうだね。はーくん。優しいね」
「.....優しい訳じゃ無い。当たり前の事だ」
俺は笑みを浮かべる。
栗谷は、そうなの?、と穏やかな笑みを浮かべる。
そしてチャイムが鳴った。
智明は、んじゃ戻るからな、と戻って行く。
それを見送ってから.....栗谷に教科書を差し出した。
「じゃあ貸してもらうね」
「ああ。一緒に見ような」
そしてそのまま俺達は授業を受けた。
思ったけど.....栗谷はやっぱり頭が良いな。
考えながら小説を読む栗谷を見た。
全くな。
☆
(先輩。一緒にお昼ご飯食べましょう)
(ああ.....そうだな)
メッセージにそう来たので俺は返事を書いた。
そして俺は立ち上がる。
母さんが作ってくれた弁当を持って、だ。
すると、何処行くの?はーくん、と栗谷が止めた。
「.....ん?.....ああ。一緒に飯を食べたいと七水が、な」
「.....ふーん。後輩ちゃんが.....ね.....」
「何だその目は」
「.....私、はーくんのお弁当作ってきたんだ。でもあげない」
え?俺は目をパチクリした。
何で俺の弁当を作っているのだ。
思いながら.....栗谷を見る。
栗谷は悲しげな顔で、ふーんだ。バカ、と呟いていた。
俺は?を浮かべる。
「オイオイオイ。乙女心を理解しないのはいただけないぜ?大博くんよ」
「キノコが生える様に現るなよ智明。.....って言うかどういう意味だよ」
「あ?お前はアホか?弁当を作って来るって事はお前の事が.....」
そこまで言い掛けた所で、あわー!、と猛烈に赤面した栗谷が智明の口を止める。
そしてあわあわしながら俺に向いてきた。
何だこれは.....?
智明くん!と叱る栗谷。
「でも栗谷ちゃん。冗談は抜きで言った方が良いぜ。この馬鹿野郎は鈍感だから」
「え.....でも.....」
「.....お前ら、さっきから何の話をしているんだ」
モジモジする栗谷。
意味が分からないんだが.....。
と思っていると栗谷が意を決したように俺を見上げた。
教室中がざわざわになる。
そして栗谷は改めて意を決した様に俺に告げた。
「.....私ね、貴方の事が好きなの」
「.....え.....」
「.....昔から好きだったの.....」
きゃー!と大騒ぎになる教室。
女子どもが煩い.....って言うか!!!!?
栗谷が俺を!?
嘘だろうオイ。
「.....返事は要らないよ。君は君だから。で、でも、わ、私は負けないから。だから.....お弁当、食べて」
「.....」
複雑な思いになった。
俺は.....栗谷から弁当を受け取る。
栗谷はモジモジしていた。
俺はそんな栗谷の頭に手を添える。
「有難う。栗谷。.....有難く受け取るよ」
「.....は、初めて作ったから.....」
「.....不味いってか?不味い訳無いだろ。女の子が一生懸命に作ったものが、だ」
「.....そ、そういう所が.....」
赤面の赤面で俺を見てくる栗谷。
正直、本気で可愛かった。
そんな俺の横で智明が苦笑している。
良かったな、と、だ。
裏山死ねって感じだが、と言いながらも、だ。
「俺はどうしたら良い?智明」
「.....いや。俺に聞くな.....」
困ったな。
真面目に困る。
これは.....誰と飯を食うのが一番なんだ?
考えてそして。
「.....栗谷」
「.....な、何?」
「.....七水と一緒に食う事になるが.....一緒に食べよう」
「.....!.....うん!」
満面の花咲く笑顔。
正直.....俺は誰とも付き合う気は無い。
だけど.....みんな優しいと思ってしまう。
俺はどうするべきなのだろうか.....。
そう思ってしまう。
「俺は抜きか?」
「お前も来い。なら」
「わーい」
「.....お前は小学生かよ.....」
面倒な仲間達。
だけど.....俺は幸せだ。
今が一番、だ。
だから.....壊したく無いと思う。
絶対に、だ。
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