第6話 智明、ドロップキックをかます
栗谷御幸そして七水穂高。
この二人が何でか知らないが.....俺を巡ってバトルをしている。
それは簡単に言うと.....奪い合いの様な、だ。
何でなのか。
でもまあ、有難いとは思う。
一体、何故って?
仮にも俺を大切にしてくれているから、かな。
俺は苦笑しながら後ろを見る。
でも何故にこんなにバトルをしているのかは分からない。
だってそうだろ?
栗谷は俺を好いているとは思えないから、だ。
だからおかしな点が多い。
「先輩。栗谷さんって良い先輩ですね。あはは」
「はーくん。後輩ちゃん可愛いね。あはは」
「.....お前ら。良い加減に落ち着け」
ずっと俺の後ろで言い争っている。
何故そんな事をするのか分からない。
七水は分かるとしても、だ。
思いながら盛大に溜息を吐く。
すると.....通学路の真逆の方。
遠くから目を逆三角形にした男が突っ走って来た。
とも.....あき?
「このクソバカファ◯クが!!!!!!!!!!」
飛び上がった。
そしてドロップキックを打ちかましてきやが.....オイ!?
俺はギリギリで避けて後ろにズザッと音を立てて止まる智明を見る。
馬鹿野郎かコイツは!!!!!
危ねぇだろう!!!!!
「何しやがる!」
「テメェという二股の見せ付け野郎は今この場で殺してやる.....ぜぇ!!!!!」
「落ち着け!智明!!!!!」
アチョー!とか言いながら俺を叩いてくる。
あのな!通学路でこんな事をしていたら目立つだろ!
良い加減にしろクソ野郎!
思いながら智明の首を絞める。
すると唖然としていた栗谷が、あはは、と笑った。
「.....其方ははーくんのお友達?」
「そう「そうです!!!!!」」
俺が話している最中だろう。
思いながら智明をキッと睨む。
智明は眼鏡を掛け直してすくっと立ち上がり。
栗谷の前に手を差し出して.....イケメンになった。
コイツ.....。
「初めまして。お嬢さん。俺の名前は飯島。飯島智明です」
「え.....あ、はい。初めまして」
「智明。ドン引きしているからな。栗谷が」
「喧しいわこの二股。誰だよこの可愛い子は」
何?殺して良いって?
考えながら二股という奴を見る。
溜息混じりに、だ。
智明はこれに対して息を吐いて立ち上がる。
で?どういう事だ、と。
事情を説明してくれ、的な感じになった。
俺は智明に紹介する。
「この子は栗谷御幸。俺の馴染みだ」
「初めまして」
「.....そうなんだな。.....昔からの?」
「ああ」
そうか、とニカッとする智明。
それから手を差し出して栗谷と握手した。
俺はさっき言った通り飯島智明っす、と自己紹介する智明。
その姿を見ながら.....俺は七水を見る。
俺にニコッと優しげに笑んでいた。
「そういや.....俺、後輩ちゃんに紹介して無いぞ?自己紹介」
「.....ああ。そうだっけか。.....七水穂高だ。この子は」
「初めまして。七水穂高です」
「.....俺は智明っす。コイツの友人です」
って言うかそれは良いが.....時間無くなるぞ。
言うと俺以外の全員がハッとして、ヤベェ!、と言って駆け出した。
俺は盛大に溜息を吐きながら走る。
全くな.....どいつもコイツも.....。
何でこんな俺に.....近付いて来るんだろうか。
俺の様な.....死神に、だ。
☆
「で?朝の栗谷さんだけど.....何処の学級に転入して来るのよ」
「分からん。どの教室かは聞いてない。って言うか転入生が決めれないだろそれ」
少しだけホームルームまで時間が有ったので話していた。
そしてチャイムが鳴る。
智明が、ヤベェ、と言いながら、じゃあな、と言いつつ席に戻る。
俺はそれを手を挙げて見送る。
「.....2年のクラスは5つ.....何処に来るのか、だな」
考えて呟く。
すると.....ガラッと戸が開いた。
担任の無精髭が目立つ何時もの吉岡が怠そうに入って来る。
そして、よーし始めるぞー、と言った。
「お前ら。聞いたかどうか知らんが転入生が来るぞ。美少女の。このクラスに」
「「「「「うお!?マジで!?」」」」」
え.....ってかこのクラスなのかよ。
驚愕しながら.....戸の外を見る。
そこには確かに栗谷の姿が。
そして担任の吉岡が、じゃあ入れー、と言うと。
栗谷が入って来た。
「初めまして。清水高校から転学して来た.....栗谷御幸です。宜しくお願いします」
「「「「「めっちゃ可愛いじゃねーか!!!!!」」」」」
うおおおお!!!!!と絶叫が上がる。
猿人類かお前らは。
煩いな.....と思って睨んでいると。
栗谷がこっちに手を振って来た。
「.....」
まさかまた一緒になるとはな。
考えながら.....担任を見る。
担任は、そいじゃ栗谷へ誰か学校内を案内してもらうかー、と呟いた瞬間。
ハイハイハイハイと喧しく次々に男子から手が上がった。
俺一番!的な感じで、だ。
煩い.....全自動機械人形かコイツらは。
思いながら居ると栗谷が赤面でモジモジした。
「先生。私.....はー.....じゃ無くて波瀬くんに案内してほしいです」
「.....は!?」
ずるっと顎が頬杖から落ちた。
と同時に教室の空気が一変し始める。
俺に対して、ぶち殺そうかアイツ、的な感じになる。
一気に俺に殺意の眼差しが向けられた。
「何でアイツ?」
「二股.....」
「サイテー」
ボロクソに言うな。
考えながら.....俺は頭をボリボリ掻いた。
最悪だわマジに.....。
溜息しか出ないんだが.....。
「じゃあご指名の有った波瀬。案内してくれ」
「.....分かりました.....」
「そいじゃ。全て決まったから出席取るぞー。おっと。栗谷の席は.....」
「あ.....先生。私、波瀬くんの隣が良いです」
ァア!!!!?(威圧)的な声が上がった。
男子達の目が厳しくなっていく。
俺も目をパチクリした。
冷や汗が吹き出始めたんだが。
何を考えているんだ.....!?
「宜しくね。波瀬くん」
「.....お前.....栗谷.....悪ふざけにも程が有るぞ。マジに殺される。俺が」
「あはは」
俺は本日何回目かも分からない溜息を吐く。
栗谷は俺に紅潮した笑みを浮かべる。
俺の元のボッチ生活は一生戻って来ない気がした。
この教室で殺されそうだ。
マジに.....だ。
これって困るんだが.....。
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