第12話 訓練
案内されたのはコロッセオみたいな闘技場の控え室であるそこには無数の木製の武具や革製・金属製の防具である。
「好きなのを選びな。着けた方は分かるだろ?」
「ああ。にしても色々なものがあるな」
剣だけ見てもショーテルやダガーにトゥーハンデットソードやクレイモアそしてロングブレード変わり種ではフランベルジュなどもある。
その中から俺はショートブレード二本と刺し片手直剣を一本選ぶ。そして防具は動きを阻害しない程度のプロテクターと一対のガントレット。但し左腕の方にはちょっとした盾が付いてある。ただ短剣を振り回すには阻害されない程度ではある。軽く体を動かすと不思議と手に馴染んでいく。まるで俺を所有者と認めるかのように。
「ふぅ。随分と馴染むなコレ」
訓練用である以上はかなり使い込まれており新品特有の堅さは感じないが個人の色に染まっているわけでも無いので適応しやすそうなのは確かであるが。
「まあな。元々此処は即席で兵士を育てる為に使われておったらしいからのう。時々のメンテナンスはしておるが設備も備品もそのままじゃ」
「へぇ〜」
じゃあ少なくともその頃からは銃が開発されていたのか。地球でも僅か7百年前位に開発されていたがどうもこちらの方が開発は早かったらしい。そう部屋の片隅に放置されてあるリボルバーを見て考えた。このリボルバーは何処かで見た記憶があるも思い出せない。ただ何か似ている。それだけは思い出したがそこから先はなんかモヤがかかって思い出せない。
「あのリボルバーもか?」
「そうじゃが。あれに関して全く分かっておらんのじゃ。何か特殊な力が込められているのは確かなんじゃが」
「へぇ〜」
一瞬、愚者が使うアレかと思ったがルーン文字が込められているわけでも無いので無視した。形状はかなり似ているけどさ。
「一応そのセットは開発しておるから使うか?」
「そうしようかな」
【魔銃士】の職はMP補正と視力補正に攻撃命中補正があるのでそれなりに有効なのでいずれにしろ組み込むつもりではいたがその銃を如何しようかと迷っていたので丁度良いかも。ただ今回は使うつもりがないので無限収納に仕舞っておく。
「コレは?」
闘技場に出るとほっそりとしたフォルムのゴーレムが数体並べてありそれぞれが剣や盾に槍などを持っている。それらは木製ではあるものも何故か業物のように感じてしまう。
ゴーレム自体の素材もかなり良さそうだし製作者の腕とレベルが良いのだろう。
「訓練用のゴーレムじゃ。下級職ならコイツら相手でもそれなりに鍛えてられるじゃろ。それにコレを飲め」
そうして投げられたのは小さなポーション瓶である。ただ中身が黄金に輝いておりどこかエナドリぽく見える。…ステータスあると必要なくなるんだけどね。そう考えながら服用すると体の力が漲ってくるわりには体が重く感じる。
「経験値ブースト系か」
「そうじゃ。持続時間と強化率を考えると今のヤツが一番じゃ」
まあそんなものだよな。【書記】系統か[強奪]や[暴食]でも無い限りは経験値を増やす真似出来ないから。
「それじゃあ開始じゃ!」
それと同時に結界に覆われてゴーレムが動き出す。
「さてと久しいな」
一切の職…厳密に言えば【天職】とレベルを上げる職以外の職がないのは。そう考えながら突き出された槍を体捌きで躱し飛んできた矢を盾で受け止める。感覚は鈍っていないな。
「さてと俺の糧になって貰おう」
「アヤツなんか違うな?」
「そうなんですか先生?」
気がつけば私は先生の隣に居て新一さんの訓練を見ていた。片手剣を巧みに操り槍を逸らし剣を捌き矢を弾いている。まるでその動きは何処かで知っているかのように。そしてそれは鍛造のようにも見えた。時間が経つにつれて動きが精錬されていき眩く輝く。当然でしょう。騎士系統三大上級職である【聖騎士】【闇騎士】【大騎士】に留まらず【天騎士】【堕騎士】に【抜刀神】と言った超級職の力さえも自在に使い熟すのだから。今は【騎士】だけのようですが【天職】である【賢者】に【封印神】を加えれば私たちにとっても大きな力になる。それは先生も理解しているのでは。
「何というか曇りが無い。そして攻勢が強い」
「攻勢が強いのは良い事なのでは?」
「【騎士】は普通盾ありきの職。そしてアヤツの戦闘スタイルは物理攻撃と回避じゃ」
「そう言えば」
《武魔鋼将》との戦いでも何故か盾は使っていませんでした。剣捌きの鋭さや突然のことへの驚きや【救世主】など考える事が多くあったのは事実ですが確かに。
「…あえて守りを捨てておる可能性も無くは無いかも知れんが」
「東方のアレですか?」
「そうじゃ。つい最近、発見されたアレらなら出来なくも無いじゃろ」
まるで自身が傷つく事を厭わないあれならば確かにそんな事も可能でしょうがわざわざその為だけに大事な職の枠を削るのは古代の戦争で【死兵】【生贄】自爆策以外には聞いたこともありません。
「兎に角、詳しく知る必要がありそうじゃな彼は」
「ええ。それに機鋼馬で知ったけ?」
「そうじゃ。あんなモン元々ある事を知って無いと作ろうとすら思わんじゃろ」
ポンと渡されただけで説明も余りされなかったのですがあの表情から言って本当に満足していたのでしょう。…逆を言えば1日でそれを理解したこの人もこの人ですが。
「…色仕掛けとか」
「えっ!?」
「冗談じゃ。ただエリス…」
「何でしょうか?」
突然の事に驚きましたが…。流石に冗談でしたか。
「アヤツ確実に何かを喪った人間じゃな」
「喪った?」
あれだけの強さあれだけの先見性を持ちながら?
「ま、暴走せんように巧く心を掌握しておけよ」
「…」
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