第34話

 追い込まれて、壁端まで追い込まれて、もうダメかと思った時に出した攻撃が偶然倒せたような気分だった。


 なんとか勝てたが、正直勝てた感じがしなかった。


 いずれにせよ次が最終ラウンドだ。


 最終ラウンドが始まる。


 始まってすぐにお互いのキャラクターは近づくが、俺のキャラクターの下蹴りで先制をとる。


 そのまま素早く入力して必殺技を出す。


 だが必殺技は、しゃがみガードで防がれる。


 また対策されているのか?


 カルロには何が見えているんだ?


 まるで意識より先に行動が出ているような感じがカルロに感じられる。


 そんなことがあるはがない!


 そう思い、対戦に集中する。


 そして冷静に分析する。


 悔しいが読み合いは向こうが1枚上手で入力も早い、キャラ性能頼りな部分も見られるが強いことは確かだ。


「どっちが勝つかわからなくなってきたな」


「俺は坊主が勝つかもしれないと思っているぜ」


 そのままカルロのキャラクターが弱パンチを2回当てる。


 そして強キックを浴びせる。


 お互い近づいたり離れたりしながら、相手の出方をうかがう。


 ここで我慢してても勝てない。


 しかけるか。


 俺のキャラクターがジャンプして空中蹴りを当てる。


 カルロのキャラクターはその後に飛んで、空中蹴りを同じようにするが、俺はレバーを動かしてブロッキングした。


 カルロのキャラクターはそのまま着地し、強キックをするが、俺はレバーの上を回してジャンプしてかわした。


 そして一瞬で入力した投げ技を使って、カルロのキャラクターを投げ飛ばす。


「おっ、ここで投げるか」


「壁はしなら坊主の必殺技の連続で勝てるかもな」。


 ギャラリーはそう言っているが、ここは読めた。


 このまま俺の戦い方に持ち込むしかない。


 画面端に投げられたカルロのキャラクターを追うようにダッシュしたが、起き上がってカルロは一瞬であれを入力した。


 そうゲージを消費してまた一定時間スピードの上がる超必殺技アルティメットだ。


 これで相手のフレームに隙が無くなり、無敵状態の長い必殺技の応酬がくることは確実だ。


 本当に凶悪なキャラだ。


 カルロはテンポ良く、正確かつ素早い入力で隙を見せずに必殺技を連打してくる。


 俺のキャラクターはカルロの連打される必殺技で、ダウンしないように空中で浮かしながらダメージを与え続ける。


 完全にカルロの優勢な状態での必殺技のオンパレードだ。


 駄目だ。


 このパターンはまた負ける気がする。


 カルロの入力した超必殺技アルティメットが一定時間経過して終了し、俺のキャラクターがようやくダウンした。


 体力ゲージを一瞬見ると俺のキャラクターの体力は2割で、カルロのキャラクターの体力は6割だ。


 圧倒的な力の差がここにあった。


 絶望的だった。。


 これが世界最強の力だとと実感した。


 俺のキャラクターが起き上がると、何故かカルロはバックステップして距離を取った。


 最初のラウンドあたりで見せたヒットアンドウェイの戦いに戻っている。


 その戦いの姿勢を優勢でも変えないのは、まるでコンピューターのようだった。


 俺は起き上がると同時にジャンプして、空中で中パンチを入れた。


 それがカルロのキャラクターに命中し、そのまま強キック吹っ飛ばして、壁から脱出した。


 起き上がるカルロのキャラクターに弾撃ちを入力する。


 命中したが、防御された。


 長い間ケージを貯めるためにお互い離れて弱パンチや弱キックを連打する。


 また弾撃ちをすれば、遠くにいるとはいえ隙が生まれる。


 ならばここは隙のあまりない弱パンチや弱キックでゲージを貯めて、相手の隙を見て超必殺技アルティメットを出して逆転するしかない。


 カルロもおそらく同じことを考えている。


 だから俺と同じで遠くにいて、弱攻撃をけん制も含めて連打している。


 ゲージ満タン後の超必殺技アルティメットいつ出すかわからないプレッシャーをお互い感じている。


 少しずつゲージが溜まるがゲージの短いカルロのキャラクターが先に満タンになった。


 またまた超必殺技アルティメットを遠くから発動し、一定時間スピードがあがる。


 俺は弾撃ちをして近づけさせないようにして、カルロの時間経過を待って、こちらが超必殺技アルティメットを出して勝つ戦略に出た。


 しかし、カルロはその戦略をすでに読んでいるようだった。


 そのまま素早くジャンプして近づき、こっちも対空用の必殺技を出した。


「これは決まったか?」


「どうだろうな」


 ギャラリーの声が聞こえるが、相手の攻撃が決まってこちらが負けるわけにはいかない。


 カルロのキャラクターは瞬時に突進系の必殺技を入力して、無敵時間を利用して弾撃ちを通過して回避していく。


 そしてとうとう俺のキャラクターに近づき、突進系の必殺技を素早く入力して当てようとしたので、俺はタイミングよくブロッキングをする。


 だが、集中しすぎて目が疲れたのか、俺のブロッキングのタイミングが合わずにダメージを喰らってしまった。


 こうして俺のキャラクターの体力はすでに0になった。


 このゲームの勝者はカルロの勝ちで終わる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る