第33話

「おいおい。一方的な試合になってきてねえか?」


「まあ、あの超必殺技アルティメットは便利だからな。ハメられている感はあるけどな」


 ギャラリーの言う通り、この技は上級者が使えばハメ技にもなる。


 攻撃が終わり俺のキャラクターがダウンすると、もうこっちの体力が3割しかない、カルロの女性のキャラクターの体力は9割もある。


 絶望的な状況。


 相手の超必殺技アルティメットが終わり、俺のキャラクターが地面に倒れ込み起き上がると弱パンチを喰らう。


 そしてカルロが瞬時に入力した必殺技を与えて、またジャンプして俺と距離を取る。


 もうこっちの体力が1割しかない。


 これは負けるかもしれない。


 そう思った時に俺は弾撃ちをしたが、カルロのキャラクターがジャンプして、俺のキャラクターの弾撃ちを避けて、弾撃ちから次の行動になるわずかな隙を空中蹴りで浴びせた。


「あーあ。えげつねえ試合になったな」


「次でもハメられたらまた坊主が負けになるな」


 体力が0になり、1ラウンド目の勝者はカルロの勝ちで終わる。


 強すぎる。


 熊倉さん、もといゼルダと互角かもしれない。


 いやもしかしたらそれ以上の強さだ。


 そしてカルロのキャラクターが性能強めなのがあるから、こっちがますます不利だ。


 カルロが今使っているのテクニカル系キャラクターは、俺のキャラクターとは10回戦って俺のキャラクターが7回負ける性能差だ。


 しかも上手いプレイヤーが使うから鬼に金棒だ。


 でもやるしかない。


 やる気は少し落ちたが、対戦できる気力はまだある。


 次のラウンドは勝ってみせる。


 そうだ、俺の天性の格闘ゲームセンスがあると言っていた熊倉さんの言葉を信じて、挑もう。


 2ラウンド目が始まる。


 俺は開幕と同時に下蹴りをする。


 カルロのキャラクターがそれを喰らう。


 俺はその次に素早く必殺技を出したが、カルロのキャラクターがしゃがんでガードされる。


「おいおい。あの坊主かなり早く必殺技を入力したぞ」


「すごいな」


 ギャラリーから褒められるが、それより早くガードされたんじゃ意味がない。


 まさか俺の行動を先に読んで対策されているのか?


 カルロのキャラクターがその後にジャンプして空中蹴りを俺のキャラクターに当てる。


 そのまま下蹴りが来たが、俺はコマンドを素早く入力してしゃがんでガードする。


 カルロのキャラクターは防御している俺に続けて必殺技を出してきたが、それももちろんガードして、近接になったカルロのキャラクターの必殺技終了時の硬直時間の間に入力した投げ技でダウンさせる。


 今のは良いぞ!


 さっきのは読み合いで勝っているはずだ。


「おっ、このラウンドは坊主が勝つかもな」


「さあ、どうだろうな」


 カルロのキャラクターが起き上がると、同時に俺は必殺技を出そうとしたが、起き上がったカルロの方が先に必殺技を入力していた。


 見事に命中してダウンする。


 しまった!


 こっちより先にあの状況で必殺技をだすとは思わなかった。


 カルロのキャラクターが起き上がりの俺のキャラクターに対して、素早くゲージを消費しの強化必殺技を出すが、俺は即座にガードする。


 その後カルロのキャラクターはバックステップして、遠すぎず近すぎない距離に移動した。


 お互いのキャラクターの距離が出来て、届かない弱パンチを連打する。


「ここでけん制か」


「まあ体力リードされているが、あの女の子の超必殺技アルティメットをまた使われたら坊主が不利になるな。どちらもコマンド入力が早いから、坊主にも逆転のチャンスができるかもな」


 ギャラリーの声を聞いて、不利という言葉にやる気を削がれそうになる。


 次はどう来る?


 何が出てくるんだ?


 解らない。


(この俺が……読み合いが出来ていないだと……?)


 ここは冒険してコンボでダメージを与えようとカルロのキャラクターに近づいたが、瞬時に入力した突進系の必殺技を当てられて、俺のキャラクターがダウンする。


 俺のキャラクターが起き上がる時に、カルロのキャラクターがジャンプして空中蹴りを放つが、レバーを右に回してブロッキングする。


 しかし次の弱キックを喰らってしまい、またバックステップで距離を取ったカルロは俺とほぼ同時に両キャラクターがジャンプした。


 ここだ。


 ここで攻撃を当てるしかない。


 空中で俺のキャラクターが弱パンチを繰り出して、カルロのキャラクターにダメージを与える。


 降りてきたところを一瞬で入力した必殺技で攻めるが、正確にブロッキングされる。


 俺のこの場面で試合全体を見直して、あることに気づく。


 カルロは必殺技に頼りすぎている感じがする?


 確定ではないが、そう感じた。


 カルロの必殺技をブロッキングして、チャンスが来るまでやり過ごすしかないな。


 ブロッキングのタイミングが合えばいいんだけど。


 カルロのキャラクターは後ろに下がらずに、ダッシュで近づいてきた。


 ここで攻めるしかない。


 そう思った俺はコマンドを入力して、中キックと次即座に入力した必殺技を出す。


 俺のその攻撃が二つともカルロのキャラクターに命中した。


 必死になっていてお互いの体力を見ていなかったが、どうやらさっきの二つの攻撃でカ


ルロのキャラクターの体力が0になり、このラウンドは俺が勝利したようだ。


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