第12話
さて、どうするか?
この少女は迷子かもしれないし……しばらく見ていると、いつかの俺が迷子になったあの日のことを夢で思い出してしまったし……仕方ないな、俺が迷子になった時のあの人と同じことをしよう。
「ほら一口だけだぞ」
俺は食べようとしたフランクフルトを女の子に渡した。
「サンクス」
あっ、感謝された。
「あっ! 全部食べるなよ!」
フランクフルトを全部パクッと食べられてしまった。
女の子は俺の右手を左手で持ち上げると、右手に100円玉を落として俺の手に渡した。
フランクフルト代か?
「あのさ……これ1本200円だから足りないんだけど……」
「オマエ モ ゲーマー ナラ コノ 100エン デ イキノコレ」
女の子は片言の日本語で何やら俺に話した。
「ゲーマー? なんで俺のことゲーマーだってわかるんだ?」
「ヘイジツ ムハイ ノ イチゴタイショウ ハ オマエダロ?」
平日無敗の苺大将?
俺のこと知っているんだ。
意外だな。
っていうかやっぱりゲームやっている側の人間か。
俺のこと知っているってことは、もしかしてファンとか?
まさかな。
意外と俺って有名?
ちょっと話を盛って、質問しつつも自慢げに話してやるか。
「そうだけど、サインでも欲しいのか? まぁ、俺も後に奇跡の交換条件(意味不明)とかで約束された勝利のゲーマースキル(笑)でプロゲーマー(予定)になるからプレミアつくかもな……でも売るなよな……約束できるなら、ほれ色紙出してみろよ」
なんか今日はテンション高くて変なこと言って、調子に乗っている感じがしたが気にしないことにした。
「ウヌボレヌナ! サラバダ!」
そう言って女の子は椅子から立ち上がって、トコトコと歩いて去っていった。
「ありゃ?」
何だったんだろう?
まあいいや……100円損したけどまたフランクフルト買うか……。
フランクフルトを買って食べ歩きしながら、昼の青空とぷかぷか浮かぶのんきな雲を見上げる。
(ゼルダの時の『遊び』だったものが『本気』になりそうな変化の答えが、指定した火曜日にあるのかもしれない)
俺は歩きながら、あのメールのことを思い出して買い物袋を強く握った。
※
今日は火曜日で学校は休みではない。
そしてこの前のゼルダのメールの挑戦状の日の火曜日だ。
学校はいつも出席しているし、たまにはサボるか。
今は学校の授業よりゼルダの正体とリベンジをしたいしな。
ゲームセンター行く前に家でちょっと練習しよう。
朝早くに起きて冷蔵庫を開けて、ウイパーオンゼリーを飲んだ後に親に見つからずにこっそりと自室に戻り、ウルフォ4をオンライン対戦モードを選び両耳にヘッドフォンを付けてテレビに差し込み全国の格闘ゲーマーと対戦する。
何人かの格闘ゲーマーと対戦したが、ゼルダは現れずオフラインになっている。
今日は連勝して、スコアポイントは670ポイントまでいく。
ほら見ろ、昨日寝る前に思った通り俺だって出来るんだ。
いつかスコアポイント100000ポイントくらい貯めてやる。
俺の天性の才能が目覚めるのも時間の問題だろう。
とはいえ昨日に続いて今日も長い時間ゲームをやっていたので目が疲れる。
そして昼頃になると、アーケードコントローラーのボタンが押しても反応しなくなった。
ああ、無情……なんということだぁ……。
値段高めの中古品の癖にすぐ壊れるとは最悪だ。
仕方ないので新しいアーケードコントローラーを買いにジャージから私服に着替えて、親にバレずにこっそりと音を立てずに階段を降りた。
靴を履いてドアの前に立ち上がると背後に気配を感じた。
「!?」
動揺して一筋の汗が体から流れる。
一瞬親に見られた気がしたが、それなら怒って罵声が飛んでくるはずだ。
勇気を出して、振り向いた。
「母ちゃん、ごめっ……えっ……?」
振り向くが誰もいない。
気のせいだろうか?
足音が聞こえてた気がしたのだが?
まぁ、いいや。
ドアを静かに開けて、なるべく音を立てずこっそりと閉めて外に出た。
※
ゲームショップに行って俺はアーケードコントローラーの商品が置いてあるコーナーに行った。
アーケードコントローラーは新品の方が中古より良い。
少し値段が高いけど、買うのは新品にしよう。
お金も以前に母から少し貰ったし、アルバイトなんてしたくもないからゲーム以外無駄遣いをしないようにしようとしたのが俺だ。
地元の近くのゲーム屋で、新品のウルフォ仕様のアーケードコントローラーを新品で見つける。
値段は7000円だった。
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