第10話妹ができました。その名はアティ

その日、村人たちによって葬儀の儀式が行われた。村の中心に死体が集められ、油をかけて、火を着けて死者の魂を天に帰すのだそうだ。


少女も死体を集める手伝いをして、今は、それが燃える様を私の側で見ている。


「ねえ、あの力って、どういう事?」少女に訊ねると、「えっとね、・・ゆうこ・・のぎ・・・?と、かんせ・・い?」


「ゆうこのぎ?。かんせい?。」っと首を傾げていると、後ろから、声がした。


「おそらく、<融合の儀>と<覚醒>のことでしょう。」声の主は、グラスだった。


グラスの話では、龍人族は、己の大切な人に、血を与えたり、受け取ったりして、能力を分け与える事ができたらしい。なので、この姉妹は、互いの力を分けあったのでは、っと言うことだった。っと言うことは、ティアは、[龍鬼人]で、この少女は、[鬼龍人]っと言うことである。そして、<覚醒>とは、その力の解放であった。なるほど、わずか10才足らずの子供が、数多くの魔物を倒せる訳であるが、そんな力を、この少女も持っていると言うことである。それを考えると、この少女が大人になった時、どれだけの力を発揮するのか、想像するのも恐ろしくなる。


(この子には、力の使い方を教える必要がある。)


そう思った私はグラスに訪ねた。


「この子の奴隷契約は、どうなるのかなあ?」


「奴隷の主たる奴隷商が死んでいるので、契約は破棄となり、この子は自由となっているはずですよ・・・ラミア様。」


えっ・・・ラミア様?って、まあいいか。


私は少女の首輪をはずして、少女の目を見て訪ねる。「あなたは、今より自由です・・。これから、貴方はどうしたいですか?」その問に、即座に答えた。


「私は、ラミアお姉ちゃんみたいに強くなりたい!。そして、ティアお姉ちゃんみたいに皆を守りたい。」その目には、少しも迷いはなかった。


「わかりました。この子は、わたしが引き取ります。」そうグラスに伝えると、少女には、「それじゃ、私には兄弟はいないので、わたしの妹になってくれますか?。勿論ティアお姉ちゃんも一緒にね。」そういうと、少女は、「いいの?。ほんとうに・・・?。」っと訪ねてきて、私が頷くと、飛び付く様に抱きついてきた。


「ありがとう・・・ございます・・・。これから、宜しくお願いします・・・・ラミア様・・・」


「これからは、姉妹なのですから、様はいらないよ。敬語もいらないよ・・・。えっと・・・そういえば、名前・・・なんだっけ。」


「私。名前ないよ。ティアお姉ちゃんだけ、あったの・・」


そうなんだ、奴隷だったから名前もなかったのね。


そして、しばらく考えて、「アティって名前はどうかな?ティアから取ってアティ、そして、私の妹で、貴方の名前は・・・アティ・御劔だよ」


「アティ。私は、アティ・御劔。私のなまえ・・・」




お兄ちゃん、お姉ちゃん達、今日、私に妹ができたよ・・・。もう、ひとりじゃないよ。そう思えた時、どこからか、亜門お兄ちゃん、茜お姉ちゃん、クリス姉さんの声がしたような気がした。


「よかったね・・・。おめでとう。今日からお姉ちゃんだ・・。」

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