第9話ティアお姉ちゃん

私たちが、村に入って暫くすると、一軒の家に魔物の残党が集まっていた。


「おい、あっちにいけ。」


「きゃーー、たすけてーー」「こっちにくるな~」


どうやら、その家に、生き残りが避難しているようだ。急いで駆けつけて残党を始末すると、声をかけた。


「もう、大丈夫ですよ。魔物は、すべて倒しましたから・・。私は、冒険者のラミアといいます。生き残っているのは、これだけですか?」っと訪ねると、回りの家からも、人々が出てきた。その中の長らしい初老の男性が説明を始めた。


「私は、この村の村長をしているグラスと言います。助けて頂いて、ありがとうございます。」




村長のグラスの話では、2日前、村にいる若い奴隷商の元に、冒険者が来て、何やら言い合いになり、そして、しばらくすると、魔物が襲ってきたそうだ。


そして、私の後ろに隠れるように、引っ付いている少女を見つけると、膝待ついて、目線を合わせ、「君が、助けを呼びに行ってくれたんだね、ありがとう。そして、すまない。私たちは、君の、お姉さんを・・・・。」そう言い出すと、他の村人たちも「すまなかった・・・。だけど、村の女、子供を守るには、ああするしかなかったんだ・・・。」そう言って、涙を流して謝罪している。


「どう言うことですか?」と訊ねると、魔物が現れた時、最初は、奴隷商一人が戦っていたのだと言う。その時は、魔物の数も数匹で、奴隷商自身も、かなりの腕前だったので、この子の姉も皆と避難していたのだった。いくら龍人族とはいえ、10才にも満たない子供である、当然であろう。しかし、しだいに魔物の数が増えて行き、奴隷商も対処できなくなった時、怯える子供を見た姉は、「大丈夫だよ、妹が助けを呼びに行ったから、すぐに、来てくれるよ・・・。私も、皆を守るからね。」そう言って、奴隷商の元に向かったのである。


「私たちは、戦えないとはいえ、10才に満たない少女を戦わせて生き残っているのです・・・。」


そう言って、頭を下げて踞っているなである。


「お姉ちゃんは、どこに・・・?」その少女の問いに、グラスが、指を指して答える。そこは、村と森の境目のあたりで、そこには、若い男と、それを見守るように、木に寄り添う1匹の子龍の死体があった。龍人族は、体を龍化できるらしいが、片方の翼はもぎ取られ、片目、片足もなく、ただ、最後まで、必死で戦っていたのであろう、その鋭い爪には、魔物の血が大量についていた。いかに奴隷で、龍化できるとは言え10才の子供の死に方ではなかった。ただ、彼女の龍化には一つ違いがあり、龍でありながら、鬼の角もついていたのである。


「ティアお姉ちゃん・・・。あの力、使ったんだね・・・。」


そう言って、側に立つ、少女。私は、背中越しに抱き締めるしかできなかった・・・。


「ねえ、お願いがあるの・・・・。ティアお姉ちゃんを誉めてあげてくれる?・・・」少女の問いに、私は頷いて、答える。


「あなたの、お姉さんは勇敢で誇り高き龍人族で、本当に、本当にやさしい・・、お姉さんね・・・。この姿を、私は忘れない・・・絶対に・・・。」


私が、そう言うと、少女は、大きな、大きな声で、泣き出した・・・・。


「うわあああああ~~~~~~~~・・・・。」

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