第8話逆鱗

ザザザザザ・・・・






城門から西方向に土煙をあげて突き進む、影。


奴隷少女を背に背負って私は全力で走っている。馬などを使ってもよかったのだが、私ぐらいのレベルだと身体強化して、己の足で走る方が早いのである。


「今、すっげえ速度で人が走っていったよなあ?」


「ああ、馬や他の動物追い越して走る人間なんて初めてみたよ・・・。」


城門にいた人や兵士たちは、口を開けて呆然と眺めていた・・・。後から思えば、かなり目立っていたと思う。




「それで・・・。その村まで、どれくらいかかるの?」っと少女に訪ねると、少女は王都に着くまで二日かかった事を教えてくれた。5、6才の少女の足で二日と言うと、普通の大人だと1日、距離にして、50kmっといったところである。まあ、私だったら、1時間ぐらいだけどね。だけど、わずか5、6才の少女にとっては、体力的に辛かったであろう。






予想通りに、しばらく走ると村らしい姿が見えてきたが、その姿は、魔物どもに蹂躙され、所々で死体に群がっていた。そして、その中に、虎の姿をした魔獣までもがいて、その魔獣を使役しているであろう人の姿があった。その人物は頭をスッポリとフードで隠し、背の低い魔術士のような格好であった。


「いいぞ、いいぞ。やれ!もっとやれ。ハハハハ・・・。我ら[ケルペロス]に逆らったら、どうなるのか、教えてやれ!。」


(なぜ、ケルペロス?)なぜか、ギルドのクランの名前がでてくるので、少女を降ろして安全な処で待つように指示して、その者の元に向かった。




「殺せ、殺し尽くせ。ケルペロスに逆らう者は、すべて、こうなるのだ。ワハハハ・・。」




そして、その中の一匹の魔物が、子供を守る母親をおそうように、飛びかかった時、その、魔物と、その周囲の魔物が、一瞬にして切り裂かれ、粉々の肉片となっていった。


その状況にきずいたフードの魔術士は、振り向いて、此方を見た。顔は隠れているが、ギラギラと光る鋭い目が印象的であった。


「おまえ・・。なにもんだ?」


「わたし?。私はラミアだよ。あんた、ケルペロスなんだって。ギルドのクランがこんな事していいと思ってるの?」


「ラミア・・・?知らない名だなあ。まあいいや、ケルペロスって知っちまったなら死んでもらうだけだしな・・。遺言は聞いてやれないがな・・・。」


「別に死ぬつもりはないが、村を襲った理由ぐらいは聞いてあげるわ。」っと言うと、「別に、理由なんざないさ、俺様に逆らった事と、あ~そうだなあ~、あとは、龍人族の姉妹がいたから、手に入れようとしたぐらいかな。もっとも、姉の方は加減がわからなくて、殺しちまって、妹の方は逃がしちまったけどな。」


「逆らっただけで、村ひとつ潰したの」


「そうだよ。気にいらない物は、ぶっつぶす!かって、御劔亜門が、気に入らないっと言って、帝国を潰したようにな~。ハハハハ~」


その一言に理性が吹っ飛んだ。


「おまえのやっている事と、お兄ちゃんの行動を、いっしょにするな~~」


「お兄ちゃんだと?」


「そうだ、御劔亜門は、私の兄だ!!。キサマは死んで村人に詫びるといい。」


私は、腰の愛刀[紅椿]に手をかけて、「御劔流抜刀術、飛燕!」その一言と共にピキーンっと言う音がしたトタンに、男は細切れとなっていた。そして、残った魔獣や魔物をかたずけて少女の元に戻っていった。




「もう村は大丈夫だよ。」そう言って少女と供に村に入っていった。




(しかし、ケルペロスはゆるせないなあ)そう、心に思うのであった。

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