第7話城門前の出来事

その白髪げ角のある少女は、髪もボサボサで麻袋に穴を開けて首を通して紐で腰の部分を縛ったままと言う如何にも奴隷と言った姿で、首にチョーカーまで着いている。


「おねがいします・・。森の向こうから、沢山の魔物がくるのです。早く・・、村を・・・、お姉ちゃんを助けてください・・。」


そう言って、城門の兵士に泣きながら訴えている。


この少女は、ここまで歩いて知らせに来たのだろう、手や足は、擦り傷だらけで、目も虚ろである。城門の兵士は、いい兵士なのだろう、この薄汚れた少女の姿を気にする様子もなく、やさしく対応している。「ありがとうね・・知らせてくれて。でも、オジサンは、ここを動けないから、すぐに、代わりの人に行ってもらえる様に手配するよ」


そう言って連絡用の魔石を掴もうとしている。とても良い兵士さんだと、そう思った時、事は起こった。






「ちょっと兵士さん。さっさと入門の手続きやってもらえないかしら。」


門の入り口で待っていた4、5人のパーティーの中から威圧的な態度の女性が現れた。


「ちょっと待ってください。緊急事態ですので、連絡いれたら直ぐに受付再開しますので・・・。」すばらしい対応だと思ったが、威圧女性は我慢できなかったのか「なにっ、私より、こんなゴミが優先だって言うの?ふざけるんじゃないわよ。わたしは、Aランクの[クラン・ケルペロス]なのよ。」そう言って兵士に詰め寄った。


「ですが。魔物の襲撃情報ですので、すぐに連絡しなければ、付近の村に被害が・・・」そう言った直後に、女性は少女を蹴り飛ばした。


「ふんっ。これで、このガキは後回しで、い・い・わ・ね。」


蹴り飛ばされた少女は最後尾まで飛ばされ、残りのメンバーに袋叩きにされた。


「俺たちを待たせるなんざ、100年早いんだよ。」「薄汚れた奴隷風情が・・・、てめえなんざ、そこで、這いつくばっていればいいんだよ。わはははは・・」そう言って城門を通り過ぎていく。


私は、即座に少女の元に駆けつけ回復魔法をかける。(一応、エルフ族だから簡単な魔法は使えるからね。)




治療を終えると、私は兵士に「私が村を助けに行く。私も冒険者だから・・・。それと、この事をギルドの受付のシェーンって女性に伝えて、ラミア・御劔が言ってたって言えば、うまく対応してくれるから・・・。」そう告げると、少女を抱き上げ「村まで案内してくれる?」と、やさしく告げる。


少女は、抱かれた腕の中で「ありがとうございます・・。ありがとうございます・・。」っと泣きながら感謝の言葉を告げていた。




[ケルペロス]のやり方は気に入らないが、今は魔物から村を守るのが優先である。




私は、少女を抱えながら、村に向かって駆け出した。

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