第16話 チェシャとの出会い

 1回目のループの夜、蓮は夢を見た。周囲は木々や花々に囲まれ、長いテーブルにはたくさんのお菓子や紅茶が置かれていた。そこで、不思議な猫耳の少年に出会った。


「ニンゲンがここに来るなんて珍しいね。ボクの名前?名前なんてないよ。ボクはただの観測者であり傍観者さ」


蓮はいつしかその少年をチェシャと呼んでいた。


「やあ、また会ったね」


 チェシャは何度ループをしても蓮のことを覚えていた。蓮のことをだけではない。星霊戦争のこと、ハートの女王の願い、そして最後の結末を。


「君は随分余裕だよね。他の星霊を倒しちゃったほうが自分に有利なはずなのに」


 蓮の斜め前の椅子に座ったチェシャがニヤニヤしながら蓮を見る。

 

 ハートの女王は優仁を狙っている。107回すべてのループがそうだった。


「待っていればいずれ彼女のほうから来ると?あはは。でも、今回のループは今までと違うって君も言ってたじゃないか」

  

 チェシャの言う通りだ。108回目のループは異様だ。しかし、双子座や蠍座の出現タイミングは同じだった。日常も何も変化なく過ぎていく。

 ハートの女王は優仁に固執していた。他に相手はいたはずだ。世界を壊したいほど、この世界を恨んでいる人は他にもいたはずなのに、何故最後の決定打が優仁だったんだ。

 優仁はあの時、何かを感じ取ったかのように、ハートの女王を見つけ出した。今まで、誰も探し出すことのできなかったハートの女王を見つけたのだ。

  

「さてさて、レンくんは今回のループを最後にできるのでしょうか」


チェシャは紅茶の入ったカップを手に取り、不気味な笑みを浮かべた。

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