第15話 蠍座の女④

 彼女は劇場でアルバイトを始めた。そんなとき、ある高校が劇場を貸し切るイベントが行われた。その高校はお金持ちが通うことで有名な学校だった。その中に星霊と契約者がいることがわかった。

 きっと妬みだ。お金があり、何不自由なく生きているくせに、願いを叶えようとしている子どもがいる。だから、戦いを挑んだ。

 

「私の邪魔をしないで」

 


 美姫を守っていた砂の壁が消えた。決着がついたのだ。


「そんな...」


彼女は悲壮な面持ちで、地面に腰を落とした。蓮がクリスティーヌとともに近づいてきた。

 

「俺たちから手を引いてください」


蓮の言葉に美姫は驚いた。


「俺の目的はハートの女王であって、あなたを倒すことではありません」


 なんて甘い子どもだろうか。もし、私がこの後、ハートの女王を見つけたらどうするのか。それでも後悔しないのだろうか。


「今日の演劇は最後まで観なさい」


 美姫は小さな声で呟いた。


 ステラフィールドが消え、優仁は会場の椅子に座っていた。時計を見ると、時間はほとんど進んでいなかった。ステラフィールド内と通常の時間軸は違うと聞いていた。ステラフィールド内の1時間が通常の世界の1秒にも満たないらしい。

 ただ日常を過ごすだけで、戦いが始まる。そして、自分は毎回役に立たないのか。星霊は近くにいる星霊や契約者を察知できてしまう。これからも蓮に守られて戦いを回避しなければいけないのか。優仁は悩んでいた。

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