指揮者って……



 昨日は電池切れで、一文字も書く気になりませんでした。とほほ。その原因って言うのが、娘の吹奏楽です。もー、今年はこれで頭がいっぱい。私が現役時代にやっていた頃よりもやきもきして、落ち着きません。


 今週末、大会がありますが、そもそもこれが開催されるかどうかっていうのが、まず一点目のストレス。先週末の高等学校の部は緊急事態宣言の中、開催されたんですが、娘の大会はまた別の県での開催。その開催するかどうかを決める臨時理事会が昨日開かれて、今朝発表という段取りだったんです。

 先日の録画は惨憺たる結果でしたからね。これで開催されなければ、多分、全国はなし。夢絶たれるです。

 なにせ、演奏していた当事者である子どもたちが「あれじゃ、北海道はないよね」「あれではやばいよね」と囁き合っているくらいですから。いや、小学生で自分たちの演奏を評価できるんだ。立派なもんです。

 で、今朝、保護者会のLINEで回ってきた結果が、「子ども達部門は開催。大人部門は録画審査」という決定。なぜ大人がダメなのか。理由はわかりませんが、ともかく開催するとのこと。首の皮一枚で繋がった! これで一つの不安が解消されて、心が軽くなりました。


 ただし、もう一つの大きな不安があるんです。それがね。顧問の先生の指揮があんまりうまくないっていうこと。

 子ども達の演奏は、もう千回以上の吹いているから、大人顔負けにうまいです。講師の先生の指揮で演奏すると、「わわわ」って鳥肌立つくらいうまい。ところがですね、いざ顧問の先生が棒を振ると、縦は合わない、音楽が流れない……聞いているこっちがやきもきするってもんです。


 指揮者というのは、とてつもない影響力を持ちますね。アマチュア社会人になるとね、みんな真面目じゃないですから。指揮者の棒振りなんて、無視したりするわけです。「んな解説あっかよ」「私はそう吹きたいんじゃないんだ」ってね。

 でも、小学生は素直でしょう? 指揮者が変わった途端に、まるで違った音楽になるんですよね。本番は顧問の先生です。大丈夫かな~。もう娘には「先生無視して吹けよ」って言い渡しています。いや、家の子なんか「先生は指揮下手なんだよ。棒を上げる速さと下ろす速さが違うんだから。講師の先生に言われても治らないんだからね。仕方ないけれど、でもうまく入れないんだよね」って。それって、みんなが知っている事実? 顧問の先生の前でも子ども達はそんな話をするのでしょうか……。子どもって恐ろしい。ただ、本番はなんとか息が合うように、何とか調整して欲しい。


 指揮者って、いろいろなタイプがいます。昔、どこかの本で読みましたが、「往年の指揮者タイプは感情的な音楽づくりをする。若手タイプは音楽を分析して音楽づくりをする」。は~なるほどね、って思った記憶があります。


 私もたくさんの指揮者の方に出会いました。一番大御所で、すげーって思ったのは、やっぱり小林研一郎先生。情熱のマエストロですよ。本当にね。先生は往年の指揮者タイプ。感情をがーっとぶつけてくる。もう、涙出ちゃいました。


 私が所属していた社会人合唱団の指揮者も、往年の指揮者タイプ。もうね、何を言いたいのかわからないんです。

「おめーら。そこは、こうイタリア人みたいに歌え。イタリア人は昼寝するんだぞ! そんな感じだ」

「そこは違う! こう、バーっときて、ガガアーってきて……波が引いていくみたいにするんだ」

 終始こんな調子。長身で、長い両腕を広げて迫って来る。もー、恐怖です。二十歳頃の私は、唖然として恐怖を覚えました。そして、この先生は指揮も全然わかんない。彼の指揮に慣れるまで二年くらい要しました。しかし攻略してしまうとこっちのもの。先生の言いたいこと、すっかりわかってしまう。だから二十年近く所属しているんですよね~。


 先日お亡くなりになった皆川達夫先生。この先生は、楽曲の研究をされている方なもので、うちの指揮者の解釈が気に入らないとのうわさが。うちの指揮者は、なにせ感情の生き物ですからね。作曲家の指示まるで無視ですよ。


「なんでこんなところにクレッシェンドつけんだ? おかしいだろう。これナシな」


 こんなことが日常茶飯事ですからね。作曲家の意思を尊重しない乱暴な解釈です。ところが、この破天荒さを気に入ってくれる審査員もいるもので、「面白い演奏をしている合唱団がいる」ってラジオで紹介されたり、とある作曲家さんの初演に参加させてもらったりしたことがありました。

『大会で、皆川先生が審査員でいる時は、かなりの確率で落とされる。ところが、審査員に指揮者出身の先生がいると、かなりの確率で上の大会に上がれる』

 それが我が団に代々伝わるエピソードでした。


 ということで、何を言いたいかというと、指揮者って様々な個性があったり、タイプがあったりして、まったくもって演奏も違ってくるということですよね。だから、クラシックの愛好家って、同じ曲なのに、何枚も音源を持つわけです。同じ指揮者でも年代が変わると、演奏が違いますしね。


「地方公務員になってみたら、流刑地と呼ばれる音楽ホールでした」の続編を始めました。今回の第一曲はチャイコフスキーの第五番。カラヤン指揮の1983年版は名盤だと聞いて、探しているのですが、なかなか見つからない。みなさんのお気に入りの演奏、探してみるのも一興かと思います。


https://kakuyomu.jp/works/16816700426594968002

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る