第5話 その宣言はどこぞの船長のようで
「それでは!潮田さんの入居を祝して!」
『カンパーイ!』
田中さんの音頭で歓迎会が盛大に始まった。
「それでは皆さん飲みながらではありますがまず潮田さんから自己紹介と行きましょう!」
「は、はいっ!」
あたしは立ち上がって。
「今日から8号室でお世話になります、
両親が博多弁バリバリやけんあたしもけっこう訛っとるですけど仲良くしてくださいね!」
上手く挨拶出来たかな?あたしはドキドキしながら着席する。
「ありがとうございます。
それじゃあ住人は部屋番号順で行きましょうか?
まず1号室、管理人兼オーナー、皆さんご存知の通り不動産の夢舞台の社員でもあります、
何か困ったことが有ればいつでも言ってくださいね」
そう言って座ろうとする田中さんに声が飛ぶ。
「おいリョーシ!それで終わりでいいとや!?」
この声は先輩さん!?
何?なんかあんの?
「おっとそうですね、私は小物から大物まで全般をターゲットにしています、キャッチアンドイートを心がけているので食べられる魚がメインですね」
そう言って着席する。
「ったく、ツヤこいてから!
2号室!
仕事は型枠大工をしとる、リョーシの大学の先輩でツリーハウスの住民第一号!
趣味は筋トレで釣りは船でも
名前に引っ掛けてみんなBIGさんって呼びよる!
よろしくな!」
へー!先輩さんって田中さんの大学の先輩なんだ!
ってかなんでいちいち釣りの情報入れてくるんだろ?
次に立ち上がったのは若干キツめの印象の美人さん、頼れるお姉さんって感じ!
「...3号室、
うわわ!お洒落だと思ったら洋服関係とか素敵!
「そこの馬鹿に誘われてここに住む事になったの、釣りは初心者なのでサビキ釣りとか堤防がメインね、好きに呼んでくれて良いわ」
と、颯爽と座る。
カッコいいなー、姉御って感じかなー?
「いいぞ!アジゴ!」
「だからそのあだ名で呼ぶなって言ってんでしょこの馬鹿!」
あ、そこの馬鹿にって先輩さんなのか!
喧嘩してる感じだけど仲良さそう、付き合ってるのかな?
「ひょっひょっひょ!次はワシじゃな、4号室に住んどる
一人だけおじいちゃんがいると思ってたけど長老さんってなんかイメージ通り。
「はっ、出たなセクハラジジイ」
アジゴさんが笑う様に呟いた。
「何を言う、ワシは短い余生を楽しんでおるだけじゃ、ワシの普段の行いを見てみぃ!尻を触ったりしてないじゃろう」
「芽衣ちゃん気をつけなよ〜?こいつヨボヨボのジジイのフリしてるけど暇があれば磯釣りで大物釣ってくるんだからまだまだ現役だよコイツ」
「とりあえず下着は部屋に干すことにしときます」
そう言ってニッコリ笑うとアジゴさんは爆笑していた。
「そこの美人がいうたとおりメインは磯釣りじゃ、昔は丘釣りも得意じゃったんじゃがのう」
長老はそう言って座る。
また釣りの話してる、みんな釣り好きなのかなぁ?あたしあんまりやったこと無いんだけど。
「はいはーい!5号室はあたしー!
田中えみ!高校生だよー!
こっちの高校通ってるからリョーシ兄ちゃんに頼んでシェア生活してまーす!」
兄ちゃんってことは妹さん?
「リョーシ兄ちゃんとは従兄妹だよー!結婚できるんだよー!I love you兄ちゃーん!」
随分ハイテンションな子だわ。
「さて冗談は置いといてっと、あたしはイカが大好きだからエギングメインね!みんなエギちゃんって呼ぶよー!よろしくね!」
冗談だったんかい!
いやでも途中マジな目してたと思うけど。
「どうも!6号室に住んでます!
コージって名前で釣り系youtuberやってます!目標は目指せ釣りよかでしょうさん越えです!」
おお!youtuberまで!
「お前釣りよかさんどころか銀の盾も程遠いやんか!この偽サックが!」
即座にBIGさんのツッコミが入る。
「も、目標は目標なんですっ!
得意な釣りは動画にできるならなんでも!です!」
焦りながら偽サックさんが着席した。
「7号室...、
...同人作家...やってます...。
穴釣りが好きです...ふふふ...影から...引っ張り出して...食べます...」
え!?テンション低っ!髪長っ!
「彼女のあだ名は貞子ちゃんね」
アジゴさんが補足する。
長い黒髪で顔が隠れているのでまさに貞子さん!って感じだ。
「9号室、
ここらへんに住んでる大学生ってことはもしかして無茶苦茶頭いいって事?
「趣味でルアー作りをやってるのでルアー釣り全般をやります、アジングからショアジギまで!
みんなからはダマシって呼ばれてます、ごく一部に工場長とかいう人もいますけど」
ダマシさんははにかみながら座る。
「最後は俺だな、
ここの管理人はリョーシだけど実働隊は俺とBIGだから。
釣りは五目釣りだけどアジ釣って泳がせることが多いかな?よろしく!」
わー!職人さんが二人も住んでるってすごい安心感ある!
やっぱこの家すごい!あとメンツが濃ゆい!
「一通り自己紹介も終わったことですしもう一度乾杯しましょうか?」
リョーシさんがそういうと横から待ったがかかる。
「おいリョーシ!まだ潮田ちゃんの好きな釣り聞いとらんぞ?」
え!?釣り?
あたしがポカーンとしているとリョーシさんは気まずそうな顔をしている。
「リョーシ...お前まさか...」
「仕方なかったんですよ!募集条件に釣り好きじゃ無いとダメとか書いてると怪しまれて入居者来ないんですから!」
リョーシさんが開き直ったように答える。
「お前ここをどこやと思っとーとや!?釣りハウスやぞ釣りハウス!」
えー、ツリーハウスじゃなかと!?
「ちょっとリョーシくん!アタシが入る時も釣りできなきゃダメですーとか言ってたくせにいきなりの路線変更はひどく無い!?」
アジゴさんもヒートアップしてきてる。
あああああ!どぎゃんしよ!?どぎゃんしよ!?そうだ!
あたしはバンッと机を叩くと顔を上げる。
「あたしが釣り出来たらよかとですよね!?」
いきなりの事に一同はこっちを見てウンウン頷いている。
「じゃああたし釣りします!立派な釣り女になって見せます!」
酒の酔いも手伝ってあたしは宣言した!後悔はしていない!
するといきなりアジゴさんがケタケタ笑い出して涙目のまま言った。
「芽衣ちゃんさぁ、釣り女はないでしょ釣り女は!
せめて可愛く釣りガールって言おうよ」
そう言われて恥ずかしくなったけどこうなったら勢いだ。
「釣りガールに!あたしはなる!」
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