第4話 宴の準備

「ん、うーん...」

 自室のベッドで寛いでいたあたしはいつの間にか寝落ちしていたようだ。

 時計を見ると19時、日もちょうど沈んだ頃だった。

 ブルルル、キッ!

 お、車が帰ってきたみたい!田中さんかな?

 そう思っていると示し合わせたように続々と車が帰ってくる。

 私の歓迎会をしてくれるって言ってたから時間を合わせて帰ってきてるのだろうか?

 駐車場からガヤガヤと話し声が移動してきたはずなのに一向に玄関が開く気配がない。

 出迎えようと部屋から降りてきていたのになんで?と思って声を聞くとBBQをするという芝生の方、そこにある外流しの方から声がしている。

 しかしよくBBQをするからって外にキャンプ場みたいな流し台作っちゃうなんて田中さんもすごいなぁ、もしかしておじいちゃんの代からかもしれない。

 歓迎会とはいえ準備の手伝いもしないのはこれから同居する身として申し訳ないのでサンダルを履いて外に出る。

 うわぁ!

 BBQ用の芝生に向かってLEDの投光器が設置してあるのは見てたけど...すごく明るい!

 下手をすると駐車場の外灯より明るいんじゃ無いかな?

 これならBBQしていない時にちょっとした運動もできるレベルだ!

 そう思いながら近づいていくと流しで何かしている人達とテーブルや椅子を設置している人達に分かれていることに気づく。

 何かお手伝いできないかな?と流しに一番近くに居る男性に声をかける。

 ち、近くにいるから声をかけるんだからね!決して好みのマッチョだからじゃないんだからね!

「あのー、すいません」

「ん?」

「今日ここに越してきた潮田芽衣ですけどなんか手伝うことなかですか?」

 そういうと男性は。

「おーい!涼士!今日の主役が来たばーい!」

 と叫んだ!声大きい!

「ああ、潮田さん降りてきたんだね、もう少しで下拵え終わるからちょっと待っててね」

 という田中さんに。

「まーたお前は女の前で艶こいてから!」

 さっきの男性が田中さんの背中をバチンッ!と叩く。

「うわー...バリ痛そー...」

 しかし田中さんは気にする事もなくそのまま流しに向かう...って!

「なんねそのでかい魚は!」

 あたしは思わず叫んだ。

 よく魚屋さんで売ってるブリ、50センチもあれば大物として結構な値段が付いているやつコレ1メーターぐらいあるよ?

「ああ、これ?潮田さんのために先輩が釣ってきてくれたヒラマサだよ」

 それを聞いたマッチョさんがふんっ!と胸を張る。

 ヒラマサ!?なんそれ!ブリじゃなかと!?

 おっとまた思考まで方言が来とる。

 というかこのマッチョさん田中さんの先輩なんだ!

「今日はお肉の他に刺身とマサしゃぶがあるから楽しみにしててね」

 田中さんがそう言ってヒラマサ?の首をドンっと落とす。

 すぐにお腹を開いて内臓を出すとお腹と背中に軽く切れ目を入れてそこから包丁をスッスッと入れていく。

「うわ!上手じょうずかー!」

 女のあたしが思わず声を漏らすほどの鮮やかさ。

 あれよあれよという間にヒラマサは皮を剥いでお店で売ってるようなブロックになりそのまま薄い刺身と厚い刺身に切り分けられた。

「さ、準備完了、食べながらみんなで自己紹介しようか」

 田中さんはそう言って準備したヒラマサを軽々とテーブルに運んでいくのだった。

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