第3話 お引越しと芽衣の好み
「え?田中さんがオーナー!?夢舞台の社員さんじゃなかったとです?」
驚愕の事実に思わず問いかけるあたし。
「もちろん社員ですよ、昼間は会社に出たりこうして物件案内をしたりしています。
ここは私の個人資産で仲介など会社を通しているんですがなにせ自分の家ですから管理は自分でやっているんですよ」
えー、凄い!見たところまだ20代なのにこんなお家があるなんて!
あたしのそんな視線に気づいたのか田中さんは言う。
「資産家だった祖父が海好きの人だったんですが5年前に亡くなってしまいまして、親族は皆福岡市内の物件などを欲しがるので私はここを相続したんです。
相続税と建物のリフォームで貯金は全て使い果たしてしまったのでシェアハウスとして貸し出す事にしたんですよ」
きっと別荘とか終の住処で海の近くの家を持っていたんだろうなぁ、素敵なおじいさんだったんでしょうね。
「それでは中で手続きをしましょうか、保証人の説明や必要書類などありますが準備していただければ即入居が可能ですので」
こうしてあたしはツリーハウスの住人になる事になった。
ただ一つだけ気になったのは敷地内にはツリーハウスどころか大きな木さえ見当たらなかった事だけだった...。
一週間後の日曜日、あたしは両親と共に荷物を持ってツリーハウスへやって来た。
なんせ格安な上に布団1組有れば生活できるほどに充実した設備。
洋服や個人用の家具さえあれば十分生活出来るから早く越したかったんだ。
パパが会社から借りてきてくれた軽トラからベッドやタンス、TVなどを下ろし自分の車から洋服や小物などを下ろして荷ほどきすればあっという間に引っ越しは終了。
中を見た両親は。
「こげな部屋が2万ちょっととかお前騙されとるっちゃないとや?」
とか。
「ちょっと芽衣!あの管理人さんの田中さん?イケメンやしこげん大きな不動産持っとるっちゃけん狙い目よ、頑張んなさい!」
とか言って帰った。
あたしが福岡市内で生まれ育ったのに話すと方言が強い理由がこの両親。
生まれてこの方家では博多弁バリバリの生活をしていたのだ、今更標準語で艶こいて喋れんって...おっと思考まで博多弁が出張ってきとる。
まぁあたしも福岡大好きだし自分の言葉に不満はない。
「無事引っ越し終わられたようで何よりです。
今日からよろしくお願いしますね」
そう、田中さんがイケメンなのに好みじゃないのはこの標準語だからだと思う。
あたしの好みはもっとワイルドで博多弁バリバリの漢字で書くなら
よく晴れた日曜日、今日も住民の人は居ない。
今日は乗り合わせが多いのか何台か車が停まっているようだ。
現場の職人さんなのかな?ハイエースの後ろの窓によく見るステッカーが貼ってある。
なんかGから始まる崩し字のステッカー。
「今日の夜は潮田さんの歓迎会でバーベキューをする予定なので楽しみにしておいて下さいね」
そう言って田中さんは車で出かけて行った。
この前の夢舞台の営業車ではなく大きな四駆だった、ランドクルーザーって書いてあったっけ。
一人になってしまったあたしは自分の部屋、白を基調としたおしゃれな洋室でくつろぐのだった。
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