第8話 結局、弁当が その2
↓前話の続きである。
「……お弁当?」
「うん。だって、僕がお弁当の感想をはっきりと言わなかったし、タコさんウィンナーの出来栄えも素材ありきみたいなこと言っちゃったから、それを訂正しようと思って」
「そ、そうよねっ。私の弁当を気に入ってくれて良かったわ」
「(メイさん、目を泳がせてたけど、僕何かまずいこと言ったかな?)」
否。マズいのはセリフではなく思考回路の方である……が、翔が気付く訳もない。
「(なぁんだ、お弁当の話だったのね。私の気持ちなんて言うから、てっきり翔さんを可愛がってる気持ちのことかと思ったじゃない。気付かれたところで問題ないのだけれど……というより、むしろなんだか気付いて欲しかった気もするわね)」
ベストカップル賞の表彰式の時に、あれだけ自分達の気持ちを暴露し合っておきながら進展がないのに、気付くも何もないのである。
「(いいえ、メイ。まだ諦めるのは早いわ。ここは逆に私の弁当の話から話題を膨らませるのよ)」
『私の』弁当とは、当然、彼女が今口にしているお弁当のことである。
「翔さんの作ってくれたこのお弁当だって、可愛くて私は好きよ」
「(ふふっ、言ったわ、私。ここから可愛いということを掘り下げれば、鈍感な翔さんだって気付くはず)」
掘り下げられれば、の話である。
「僕の手作りってどうしても茶色っぽいもの多くなるから、妹には文句しか言われないんだけど、気に入ってもらえて良かったよ」
しかし、彼の心中はそんな穏やかなものではなかった。
「(絶対、これ気に入らなかったときのセリフじゃぁあぁあん!!こんな茶色ばかりの弁当のどこが可愛いんだよっ!!お世辞丸わかりじゃん!!えっ、僕が素直に褒めなかったから怒ってんのかな!?でも、僕本心からメイさんのお弁当好きって言ったんだけど!?)」
そして、このやり取りを見聞きしていたクラスメイト達の心中もまた、落ち着いたものではなかった。
『そんなことよりも——』←心の声
「「「「「「――お前ら、弁当作り合ってたのかよッ!!」」」」」」
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