第7話 結局、弁当が その1
委員会に無事(?)所属できることが決定し、大村翔と大西メイは今日も今日とてイチャイチャしていた——
「翔さんのバカ!」
「メイさんの方が分からず屋だっ!」
——はずだったのだが。
それは昼休みの教室で起こった。
「今日もお弁当ありがとうね、メイさん。しかも、昨日僕がリクエストしたタコさんウィンナーも入ってるし」
「どういたしまして、少しウィンナーも拘ってみたし、今日の出来栄えには自信があるの」
「だから、いつもよりパリッとしてるのかな」
「ふふっ、私の焼き方を褒めてくれたって良かったのよ?」
「あっ、も、もちろんそれもあるよ!」
「慌てちゃって。翔さんったら、可愛いんだから。私、翔さんの気持ちなら何でもわかる気がするわ」
『どこがだよ!』と、二人のやり取りを見聞きしていたクラスメイトたちの誰もが突っ込んだ。
けれども、本人はそのツッコミに気付いていない上に、翔もまた当然気付いている訳がなかった。
「(えぇ!?もしかして僕がメイさんとこうしてお話するのが気に入っているのバレてたのッ!?いや、でもメイさんにそんな素振りはなかったと思うんだけど……あっ、なるほど、そういうことか!これはきっと僕を試しているんだ!僕にカマをかけて、僕から本心を聞き出そうって腹だね)」
そんな訳がない。(byナレちゃん)
「(い、言っちゃったわ、私。物凄く恥ずかしいけど、言っちゃったっ!この間、私との時間を大切に思ってるって言われたからかしら!どうしよう、翔さんのことを本心から可愛いって思ってることバレちゃったかも!)」
そんな訳もない。(byナレちゃん)
「(でも、それならメイさんも正直に聞いてくれればいいのに……。へへ。だけど、それを恥ずかしがって言えないメイさんも可愛いな。顔も赤くなっちゃってるし)」
そんな訳も……いや、それはあながち間違いでもないね。(byナレちゃん)
「(……って、どんどん翔さんが笑顔になってるんですけどぉ!?えっ、本当にバレちゃったの、私の気持ちが!?で、でも、なんだか悪い気もしないわね……。いや、もうここまできたら探ってみるのもありなんじゃないかしら!)」
「か、翔さんって……。私の(翔さんを可愛がってる)気持ちに気付いてる……の?」
彼女は不器用であった。
だが、しかし。だからこそ、進展もあるというもの。
それまでガヤガヤと騒がしかった教室が、一瞬で静かになった。
『これって、告白が始まる流れか……?』←クラスメイトA
『それしかないだろ』←クラスメイトB
『いや、わからんぞ。なんせあの二人だからな』←クラスメイトC
『でも、告白だったら、やっとこの高校に入学して以来続いてたモヤモヤが消え去るよ』←クラスメイトD
『あたし、この前彼氏できたのに、あいつら見てると自分達が付き合ってるって言えるか不安だったんだよね』←クラスメイトE
『拙者としては、少し悲しいでござる。彼らは付き合っていないからこそ、あれ程恥ずかしがっていたのであるよ。けれども付き合い始めてしまったら、それはもうカップルを軽く通り越してもはや夫婦になってしまうでござる』←クラスメイトF
『いいや、ござるさんはわかってないな。それがいいんだろ?あの微笑ましい、夫婦みたいな掛け合いとイチャつき。アレはリア充アンチの俺ですら、結構好きだからな』←クラスメイトB
等々、色々と囁かれる声も翔やメイには届かない。
「う、うん。まぁね。これだけ一緒にいれば、メイさんの気持ちに気付かない訳がないよ」
「やっぱり、そうだったのね……」
そして、遂に。翔はその言葉を口にした。
「僕は君のお弁当が大好きさ」
「「「「「「はぁぁ………」」」」」」
クラス中のため息がハモった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます