第5話 すれ違いによる大逆転
↓またも、前話の続きである。
「よし、落ち着いたかな、二人とも。そして、お互いに反省したかな?」
「……はい」
「あの……、僕は別に反省するようなことしてないと思うんですけど……?」
「いいや、だいぶ罪深いことを言っていたと思うよ?」
そう言われても気付かないのが、
人類最大級のすれ違いを起こしている男は、やはり鈍感さが尋常でなかった。
「それで、さっき言ってた『私との時間』って、あれはどういう意味なの?」
「君と夜に天体観測をする時間だよ。委員会の仕事が長引いたり、家に持ち帰ってやる仕事ができたら、時間を削ってしまうだろう?」
「そうかもしれないけど……」
「僕にとって、君と過ごすその時間は本当に大切なんだよ。だから、どうしても譲れないんだ」
「っ!?」
「(彼女、さっきから時々顔を赤らめるけど、どうしたんだろう?僕別に彼女が恥ずかしくなるようなことは言ってないよな?)」
さすが、彼女の表情を読めないことに関して、定評のある翔である。
「(なにこれ、なにこれ、なにこれッ!?それも『同志』としてって意味なんだろうけど、でも恋人同士って意味じゃない辺りが彼らしくて、逆に嬉しい……)」
こちらも彼氏の意味を素直に受け取らないという点で、右に出る者はいないようである。
「折角、一緒の委員会で趣味の話をする時間が増えると思ったのに……」
「なっ!?」
メイのその何気ない一言は、翔の心を大きくぐらつかせた。
「(趣味の話の時間が作れる……!?た、たしかに、どうせずっと委員会室で仕事続きな訳じゃないだろうし、それでいて確実に委員会時はメイさんが話せる場所にいる。例えば、前日の天体観測の話をしたっていいだろうし、メイさんから登山の話だって聞くのも楽しそうだ!!)」
しかし、決意に歪みが生じていたのは彼だけでなかった。
「(でも、確かに委員会でわざわざ話す必要はないものね。それに、あれだけ私と天体観測をする時間が大切に思っているなら、天体観測をする頻度も増えるでしょうし……ふふっ。仕方ないわね。翔さんったら、わがままなんだからぁ)」
まぁ、毎日天体観測をしているくせに増える頻度なんてどこにあるのか、と
そして、ニヤニヤする二人を前にして、学園長はこう言った。
「結局、どうなったのかな?」
「僕は風紀委員会に入ろうと思います」
「私は辞退させていただきます」
二人の「えっ!?」という素っ頓狂な声が、すっかりハモって、学園長室に響いた。
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