祖母との再会 3
「いえ、今の会社待遇は良くはありませんが気に入っているので」
と断ると残念そうな顔をしていた。
「さあ次は私の番だよ」
とばあちゃんが張り切っていた。その横で琉さんがほっとしていた。
「花伊。ありがとう。雪絵の話を聞くことにしてくれて。彼奴凄いな。なんというかマイペースすぎるよ。まあそれが彼のいいところなのかもしれないけど」
「そうだね。まあとりあえず乾杯と行きますか」
その掛け声とともに僕たちはグラスをこつんと合わせた。するとばあちゃんの話が始まった。梅酒はすっきりとした味わいで美味しかった。
「私が生まれたのはね、星の都薔薇区東町の生まれなんだ。私の家は貧乏でね苦労はしたけど、学校には通わせてもらえてね。いつか大人になったらお母さんを楽させてあげるんだといきまいていたよ。でもねそれは叶わなかった。私が15の時に母さんは病で死んでしまってね。それからは大変だったんだよ。弟たちの世話も家事もすべて私がやらなくてはいけなくてね。でも私には2つ下の弟がいて……」
そう話を続けようとしたときマスターが僕の目の前に肉豆腐とからあげそして山盛りのサラダを置いた。
「凄いですね。ありがとうございます。皆さんも一緒に食べてください」
僕はそう言うと取り皿にサラダ、肉豆腐、からあげを取り分けた。その様子を見て、ほかの二人は顔を輝かせた。恭さんが、それぞれ取り皿を持ってきてくれていたのでありがたかったけど、話を邪魔されたばあちゃんは不服そうな顔をしていて雪さんに慰められていた。
僕たちが食べ始めたころを見計らってばあちゃんが話を再開した。
「その弟が家事を手伝ってくれてね助かったよ。そして私は運命の出会いをすることになるんだよ。あの人はとても不器用な人でね。私が支えてあげなくちゃと思わせるような人だった……」
そんな話を聞きながら僕は眠りの世界へといざなわれていったが、ばあちゃんの話はまだ続いていたようで僕が寝ていることに気づいた琉さんがばあちゃんをとめたようだ。そこは何となく覚えているこんなことを言っていた気がする。
「雪絵そこまでにしてほしい。眠ってしまったようだからね。花伊送っていくのだろう?」
「もちろん約束したからね。それに今日は金曜日、明日は休みだからね。ゆっくり寝かしてあげよう。おやすみ、良い夢を」
そこで僕の意識は完全に途切れる。これは後から聞いた話なのだが、どうやら花伊さんが僕を背中に背負い琉さんとともに僕を送ってくれたらしい。
花伊さんは僕を背負っているため、僕の家の鍵が出せないため琉さんが僕が一人で住んでいるマンションの鍵を開け中に入り、内側からしっかりと鍵を閉め二人は帰ったようだ。机の上には達筆の置手紙があり気が向いたらおいでと書かれていた。
迷惑をかけてしまって申し訳ないと思う反面どうやって行けば良いのかが分からなかったが、あんなに落ち着けるところはないためまた行こうと思った。
今日は久しぶりの休日でゆっくり過ごそうと思っていたら携帯に電話がかかってきた。その相手はもちろん上司だ。
「もしもし」
そう出ると上司の焦った声が聞こえてくる。
「今大丈夫か? 大丈夫なら来て欲しいんだけど……」
「無理ですね。今日は家でのんびり過ごす予定ですので今日は無理です諦めてください。僕これで4週間連続なんですよ? いい加減自分でご飯くらい作ってください。僕が作る理由ないですから」
それだけ言うと一方的に電話を切る。が、電話は一向になり止む気配はない。
「なんなんですか?」
「本当に済まない。急いで来て貰えないか。急に急ぎの案件が入ってな」
「誰からですか」
「いや誰とは言えない。だけどすぐに来て欲しい」
「無理です。僕は貴方の親ではありませんので」
そう言って電源を切り一息つくいているとインターホンがなった。誰だろうと思い扉を開けると不機嫌そう琉さんがいた。僕が固まっていると琉さんは「何度も鳴らしたのに出ないなんて酷いじゃないかなんてな急にきたの俺だし遊びに来たぞ」と言った。僕は「驚かせないでください。こっちは上司の相手で手一杯なんですからどうせあの人のことだからカップ麺より暖かいご飯が食べたいが作れないから僕を呼び出そうとかいうふざけた理由で僕を休日出勤させた挙句帰ろうとすると1週間分の料理を作れとか言ってそれで昨日は夜中の2時までかかったんですから」
「それは横暴だな。よし! それじゃあ俺が頑張っちゃおうかな一応シェフだしな。お前の会社に行って料理作ってやるよ」
「それは申し訳ないです。」
妖居酒屋「涼」での不思議な時間 星塚莉乃 @americancurl0601
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