第一章 祖母との再会 1
周りの騒がしい気配を感じ、目を覚ますとそこには僕の見知った顔がいた。その人は、僕の名前を呼んでいた。
「ばあちゃん」
僕が、そうつぶやくとその人は優し気な笑みを浮かべた。
「涼、お前大丈夫かい? いきなり倒れたと恭から聞いてね。多分、結界を通ったからだろうと言っていたよ。旬もそうだったからね。」
「そうなの? 父さんも。お見苦しいところを見せてしまいすみません」
そう僕が言うと、尻尾が二本ある猫の店主は安堵の表情を見せた。
僕は、どうやら僕の知らない世界に来てしまったみたいだ。僕が、不思議そうな顔をしているのに気づいたのか祖母が説明をしてくれた。
「ここは妖の世界なんだ。
「これでも驚いているよ」
僕がそう答えると祖母は何とも言えない表情をしていた。
そう昔から僕は、感情を上手く表現できない。僕の名前は、今は涼とだけ名乗っておくことにする。ここにいるばあちゃんは行方不明になっていると両親から聞いていたが、父さんはどこかで元気に暮らしていると言っていたのでそうなんだとそれだけ思っていた。元気ならいいかと。そんなことを思っていると雪が話しかけてきた。
「全然、表情に出ないんだね。恭さんみたいでつまんなーい。それよりご注文は?」
僕が答えに困っていると扉がガラガラッと開き暖簾をあげて鬼が現れた。
「お邪魔するよ。あれ? 君、旬に似てるね。もしかして、旬の息子? どうして床に座っているの? 席に座ればいいのに……おや、雪どうしたんだい? 不服そうだね。僕はとりあえずレモンサワーで」
それだけ言うと、僕を立たせるとカウンター席に座らせその隣に座った。
先ほどの女性は雪という名前らしく、注文を受け嬉しそうな顔をしていた。
「恭さんレモンサワー一つ」
そう元気よく言ったのだが、店主はもう作り始めているようで静かに頷いた。
「お兄さんも注文してよ?」
そう言われてもメニューもなしに何を注文すればよいか戸惑っていると隣に座っている鬼が教えてくれた。
「僕のおすすめは梅酒かな。個々の梅酒はね、自家製なんだ普通はリキュールとかで漬けるのが一般的なんだけど、ここは珍しく日本酒で漬けているからさっぱりとした味で美味しいんだ。でも、お酒が苦手な人にはお勧めはしないけどね。雪、頼んで欲しいならメニューを出さないと。彼はここに来るのが、初めてなのだろう? メニューもなしに初心者が飲み物や食べ物を頼むのは難しいものなんだ。君のそういうところ気を付けた方がいいよ?」
彼はそう言うとにっこり微笑んだが、その微笑みに圧があったのは気のせいということにしておこう。
「じゃあその梅酒で。僕は、お酒強い方なので。その梅酒お願いします」
と雪さんに注文したのだが、反省し落ち込んでいたのか聞こえない様子だったので店主の恭さんが低い声で一言。
「鳳凰ルージュ梅酒だね。待ってて今作るから。これお待たせ
「ありがとう。マスター。そうだね。後から来るとは言っていたけどね。彼奴は働きすぎなところがあるからね」
「そういう君もレストランを経営しているのだろう? 大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫。みんな僕と違って働き者だからね。特に春なんてすごい働き者でね。ああ春っていうのは僕が人間界から連れてきた女の子でね。身寄りがいないっていうからそれなら僕の所に来ないかっていってね連れてきたんだよ」
彼はそう懐かしむように話したので僕はそうなのか程度に思っていた。するとこんなことを聞かれた。
「それで、君はどうしてここにいるんだい? 人間が入れないような結界がはってあったように思うのだけれど」
「それが、僕にもよくわかんないんですよね。そこにいる雪さん強引に連れてこられて入った時になんか静電気的なものが体を走り抜けていた感じはあったんですけど……。でも、もしかしたらこれのせいかもしれません」
僕はそう言って白い羽と黒い羽を鞄の中から取り出した。それを見た琉さんは驚いていた。
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