第8話 黄金の魔女

ちょいちょい


放課後、パオラに手招きされ。

特殊学科の教室へ。


そこに待っていたのは、仲の良い友人グループ。

ミレアに、ラクチェ。


パオラは賢者。

ラクチェは神鍛冶士。

共に、俺とは格違いの、正真正銘の天才だ。


「クリス……昼間一緒に居た魔女は、どういう関係なの?」


ミレアが尋ねる。

ミレアは、俺の名前、クリストを縮めて呼ぶ。


「ミレアに貰った助言を参考にしたんだ。万能戦士──即ち、魔女であるルルイエとPTを組んだんだ」


ぶふ


パオラが噴き出す。


「……パオラ、どうした?」


「ルルイエって……黄金の魔女ルルイエですか?!国が買えるほどの資産を溜め込んでいるという噂の……そして、入学以来徹底してその実力を隠している……」


そんなにお金持ちだったのか。

尚更、食事をパンで済ますなよ。


実力を隠している云々は……まあ隠してるね。

進級大丈夫か?


「確か誰とも関わりを持たないと聞いていますが……よくPTを組めましたね……流石はクリストです」


「ルルイエとは利害が一致したんだ」


有名人とか知りませんでした。


「国が買えるって……本当なの?」


ミレアが怪訝な顔で尋ねる。


「流石に、噂に尾ひれ背びれがついているだけだと思います。とにかく高価な魔導素材を、比較的安価で店に並べるので、魔導士の間では有名なんです……店を開けるのがとにかく不定期なんですけど」


パオラが首を振る。


普通のマジックポーション類が作れないから、ソロでダンジョンに潜った成果を並べているだけだと思います。

売れたお金どうしているんだろう?

末端価格で捌いても、それなりの金額にはなるよな?


そう言えば。


「パオラ、これまた頼む」


パオラは、独自の流通ルートを持っている。

レアの処分はパオラに頼むようにしている。


「SR片手剣が2本、SR片手槍が1本……相変わらず運が良いのか悪いのか分からないですね」


悪いと思うよ。

まあ、SR斧なんて聞いたことが無いけれど。


「この剣と槍は、いつも通りミスリルで欲しい。この剣だけは、半分は現金で頼む」


「現金、ですか?」


パオラが不思議そうにする。


「ああ。昨日、ルルイエと一緒に、試しに潜ったダンジョンで出たんだ。半分はルルイエの取り分だ」


「試しにで、上級ダンジョンですか?」


「いや、中級で出たんだ」


「……中級で出るんですね」


まあ、かなり変異入ってたからな。


「ラクチェ、ミスリルがそろそろ溜まるから、また頼む」


「……ガンバリマス」


ラクチェが死んだ魚の様な目で言う。

ミスリルを使って、クラフトで斧を錬成……が、失敗すると素材が消えるので、みんな嫌がるのだ。

だいたい、1回のクラフトで、大きめの屋敷が買えたりする。

最初失敗した時なんて、泣いて身体で払うとか言い出した。

こっちは、消失のリスクは理解した上で頼んでいるのだ。

こっちが平謝りだった。


一応、通常サイズの斧が1つ、投擲用のトマホークが3つ……足りない、もっと欲しい。

できれば精錬強化したいんだが、それは断固拒否された。

精錬強化に失敗したら消えるからなあ。


-------------


観「製造で素材渡して、失敗すると、お互い気まずいよなあ……」

歌「成功失敗のエフェクトが出るゲームでも、安い素材を使って失敗させて、って詐欺もありますしね」

怒「他人を信頼する方が愚かだと思うがね。自分で製造スキルを伸ばすのが一番平和だと思うよ」

定「ヒヒヒ……みんな違ってみんな良い……各自、異なる事を得意として、みんなで助け合う……それこそが美しい」

怒「何でも自分でできた方が楽しいと思うがね」


定「で、ラクチェは身体で払ったのかぃ?」

歌「そんな訳ないでしょう。そもそも、ミレアが断固阻止します」

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