第3話 仮想ダンジョン

「先輩……道間違えてますよ」


ルルイエが、呆れた様に告げる。


「いや、あってるぞ?」


土系の中級ダンジョン。

物理が通じやすい敵が多く、速度も遅い。

初心者の養殖にはもってこいだ。


「ここ、PT推奨レベル40……中級ですよ?」


……おおっと。

中級ダンジョンでは稼ぎが低いから、上級ダンジョンに行きたい、か。

情けない話だが、初心者を連れて上級ダンジョンに行ける程の実力は無い。

罠とか、物理耐性とかうざいからな。


キィィィ


次元結晶を使用。

仮想ダンジョンが展開される。


「ああ、使っちゃいました……勿体ない」


次元結晶。

一定時間だけ存在する仮想ダンジョンを創る為の道具だ。

初級、中級、上級で、それぞれ別の結晶がある。

メリットは……そのダンジョンを占有できるので、狩りが競合しないとか、未開封の宝箱があるとか……そういった内容だ。

共用のダンジョンは色々と面倒なんだよな。


結構値は張るが、素材を渡して知り合いに創って貰っている。

なので、普段から結構潤沢に使っている。

中級であればそこまでケチるものではない。


「いくらPTメンバーが増えたからって、中級なんて無茶です。先ずは初級で実力を見るべきです」


「そっち?!」


いや、流石に初級ダンジョンでレベルを上げていたら日が暮れる。


「大丈夫だよ。流石に中級ダンジョン程度なら、キミを護れるよ」


「……中級ダンジョンってかなりきついですよ……?先輩、2年生ですよね。2年ならそれこそ、特殊学科や上級学科、クラスの最上位成績者でもないと、きつい筈です」


「確かに戦士学科……底辺学科の、しかも最上位では無いが……大丈夫だよ。もし危険だと思ったら、引き返してくれて良い」


あいつもう戦士科から出て行けよ。

おかげでクラス一位になれないじゃねーか。


「……分かりました」


ルルイエが渋々といった様子で頷く。

仮想ダンジョンは10分程で入り口が消えるからな。

急いで入らなければならない。

ちなみに、出口は色々な箇所に造られるので、出る分には容易だ。

制限時間が過ぎてダンジョンが崩壊したら放り出されるしな。


コツ……


岩造りのダンジョンに、足を踏み入れる。

入り口付近は安全地帯セーフエリアになっているので、入った途端に襲われる、という危険はない。


「でも、何で土系なんですか?物理に強い敵も多いですよね?」


「いや、斧なら意外といけるぞ。上級ダンジョンの物理耐性程じゃないしな」


「……速度と、攻撃力上昇でしたっけ……」


武器の使用時、補正が働く。

例えば両手剣なら攻撃力上昇、槍なら速度上昇、片手剣と盾なら防御と回避の上昇……

そして、斧は、全武器中唯一、低下するステータスがある。

攻撃力は上がるが、両手剣の方が上昇幅は大きい。

このあたりも不人気の理由か。

まあ、単純に映えないってのもあるんだけど。

やはり剣は格好良い。


-----------


猛「ほーほー、斧不憫萌えです」

歌「やっぱり世の中剣ですよ、剣」

怒「魔法が強いゲームでも、拘って剣を使うプレイヤーとかいるしね。一定の派閥がいる武器だね」

観「ところで、主人公が一位がどうこう言っているが……斧でも結構クラス上位なのか?」

歌「クラス2位ですねー。クラス1位がチートなせいで、2位に甘んじてますけど」

観「結構頑張っているんだな」

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