斧使いだって恋がしたい~斧が許されるのは三歳までだよね~

第1話 ぷろろーぐ

キイイイ


古びた木の扉が開け放たれ。

歌う存在が入ってくる。


「おや、遅かったですね。時間と場所変更のメールは送っておいた筈ですが」


ふよ、と猛禽類が小首を傾げ。


「来ますわね……あと10分後にね!」


歌う存在が半眼で告げる。


歌う存在が、浮遊するベッドへと腰を掛け、


「時間変更のメールは、その変更後の時間より前に届くようにしなさい」


「やや……これは手厳しい」


猛禽類がふわふわと頭を掻く。


「それで、猛禽類よ。今日はどんな観察結果おはなしを聞かせてくれるんだい?」


怒らぬ存在が問うと、


「はい。本日は、何故か不幸な事に突如世界が改変され、ダンジョンだらけになってしまった世界のお話を──」


「待ちなさい」


猛禽類の話を、歌う存在が遮る。


「貴方は前回騙ったでしょう。なら、今日は私の番です」


歌う存在が胸を張る。


「……おや……仕方がないですね。それではもう少し熟成させますか……そうですね、病魔とか放っておきましょうか」


ぶつぶつ、猛禽類が呟き、身を引く。


「歌う存在の話か、楽しみだね。どんなお話だい?」


観測者が尋ねる。


「はい。オーソドックスな立身出世もの……斧使いの少年は、幼馴染みに恋をしていますが……残念ながら、2人の間には大きな身分差が。しかも、斧使い……この世界では、斧は野蛮で弱い……とされ、普通なら3歳までに剣に矯正するのですが……不幸にも斧の才能が突出していた……そんな境遇の主人公です」


「ぷーくすくす、斧が許されるのは3歳までだよねって奴だね」


怒らぬ存在が頷く。


「そう。主人公は、斧使いというハンデを抱えたままで、幼馴染みを射止められるのか……夜明けまで時間はあります、ごゆるりとお楽しみ下さい」


歌う存在が一礼。


「ほーほー、この世界に夜明けは無いんですけどね!」


猛禽類がふさっと羽を掲げた。

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