第11話 俺達の戦いはこれからだ

結局。

魔王軍はあっさり蹂躪できた。

力量差が圧倒的過ぎて、降伏された。


そして。


褒賞、アルカディの王位と。

美しいお姫様達。


……うん。

着飾ったお姫様達は、言葉にできない美しさ……


「どう……や?」


「うん、凄く綺麗だよ、みんな」


そう。


スノウ、フレア、イトニは、それぞれ王女様だった。


しかも、稀代の天才と言われる強さだったとか。

アルカディのせいで他国の連携が取れず、バラバラに行動していたのが。

俺が友愛フィリア付きでまとめてしまったから、一気に形勢が逆転したらしい。

本来であれば、人間側の勝利は絶望的だったとか。


俺以外の召喚者達は、女神様が元の世界に送還した。

俺はこの世界に残り、贅沢三昧の日々を──


「大変だトウヤ、民衆が城の前に集まって騒いでるんだ」


オリオンが駆け込んできた。

そりゃ、特権意識を持った国民に、今日からは他国からの搾取はやめろとか、働けとか言っても聞かないよね。

その為の政治工作してたんじゃなかったのか?


「トウヤ様!あんまりです!」


アルカディの元王女。

勿論、娶ったりはしない。

贅沢しなければ暮らせるだけの金品を与え放り出したのだが。

一瞬で使い切っておかわり要求。

駄目に決まっているだろう。

……まあ、オリオンが最低限の援助はしているらしい。


「大変ですわね、トウヤ。後でたっぷり慰めてあげますわ」


「いや、きみ達も手伝ってね?」


王族なら、政治のノウハウくらいあるだろ?


「ごめんなあ、トウヤ。うち、自国抑えるのに手いっぱいで……」


スノウが申し訳無さそうに言う。


アルカディに抑圧されていた国は、当然、アルカディに恨みを持っている。

というか。



「フレア、頼んでいた件は?」


フレアの母国、魔導王国は、アルカディに対して挙兵した。

まあ、国土も資源も奪いまくっているので、気持ちは分かる。

国土の一部返還で矛を収めてもらう。

そう調整して貰えるよう頼んだのだ。


「あいつら駄目ね。言う事聞きやしないわ。ガツンとかましちゃいましょう」


「それは駄目だ」


国が消えるぞ。

お前等が暴れたら。


「……やはり……イトニ、女神様に頼んで──」


「駄目ですよ、トウヤ。あいつはペペペです。頼りになんてしちゃ駄目です」


何でだよ。

そもそも、女神様の後ろ盾を上手く利用して、諸々の問題を棚上げしたんだ。

生じた問題は全て女神様に押し付けないと。


「イトニ、そう言わず、女神様に……」


「ですから、無理ですよ。あのペペペは、魔王が片付いて、私も嫁に行ったので、解放感から異世界旅行に旅立ちました。数千年は戻って来ないと思いますよ」


「「「「え」」」」


俺、スノウ、フレア、オリオンの呻きがハモる。


「え、あのペペペをあてにしてたのでしょうか?最初から言ってましたよね。アレはペペペだと」


……何……だと……


女神に丸投げした筈の課題が全て未解決。


「陛下!!」


「どうした?!」


慌てた兵士が駆け込んできた。


「それが……魔戦姫──いえ、魔王が今日も謁見を求めて」


「通すな」


「無理です!」


バターン


「トウヤ様!今日こそ建設的な話を!」


元魔王の娘にして、魔王軍を説得して和解を締結させた立役者。

現魔王。

そして、俺に求婚してくる変わり者。


ともかく……女神様の不在を悟られる訳には……


「お引取り下さい、魔王様!今は、女神様不在という緊急事態にどう対処するのか、その会議中です!」


いらん事を言うオリオンの妹。

オリオンが血相を変え、妹を部屋から連れ出す。


「大丈夫ですよ、トウヤ様。女神の不在は予期していました。やはり、私の提案……王家に我が王家も参加する……それが恒久平和に重要なのではないでしょうか?」


俺達は人間。

今の強さを維持できるのが何年か……


一方、魔族は寿命の概念が無い。

数十年後に再び侵略されれば、為す術がない。


それだけでは無い。

強権を得た俺達の子孫が、再び他の国を脅かす恐れもある。


魔王──ノアールの提案は、自分が魔族との架け橋に、そして、王家の権力の監視もしよう、そういう内容だ。

長命の魔族であれば、可能だろう。


……うん、実質的に、魔族に支配されているのでは。


女神様がいれば、牽制となったのだが……

そもそも、魔王軍を滅ぼせなかった時点で、過ちを犯していたのか……


「トウヤ、やはり魔王軍は滅ぼすべきだったのではなくて?」


魔王軍の降伏を受け入れる事に反対していたフレアが、怪訝そうに言う。


「ダーリンは優しいですからね。きっと我々も導いて下さいます」


ノアールが豊かな胸を張る。


どがーん


「陛下、大変です!民衆が、民衆が、城壁を破城槌で!」


何……だと……


「手始めに有象無象を焼いてきましょうか?トウヤ、友愛フィリアを!」


「焼かねえよ?!」


フレアの提案を一蹴する。


「フレア殿、意に沿わぬ国民を排除し続ければ、草木も残りません。時間をかけて説得すべきです」


「そんな悠長な事態ではありませんわ!まだ戦争は終わって無いですのよ!」


ノアールとフレアの舌戦。

十割方、ノアールが正しい。


「陛下!魔導王国により、グラフムベスク砦が陥落しました!」


「ああ、もうっ!」


俺達の戦いは、まだまだこれからのようだ。

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