第10話 報酬

「で、神様の言うとおりになるのを回避する為に、オリオンを暗殺か……頭のネジが幾つか飛んでるな」


「んんっ……そんなに褒めないで下さい。殿方に熱烈に責められては、もう私……」


「褒めてねえよ」


やばい。

こいつ、早くどうにかしないと。


「ともかく……イトニは速やかに国に帰れ。オリオンとの共闘はしなくて良いから」


「そんなっ。私を棄てないで下さい!」


そもそも拾って無い。


「あれ、イトニもハーレムに加えるんちゃうんか?可哀相やし……烈光アガペ持ちがいれば、バランスも良くなるで?」


「ハーレムじゃなくて、侍従な。あと、さらっとPTバランスの様な理由付けするな。後半だけ聞いてると、説得力が凄まじい」


これ以上、関係を増やす訳にはいかない。

身体がもたん。


「イトニも貴方に興味津々みたいだし。さくっと囲っちゃえば良いんじゃないかしら……それに正直、私達だけではそろそろきついのよ。夜のお相手が増えるのは歓迎ね」


おまいう。

せめて隔日にできないかとか、交渉しても拒否りましたよね。


「あの……私、毎日でも大丈夫です」


大丈夫じゃない。


こほん


イトニは咳払いすると、


解放パージ


鎧が消え、ゆったりとしたローブ姿となる。

聖職者、って感じだ。


イトニが、穏やかな声で言う。


「勇者様、召喚に応じて頂きありがとうございます。私は、女神メリウスに仕える神巫女、ライトニング=モーラ=イグニティと申します」


「「神巫女?!」」


スノウとフレアが叫ぶ。

ん?


「……かなりの実力者やとは思ったけど……イグニティ王国の王族にあたる人物やね。その中でも、最も神に愛された者が、神巫女の地位に就くらしいで」


スノウが呆れた様に言う。

つまり、外国のお姫様?


「俺を召喚したのは、あんたの国では無い筈だが」


あと、俺、勇者候補外だし。


「召喚対象は、メリウス様が選ばれるのです。私は、全ての来訪者様に感謝すべき立場」


……巫女ならそうなのかな?


「先程は大変失礼致しました。神の敬虔なるしもべ、イトニは、貴方を勇者様と認め、忠誠を誓います」


「勇者では無いんだが……まあ、もう1人増えても良いか」


ともかく……オリオンに話を通しておこう。


--


「承りました。全ては御心のままに」


オリオンの部屋から、オリオンの声がする。

誰か相当な上位者と話している?

父親、王様か?


だが、オリオンは国の上層部とは上手くいってないと思ったけれど。


ギ……


扉が自動的に開く。

オリオンがかしずき。

奥には美しい女性。


す……


スノウとフレアが警戒の色を浮かべ。


「……また悪巧みですか?」


呆れた声音でイトニが言う。

知り合い?


「ライトニング……そうですか、貴方もトウヤさんと……」


オリオンは、頭を垂れたまま。


「貴方は?」


他国の王族?


「女神ですよ。何やってるんでしょうかね」


イトニが呆れた声音で言う。

ああ、そっちかあ。


「トウヤさん。今、オリオンと話していたのですが……勇者としてこの世界を救って頂けないでしょうか。勝手な事を申し上げているのは分かっておりますが……勿論、報酬は十分に用意します」


「本当に勝手やな」

「受ける必要無いですわ」

「相変わらずペペペですね」


スノウ、フレア、イトニが冷たい声で突っ込む。

いや、あんたらの世界の話だよな。


「報酬って何でしょうか?」


やる気は無いけれど、聞くだけ聞いておこう。


「勿論、勇者としての栄誉、魂の格を昇格させ、運気を上げ……」


女神様が色々並べる。

いやまあ、良い事なんだろうけど。


「それとは別にこの世界の住人として、報酬を用意しようと思う」


オリオンが、俺達を見て、そう切り出す。

大金とか、領地とかかな。


「まずは、この国、アルカディの王位を譲ろうと思う」


「何でだよ」


お前が簒奪するんじゃなかったのか。

勇者の功績とか、女神様の存在とかを利用しつつ、体よく人に押し付けもできて、色々都合良さそうですね!


「加えて……勇者の報酬と言えば、姫との結婚」


「いや、それは……」


アルカディの性格歪んでそうなお姫様とか、遠慮したいのだけど。


「アルカディ以外の三国からは、姫を1人ずつ出させよう。とびっきりの美人だよ」


オリオンらしくない、強行案。

女性をモノとしてしか見ていない、そんな価値観なのだろう。

お姫様達の意思は無視か……


「いや、オリオン、それは──」


「それならええんとちゃう?」

「まあ、勇者の報酬としては妥当よね」

「神の御心のままに」


賛成するの?!


「いや……そもそも、俺に魔王討伐なんて……」


「いるじゃないか。トウヤ、君には最強のパーティーが」


ん……?


ああ、スノウ達か……?

少しは戦えるみたいだけれど……


「やるだけやってみてもええんちゃう?」


「……まあ、お姫様の件は、相手の意思を尊重するのと……あと、王位を継いでも、何もできないからな?」


「相手は二つ返事だとは思うがな。政務に関しては、俺も全力でサポートするよ。君なら非道な事はしないだろう、それが重要なんだ」


今の腐敗具合、凄いからなあ。


「……分かった、できる限りやってみるよ」


俺は、溜め息と共にそう言った。


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かなりご無沙汰しております。

一応生きてます。

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