第4話 次元の歪み

「部屋の前に落ちてた」


「キミの部屋の前は次元が歪んでいるのかい??!」


オリオンが叫ぶ。

何でだよ。


「誰かが落としたんだろ?」


「持ち運ぶ代物では無いし、此処も通らないだろうし、落とす馬鹿もいないよ!!」


「……それ、何なんだ?」


オリオンはため息をつくと、


「密輸の証拠、違法品取引や所持の証拠、国家反逆準備の証拠……」


おお。


「家宝、魔導印……これを軽々に持ち出す馬鹿はいないし、書類も本物なんだろうな、って気になるよ」


「……凄い落とし物だね。誰のなんだ?」


「オクドゥルア公爵家……」


おおう、聞いた事があるな。


「ねえ、トウヤ。キミ、実は凄いスキルを隠してないだろうね?!キミが盗ってきたって言われた方が納得するんだけど??!」


「落ち着け、オリオン。部屋の前に落ちていたのは事実だ。間抜けな盗賊がオクドゥルア公爵家の屋敷に侵入、盗みをはたらき、うっかり此処に落としたんだろう」


「国家レベルの警備に防衛機構備えているんだが?!うっかり盗賊に侵入できるか!」


ぜはぜは


オリオンは呼吸を整えると、


「……今夜、勝負を決める。キミは寝ていてくれ」


オリオンはそう言うと、木箱を持って、出口へと歩いて行った。


すまん、任せた。


--


「ただいま、スノウ」


「おかえりなさい、トウヤ。ごめんな……うっかりウチが変な物拾ったから……」


「いや、結果的には良かったと思う。悪が裁かれて」


「そやねえ……」



スノウが俺にしなりがかり、


「トウヤ、一緒にお風呂に入ろう」


ああ。


「スノウ、別にその……無理にしなくて良いからな?キミは友人として、ゆっくりしてくれれば良い」


「トウヤ、ウチ、侍従なのに家事ができないから……ウチにできるのは、せいぜい、夜のご奉仕くらいなんよ」


「大丈夫だよ。侍従ってのは建前であって、実際には安全確保が目的なんだから」


あれ。

オクドゥルア公爵が捕まったら、危険は無くなるとかあるのだろうか。


「でも……この世界で侍従と言えば、性奴隷にも等しいんよ?流石に夜のご奉仕すらしないのは……」


「そ、そうなのか……いや、流石に嘘だろう」


危ない。

信じかけた。


ぺろり


スノウが舌を出す。


スノウは、俺の耳元で、


「女の子から言わせるもんやないで?それとも、ウチの貧相な身体やと、興味無いんか?」


「い、いや、決してそんな事は」


スノウが、身体を預けてくる。


「分かった、スノウ……行こうか」


俺は、そう囁いた。


--


翌日。

疲れた……しかし、清々しい顔のオリオンから、報告を聞く。

スノウも一緒だ。


「トウヤ、ありがとう。君のおかげで、大規模な反逆に先手を打てた。オクドゥルア公爵は処刑、オクドゥルア公爵家は爵位剥奪。何処まで処分するかは、今検討中というところだ」


ぽつり


「正直、うちの王家がどうなろうと構わないのだけどね。オクドゥルア公爵は、権力を傘にきて民を苦しめていた。奴等に国民を任せる訳にはいかない」


オリオンが不穏な事を言う。

オリオンも、王家に不満が有るのだろうか。


俺の不思議そうな顔に気づいたのか、


「僕は、アルカディの王家、そして国そのものが嫌いなんだ。国民の生活は守りたいとは思うが……無条件に贅沢を享受させる気も無い。君には分からないよね……それも、王家のせい……そして、僕の力が及ばないせいだ。そうだな、言ってしまうか」


オリオンは俺とまっすぐ視線を合わせ、


「エンゲージリング……召喚時に触媒にする事で、召喚対象への絶対命令権を得る。君達には現在、王家を信じ、王家に尽くしたくなる……そんな思考誘導がかけられている。やろうと思えば、君達の命を捨てさせる事すらできる」


「……なっ」


「アレが手元に有れば、解呪できるのだけど。残念ながら、王家の宝物庫の奥……僕でも近づけない。と言うか、僕を近づけない様に警戒されている」


……そんな事が……


確かに、この世界に召喚され、結構前向きに努力しようとしていたけれど。

でも、俺にメリットしかないし、ウィンウィンの関係なのは確か……


「あのな、トウヤ。これ、部屋の前に落ちてたんやけど」


スノウが取り出したのは、古びた指輪。

ひーふーみー……22個?

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