第2話 此処は異世界……

「勇者様、ようこそおいで下さいました」


美しい女性。

容姿もさることながら、着ているドレスも美しい。


「ここは、皆様にとっては異世界。予見されし災厄に、皆様の御力を貸して下さい」


異世界召喚、というやつか。

自分の身に起きると、なかなか驚く。


周囲を見渡すと、同じく地球から来たと思われる服装。

見知った顔は無い。


美しい女性──王女様の誘導で、列を作る。

強さ、そして潜在能力からランクが振り分けられ。

俺は一般クラスとなった。


曰く。

死んだら、召喚された時点に戻る。

この世界で強くなれば、元の世界の運命係数が上がり、運が良くなる。

この世界の災厄を解決すれば、女神様が何でも願いを叶えてくれる。


まあ、良くある話だ。


一般クラスに割り当てられた俺は、現地住民と一緒にスクールに通い、戦闘能力を身につける。

一緒に召喚された殆どの人は、ユニーク職業持ちで、特別教育をするらしい。

俺は……職業無し。

まあ、良くある事らしい。


俺にデメリットは無いようだし。

災厄を解決しなくても、善行を積めばそれなりに運命係数が良くなるらしいので。

ほどほどに頑張ろう。


そう思った。


--


「此処が宿舎か」


学生は、寮に部屋が与えられる。

他の召喚者の様な、特別待遇は期待できそうに無いが。

それでも、寝る所と食べる物には、困らない様だ。

支度金の様な物は無かったので、お小遣いは自分で稼がねば。


「うおっ」


部屋を見て驚いた。


超広い。

ベッドが超ふかふか。

王侯貴族用の部屋?


ごめん、偉い人達。

疑って悪かった。

俺の待遇は、そこまで悪く無いらしい。


「あれ、キミがその部屋なのかい?」


ふと、声をかけられる。


「はい。貰った資料には、そう書かれています」


「おや、本当だね。召喚者達には、離れを割り当てると聞いていたのだけど……まあ、想像はつくけれど」


ぽりぽり


頭を掻く男性。


「まあ、これも何かの縁だね。僕は向かいの部屋なんだ。部屋が近い者同士、仲良くして欲しい。よろしくね、トウヤ」


冬夜。

俺の名前だ。

転移者という事も知っているようだし。

色々知れ渡っているのかな?


「よろしく。あなたは?」


「ああ、ごめん。僕はオリオン。オリオン・リア・セリア・アルカディア。この国の第三王子だよ」


王子様だったあああああああ?!


「あ、す、すみません。そうとは知らず」


「いや、知らないのは当然だしね。あと、敬語はやめて欲しい。キミは我が国の民では無いし、僕とキミは同じ学舎に通う学友だ」


オリオンは、少し陰のある表情で、


「部屋が近いよしみだ。分からない事が有れば何でも聞いて欲しい。僕の方でも注意しておくよ……せめてもの償い、って訳でも無いのだけど」


償い?


その後は、適当に雑談。

一緒に夕食を食べ。

解散、部屋へと足を向ける。


気さくで話しやすい人だ。

良い人と友人になれた。


そして──


自室に、その人はいた。


--


女の子。

銀色の髪、紅い目、やや濃い肌の色。

幼さの残る顔立ち。

そして……凄く可愛い娘だ。


それとは対照的な……扇情的な服装。

大事な部分は一応隠れているが。

シースルーの服で、相当な範囲が視えてしまう。


えっちぃ。。。


「えっと……此処は俺の部屋なんだけれど……君は?」


女の子は、俯き、耳まで真っ赤にして。


「ウチ……あの……私は、あなたのモノです。どうか、私に……その……私を抱いて下さい」


?!


異世界転移初日に初体験?!


待って、待って。


「待って、そういう訳にはいかないよ」


「お願いします!あなたとできないと……その……私……」


女の子の口から、嗚咽が漏れる。

ええ……


何となく……理解した。

これは、転移者へのサービスか……もしくは部屋付属のルームサービスか……


どちらにせよ、人を人と思わない、最低の扱いだ。

恐らく、この少女の身分は、奴隷。

売り買いされる立場……


俺は、今更の様に、此処が異世界だと理解した。


「その……俺は異世界から来た者でね。この世界の常識は分からないんだ。俺のいた世界では、人身売買は許されていない。だからその……そういう事は……口裏はあわせるから、さ」


少女は、絶望した表情で懇願する。


「お願いします。この世界では、これが現実なんです。あなたとできないと、私は……私は……」


涙がぼろぼろと溢れ。


……


仕方がない。


「分かった」


未経験で上手くできるかは分からないけれど。

これが異世界の現実。


俺は、そっと少女に歩み寄った。

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