第115話 白金の部
オークションの二日目も何事もなく過ぎて行った。魔剣とか出てきて興味は惹かれたけど、どうせなら三日目にもっとすげぇもんが出てくるんじゃないかと期待してたりはするけど。魔物の素材も出てきたけど、地竜よりも先に出てきたものだからかこれといって興味を惹かれるものでもなかった。
「ではさっそく、白金の部後半最初の品物はこちらです」
白金の部は最低落札価格が一千万フロンからだが、前半の最後は五千万からになっていた。なんというかもう、昨日あたりから金銭感覚がさっぱりわからなくなってきている。
「最低落札価格は一億フロンから。稀に出品されますが、今回もどうやら出品されたようです。人気のエリクサーが登場です!」
「なぬっ」
「えっ?」
台車に乗せられた容器を凝視する。中身の液体を意識して鑑定をかけると、確かにエリクサーと出てきた。説明文にも確かに、四肢欠損まで回復すると記載されている。
「本物だ……」
商業国家に初めて入国した日のことが思い出される。偽物のエリクサーを一千万で掴まされたが、まさかここにきて本物を見られるとは思っていなかった。
さすがに人気商品なのか、すでに三億まで入札が入っている。
「本物はこんなに高かったのね……」
莉緒も呆れ顔だが、やっぱり四肢欠損まで治すとなるとこれくらいの値段はするんだろう。にしてもミスリルの部にならないってことは、そこそこ出回る商品でもあるのか。
「念のため手に入れておくのもありだな」
「そうね。幸いにお金もあるし」
「よし……。四億だ!」
三億五千万の入札が入ったところで被せるように叫ぶ。
だが相手もさることながら次々と値段を吊り上げてくる。五億を超えたところで俺たちともう一人の一騎打ちの様相を呈してきた。
「今回はなかなか吊り上がりますね……」
「そうなんですか?」
フルールさんの言葉に普段の値段を聞いてみると、安い時であれば二億フロン程度で落札されるらしい。よほど重傷者がいて緊急でもなければそんなものなのだとか。
「ということは、相手には今すぐにでもエリクサーを使いたい人がいるってことですか?」
「その可能性は高いと思います」
「あー、そうなんだ……。なんか悪いことしたような気になるな」
「気にする必要はないと思いますけれど」
「念のために備えたいだけだし……。どうしようか?」
莉緒も話を聞いて乗り気じゃなくなってきたようだ。自分たちのための備えとはいえ、今必要な人を蹴落としてでもというものでもない。
「うーん。今回は譲っておこうか?」
「うん。そうしよう」
自分たちのせいで助からなかった人がいるのかも、ともやもやした思いをし続けるくらいならすっぱり諦めよう。
「六億五千万フロンです! 他にいらっしゃいませんか!」
言葉と共に司会者が会場をぐるっと見渡す。その間誰も入札がないことを確認し、六億五千万で落札された旨が高らかに宣言された。
「では続きまして、本日の目玉商品の先鋒とも言える一品でございます」
いくつかの商品が落札され、ようやくその時がやってきた。
舞台の裏から台車が運ばれてくる。その上に鎮座しているのは巨大な爪だ。
「地竜の爪、なんと両手両足分の二十本がすべてそろっております!」
司会者の言葉に会場にどよめきが広がっていく。
「うふふ、ようやく出てきましたわね」
フルールさんが嬉しそうに振り返ると、俺たちへと順に視線を向ける。確かにこれはちょっとドキドキしてきたぞ。
「いくらの値段がつくのか、ちょっと楽しみね」
「では五億フロンからの開始となります!」
「六億!」
「七億!」
開始と共に次々と入札が行われていく。増加単位が一億だ。どうなってんだこれ……。もう十億超えたぞ。
「いやいやいや、地竜人気すぎでしょ」
「すごいわね……」
「滅多に出るものではないですからね。ワイバーンやレッサー種ではない、正しく
「へぇ、そりゃまたすごい」
「エリクサーはどれくらいの頻度で出るのかしら?」
莉緒がオークションそっちのけで首を傾げている。
「エリクサーはそこまで珍しくありません。ダンジョンからもたまに産出されますし、一年に一度あるかないかくらいの頻度でオークションには出てきますよ」
ほほぅ。その場で使っちゃう人もいるだろうし、実際にはもっと手に入りやすいのかもしれないな。
「では、十六億フロンでの落札となります!」
気が付いたら地竜の爪が落札されていた。ミスリルの部の最低落札価格を超える値段になっている。
「すげーな、地竜」
その後に出品された地竜の牙は八億フロンからの開始となった。もちろんこれも順調に入札が進み、最終的には二十一億フロンでの落札となった。
「ははは……」
もう乾いた笑いしか出ない。このあとミスリルの部での出品も控えてるんだろ? 所持金がもう一桁くらい増えそうだよな。
その後に数品ほど白金の部として出品されたが、どれも地竜の品の落札価格を超えるところまではいくことはなかった。
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