第2話 観光地のタクシー
観光地。それは地元の人間だけでなく、外から大勢の人が訪れる場所である。
だいたいのお店はその外からの人が落とすお金によって生活を支えている物であり、店だけでなくバスやタクシーなんかもその恩恵にあずかっている。
そして、観光客に限った話では無いがタクシの運転手を自分の言う事を効く家来か何かと思っている客というのが存在する物である。
ほら、今日もここに、迷惑な人が居る。
「いいではないか、歩道を走れ」
「いやいやお客さん。わたしゃ人殺しにはなりたくないんですよ」
「客が走れと言っているんだから走れ。そこのカフェのテラスごとふっとばせ」
どう考えても頭のおかしい20代と思わしき青年男性。
これはアレか? あの有名な漫画のシーンを再現したいのか? もしもそうならフィクションと現実を一緒にしてはいけないとちゃんと脳にマジックで書いておくべきだ。
学校で一体なにを習って来たのか。後部座席から運転席の後部に向けて足を延ばしている座り方も常識外れだ。タクシーの運転手が無線で助けを求めようかと思ったその時!!
バシィィン!!!
「アイヤー! ソーメンニューメンウーメンリューメンナンダイモーン!!!!」
タクシーのドアを破壊して、担々麺マンが現れた!!
「何者だ貴様!?」
走る車に追い付いて乗り込んできた担々麺マンに向けて、偉そうな青年が偉そうに上から目線で声をかける。
だが、彼は担々麺マン。そんな威圧感には屈しない熱い男だ!
「マンガンタンヤオホンイツトイトイリューイーソー!! ソイヤ!!!」
ガポッ
「熱つつつっつう!! あっつぅ!!!??」
担々麺マンが自慢のクレーマー撃退汁無し野菜担々麺を男性の頭からぶっかけたのだ。
刻んだザーサイと芥子菜の漬物が程よいしょっぱさと辛さで、香辛料とはまた違った味を楽しむ事が出来る。
「ハァァァァァァァ!!! センハッピャクエンニナリムァスッ!!!」
ビシィィィ!!!
刺激を感じる辛さだけではく、じんわりと残る辛さと野菜の旨味を全身で味わった青年の額に向けて右手の人刺し指と中指で挟んだ領収書を突き付ける担々麺マン。その威力はカボチャを素手で粉砕出来るとも言われていて、人間の頭蓋骨程度ならば簡単に割れるだろう。
「この私がぁ…」
担々麺マンの領収書拳を喰らい、額から血を流しつつ無意識に財布から千八百円を取り出してしまう青年。
これが担々麺マンの力だ。
「マタオコシクダサイマセェ!!」
それだけ言うと、担々麺マンはタクシーを飛び出して道路を転がりながら去って行った。
後に残されたのは担々麺が飛び散ったタクシーと、額から血を流した担々麺塗れの青年と、恐怖で震えているタクシー運転手だけ。
また一つ、社会の闇を葬った担々麺マン。
次は何処に現れるのか。もしかしたら、君の街に現れるかもしれない。
担々麺マン。ああ、担々麺マン。ザーサイの漬物の香りがしたら要注意だ!!!
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