こんな俺でいいのか(馴れ初め②)

「その日から俺たちはよく話すようになったんだもんな」

腕の中でまるまっている彼女を撫でながら出会った当時の彼女を思い出し

なんだか懐かしくなり表情筋が緩んだ。


「勉強も何も上手くいかなくて恋愛も上手くいかなくて失恋した。その時にあったのがマスターの啓治さんです」


撫でられて心地よくなったのか、身体を預けながら彼女も会話に混ざる。


「こんなおじさんが君の力になれるか分かんなかったけど話聞いてあげられたらなぁと思った。歳の差もあるし何か役立つこともあるかもしれないからね」


「よく話すようになって君がどんな子なのか少しずつ分かってきた。それで俺は自分の中で葛藤してた。」


「一時期、私と距離を置こうとしてたんでしたっけ?」


彼女が、啓治の頬を触る。

つんつんと頬を触っていると啓治が腕を掴む。


「そりゃあ、20以上歳離れたお嬢さんに惚れちまったんだ。悩みもするさ。」


「さっきも言ったけどな。凄く悩んだんだぜ?こんなおっさんに惚れられたら気持ち悪くねェかなとか。」


「あと、あんまりおっさんで遊ぶんじゃありません。お仕置きするぞ?」


「いいですよ!」


満面の笑みで見つめる彼女。

その表情を見てタジタジな啓治。

”こりゃ勝てねぇや”と首を振る。


「あのなぁ、俺だって男なんだぞ?」


「お前の前で余裕なふりしてるけどな。なかなか・・・、その、大変なんだぞ。ったく・・・。」


「そんなこんなで私は、一人暮らしだった事もあり、時々啓治さんのお家に遊びに行くようになりました。」


「おじさんは葛藤していたけども・・・、いたけどもだ。お嬢ちゃんは、大学4年生。他の男に言い寄られることもあるだろう・・・、そんな考えがふと頭によぎったおじさんは、お嬢ちゃんに気持ちを伝えてました」


さっきまでの威勢はどこへ行ったのか頭を撫でる手が止まり下を向きつつ赤面している啓治。


「お嬢ちゃん、今日は特別なカクテルをご馳走しよう。”マルガリータ”というカクテルだ。おじさんの、奢りだ。」


”マルガリータ”のカクテル言葉は

「無言の愛」


「なんだ、その・・・。そのカクテルのいみは、無言の愛・・・」


「どうやら・・・、俺は惚れちまったらしい」


「付き合ってくれねぇか・・・?」


「はい・・・。宜しくお願いします」


赤面で彼女の身体に顔を埋めたまま、動かないでいる。

そんな彼を撫でる彼女。


馴れ初め編はここまで。

おじさんとお嬢ちゃんの甘い時間。

ゆったりのんびりと過ごしていきましょう♪


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