甘い時間

紅月

こんな俺でいいのか(馴れ初め①)

51歳バツイチ。

いい歳したおっさん。

恋人は・・・大学生。


白髪混じりの眼鏡をかけた男が、座椅子に座りながら呟く。


「本当に俺でいいのかねぇ」


「もっと若くてカッコイイ奴たくさんいるだろうに」


男の背にピッタリとくっついている女が男の呟きに返答を返す。


「啓治さんがいいんです」


おじさんがいいです」


多少苦笑いをしながら振り返り、彼女の頭を撫でる。


「こんなバツイチでくたびれたおっさんのどこがいいのよ、お嬢ちゃんは」


頭を撫でられてうれしそうにくしゃっと笑う。

その表情を見てやはり”俺でいいのだろうか”と心の中で思う。


「変態だしスケベだしセクハラ親父ですけど」


「優しくて、いつもこうやって頭を撫でてくれるからですかね」


彼女のストレートな返答にまた苦笑い。


「おいおい・・・。言ってくれるねぇ」


「おじさん傷ついちゃうなぁ・・・」


彼女の表情を伺いながら、落ち込んだ振りをしてみる。

落ち込んだ啓治を見て少し動揺している彼女。


その姿を見て愛しくも感じる。

大人気ないなぁと自分でも思いながら

20以上も歳の離れた子に惚れている。


彼女は大学4年生で、今年卒業を控えているこれから将来有望な若者。

それに比べ俺は51歳のおっさん。

ついでにバツイチ。子供はいない。


俺たちが出会ったのは、俺が経営しているBARだった。

俺の店には大学生もよく飲みにくる。そこに混じって飲みに来ていたのが彼女だった。


「嘘だよ、すこしいじめただけさ、ごめんな。怒った?」


「むぅ・・・、怒ってないですぅ・・・」


「ははっ、可愛いなぁ」


拗ねて顔を少し赤らめる彼女。


「おいで」と呟くと、多少不満そうな顔をしながらも腕の中に入ってくる。


どこか放ってはおけないこの子。


「お嬢ちゃんがさ、飲みに来た日さ、本当なんか放ってはおけない感じがしてさ」


「ちょっかいかけたくなっちゃったんだよな、おじさん」


「・・・。でも、嬉しかったですよ・・・。あの日は特に落ち込んでたから」


「そうだなぁ。助けてください、話を聞いてくださいって顔に書いてあったもんな」


「その日から俺はお嬢ちゃんとよく話すようになったんだもんな」




続く 








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