俺が異世界転生!?

エスカルゴ

第1話 平凡な日々の終わり

竹内唯斗の人生は、とても平凡でつまらないものだった。この十八年間、彼女が出来たことも無い。もちろん童貞だ。友達はあまり多くない。

何せ、少しばかりコミュ症を拗らせている。頭は中の下と言ったところで、小説を読むことが趣味だ。夢と言えるような物は特にない。今年から都内の大学に通っている。俺のことを説明するならば、これだけの言葉で十分だ。俺には、特に特徴も、才能も無い。そして、十八年間もの月日を、特に何をするでも無く、無駄に過ごしてきた。

そんな人生に、突如終わりが訪れた。信号無視のトラックに跳ねられ呆気無く死亡。本当に人生というモノは、いつ終わるか分からないモノだなと、つくづく思った。そして、


あーあ、あの小説の新刊読みたかったな・・・などと思いながら、俺の人生は幕を下ろした。



            ・・・筈だった。


俺は確かに、トラックに跳ねられた。実際、その感覚は今も体にしっかり残っている。だが、まだ意識がある。それに、何やら不思議な感じだ。まるで、体が宙に浮いているかの様な・・・。

いや、落ちている。

俺は今、落ちている。

頭を下向きにして、俺は今落ちている。どういう事だ?訳が分からない。

俺は覚悟を決めて、目を開けてみる事にした。ゆっくり、恐る恐る目を開く。すると、そこに広がっている光景は、あまりに衝撃的なモノだった。

 目の前には、巨大な『目』があったのだ。俺の体よりデカい、巨大すぎる目。そして、そんな巨大な目が、俺の方を「ギョロリ」と、鋭く睨みつけてきた。

 その瞬間、俺はやっと、目の正体に気づいた。そもそもソレは、最初からソコにいたのだ。ただ、あまりに巨大すぎて気付けなかっただけで。

ソレは、龍だった。巨大な目は、龍の体のほんの一部に過ぎなかったのだった。

 俺は、龍のあまりのスケールに息を呑んだ。刹那、頭に言葉が直接響いてくる。


『よくぞ来たな。世界に選ばれし人間よ。我は『聖龍インフィニーノ』。折り入って、貴様に頼みがある。貴様に、我の代わりに、一つ世界を救って貰いたいのだ」


・・・うん?えっ?今、なんかサラッと凄いこと言われたような気が・・・。え?世界を一つ救うって何??全く、意味が分からない。


「いや、でも・・・。俺に世界を救う力なんて・・・」


『頼む!この聖龍インフィニーノ、一生の頼みだ!!もし世界がこのまま滅亡すれば、我の立場が色々と危ういのだ!!!」


いやいやいや、人の話聞けや!俺に世界を救う力なんてありませんし。

そもそも、選ばれし人間って何?なんで俺がいつの間にか選ばれてんの?


『心配しなくても大丈夫だ。きっと貴様なら何とかなる」

 いやいや、「きっと」って・・・。すっごい不安なんですけど。


『勿論、我も出来る限りの事はしてやる。貴様に、この『聖剣』を授けよう。これは、選ばれし者のみが使う事が出来る、世界・・・嫌、宇宙最強の剣だ。強さはこの我が保証する。さぁ、授かるがよい」


 そう言われ、俺は『聖剣』を授かった。聖剣は、持った感じ割と重かった。途端、聖龍が「コホン」と咳払いした。そして、


『それでは選ばれし人間よ!異世界救済頼んだぞ!ではまた、お主が異世界を救うその日まで!!」

そう聖龍が言い終わった瞬間、俺の体はいきなり光に包まれ、突如として俺の平凡な人生は幕を下ろしたのだった。


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