第7話黄金ジェット4


 茜色の空が部室を赤く照らす中、花水木先輩はパソコンの画面を見ながら僕に向かって呟いた。


「あっはは!知ってるかい?日向君。実はコロンビアのシヌ―遺跡から発掘された黄金ジェットって言うのはアトランティス文明の飛行機がモデルだったらしいんだよ」


 花水木先輩は軽快に笑いながら、そう言うと僕の方に振り向き上機嫌で続けた。


「どうやらアトランティス文明では幻の金属【オリハルコン】を加工する技術があったらしくてね?それを使って飛行機を作っていたらしいんだよ!きっとアトランティス人がこういう形の飛行機を作って世界中を飛び回っていたに違いないよ!それを見た古代コロンビア人がこの黄金ジェットを作ったんだね!」


 蒼と紅、2色の鮮やかな瞳をキラキラと輝かせながら僕に向けてノートパソコンを向け、黄金ジェットの画像を見せてくる。


「…それはもうプレコだったってことで結論が出てるじゃないですか…あとこの形って…もしアトランティス人が飛行機を作ったにしてもそんな変な形の飛行機を作るはずがないじゃないですか…」


 僕は呼んでいた月刊ムーを下ろしながらキラキラと瞳を輝かす先輩に向かって呟いた。


「いいや!ボクはそうは思わないな!きっと誰か芸術の才能のある人が作ったに違いないよ!ボクだって美術の粘土工作の授業の時、鶏を作ったらこんな形になったんだ!」


「…先輩…美術の選択授業、成績悪いって言ってましたよね?…あと鶏って飛行機じゃないし…」


「ちっ…違うよ!それは時代が追い付いてないだけで…!ボクの親戚の神宮寺ちゃんだって幼稚園の頃似たような物を作って―――」


「それって幼稚園児と同じレベルってことなんじゃ?」


「…ぐう」


 本当にぐうって言う人初めて見た…


「…まあいいさ、日向君の様な人にはボクのセンスは分からないのさ」


 不貞腐れたようにそう言うと花水木先輩は鞄の中から1冊の漫画を取り出し読み始めた。


「あっ!それってもしかして【俺のメイドは機械仕掛け】の新刊ですか!?」


「…そうだけど?まあ、ボクとセンスが違う日向君には分からないだろうね、この―――」


「メイドロボットが主人を守るためにボロボロになる姿がたまらないですよね!」


「メイドロボットが主人を守るためにボロボロになる姿の良さは…ってえ?」


「そうそう!特に3巻の右腕が取れかけながらも健気に主人を守る姿良いですよね!」


「分かってるじゃないか!!!日向君!!!」


 すると先輩は僕の隣に漫画を持ちながら座ってきた。先輩のショートボブがふわりと揺れ甘い香りが僕の鼻孔をくすぐった。


「土宮の奴にはメイド+ロボットなんてニッチすぎる性癖って笑われるんだけどそんなことは無いよね!ボクは初めて同志に合った気がするよ!」


 右目の紅い瞳がいつもより燃えるように煌いていた気がするのは窓から差し込む夕日の光のせいだろうか。思わずその煌きに息を飲んでしまう。


 僕は何となくムず痒くなって、思わず話題を逸らそうと違う話題を振る。


「…そっ…そうですか…ちなみに先輩が2番目に好きな漫画って何ですか?」


 そんな僕の質問に先輩は一瞬悩んだのち、ニカっと口角を上げこう答えた。


「じゃあ、日向君の2番目に好きな漫画も一緒に言ってよ。もし一緒だったらボク達すっごい波長が合ってると思わないかい?」


 すると先輩は僕の目をまっすぐに見つめながら続けた。


「行くよ、せーの!」


 やばい…答えなきゃ…でも2番目に好きな漫画と言えばアレしかないかな。


「HUNTER×○UNTER!」

「○UNTER×HUNTER!」


 波長ぴったりだった。

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