第3話モアイ像3
「あっはは!ボクの独自の情報網によるとね、太古の昔イースター島に突然大きな門が現れてね!そこから現れた異形の怪物が住民たちを襲ったみたいなんだよ!いやー危機一髪だね!でも大丈夫なんだ!そんな状況で海から現れたのが大量のモアイ像軍団!彼らは怪物をばったばったとなぎ倒したらしいんだよ!」
「なんか、余計胡散臭くなりましたよ…それ…てか先輩の情報網ってネットの情報半分と妄想半分じゃないですか…」
荒唐無稽な話に呆れかえる僕をよそにパソコンの前から僕の前へと席を移し、じっと僕の目を見ながらキラキラと目を輝かせ先輩はさらに続けた。
「それでね!これまた凄いことにそのイースター島の住人の目は日向君みたいに綺麗な紅い目をしていたんだってさ!」
語尾を強めながらもじっと僕の目を見てくる花水木先輩の視線に耐えられず、僕は思わず目を逸らしてしまい…何となく前髪を弄ってしまう。
「赤い目って…別にそんなに珍しくないでしょ…他のクラスにだって何人かいるし…」
すると先輩はぐいっとテーブルから体を乗り出し、その細い指先で僕の前髪を上げながら僕の瞳にその顔を近づけながら言った。
「違うんだよ!赤じゃなくて紅!日向君見たく綺麗な紅!」
前方20センチ、吐息の音すら聞こえそうな距離。花水木先輩の瞳が、唇が、僕の眼前でキラキラと輝―――
「って!近いですから!」
思わず…耐え切れなくなり僕は椅子からのけぞり…後ろにガシャンと倒れてしまった。
「いったたた…」
ガシャン…?やばい、やっちゃた…勢い余って部室の
「あっはは!大丈夫かい日向君!本当に君は純情だね!」
慌てて床に散らばった中身を片付けていると、そんな僕を快活に笑いながら花水木先輩はふわりと僕の隣にしゃがんだ。
隣から漂った先輩の甘い香りに思わず息を飲む。
グラウンドから聞こえてくる運動部の掛け声だけが部室中にぼんやりと響く中、無言で散らかった備品を片付けている自分が、いつ先輩と手と手が触れないかと期待してしまってる事に気づく。
隣をチラリと伺うと花水木先輩と目が合った、ニカっとした笑顔でそれに答えた先輩を僕はなんだか照れ臭くって…まともに見ることはできず目を逸らしてしまった。
「ん?なんだこれ?」
無心で散らばった訳の分からない雑品を拾っていると、その中に一際意味不明なものが転がっていた。
「石…?それとも何かの欠片…?」
そこにあったのは5センチほどの手のひら大の石の塊のようなものだった。
うーん…さすがにこれはゴミじゃないかな…?なんでこんなものが…
不思議に思いながら手のひらの石を眺めているとそれに答えるように先輩がより一層僕のそばに近寄ってきて話した。
「ああ、それかい?それは先週ネットショップで買ったモアイ像の欠片だよ。部室に持ってきて眺めてたんだけど飽きちゃってこの中に入れてたんだよね」
「…先輩…そんなの偽物に決まってるじゃないですか…」
少し…いや大分呆れながらも先輩の行動を注意しようとした瞬間、先輩は僕の手のひらのモアイ像の欠片ごと僕の手を握り、僕の目をじっと見ながらこう答えた。
「でもこれがもしモアイ像の欠片だとするとすっごいロマンがあると思わないかい」
うわっ…先輩の手、温か…柔ら…いやいや!違う!ここはしっかり言わないと!
「まあ、もしそうだとしたらですけどね。先輩…もうこんな変なもの買っちゃだめですよ?」
ちょっとだけ、先輩に対して良い顔できたかなと思って何となく先輩の目を今日初めてしっかり見れた気がする…
じっと見つめ合うこと数秒、だんだん恥ずかしさが込み上げて思わず目を逸らしそうになった瞬間。2人の手の中のモアイ像の欠片が床に落ちた
―――カタン
あれ?今この石手の中で勝手に動かなかったか?
ふと、横を見ると先輩もそれに気づいたらしくその大きな目をより一層輝かせながらこう囁いた。
「もしかしたらボク達ムーの子孫かもね」
そう、ニカっと笑う先輩の目は透き通るほど澄んでいて、燃えるように煌いていて―――紅と蒼、鮮やかな両目のオッドアイはじっと僕の瞳を掴んで離さなかった。
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