宇宙をヒッチハイクで旅するバックパッカーが、宇宙パーキングで親切なお姉さんと出会い一緒に『空の星』を目指すお話。
風変わりというかちょっぴりヘンテコというか、ショートショート的な宇宙観の楽しい作品です。話の筋そのものは完全に出会って仲良くなるだけのお話、ちょっとしたワンシーンといった趣が強いのですが、でもその間に次々差し挟まれる世界設定、この宇宙の見せてくれる様々な表情こそが最大の見どころです。
それに関連して、というか端的に象徴している部分ではないかと思うのですが、タイトルと章題がもう本当に大好き。『銀河鉄道は私には高いから』『宇宙パーキングエリアにて』。完全にその先や続きを前提とした表題で、つまりこのお話は徹底して「始まり」を描いた物語です。旅の出発点でありふたりの関係の起点、そしてこれから広がっていく未来のための第一歩。この「始まり」、つまり新しい世界への期待感のような気持ちは、まさにわたしたちが宇宙に求めるものそのものではないかと思います。
コンパクトで短い物語の中に、目一杯のわくわくとキラキラを詰めた、前向きな楽しさに溢れた作品でした。