第6話 奴隷契約の儀式
激痛は消えたものの、意識が揺らぎ、全身の力が抜けたように崩れ落ちる。それを咄嗟にファリレが支えた。
「ちょ、ちょっと大丈夫なのかしら?」
「……ごめん。駄目だ。……力が、入らない」
ベッドに運ぼうとするが、ファリレの非力な身体では支え続けることができず、シャノンを抱いたまま背中からベッドに倒れ込んだ。彼女は身体を入れ替えて起き上がろうと試みるものの、シャノンがしがみついているせいかうまくいかない。
「ちょ、ちょうどいいわ」
ファリレは生まれたての子鹿のようにガクガクと震えるシャノンの腰に足を回し、自分の方に引き寄せてガッチリと固定する。
「え、ちょっと、ファリレ何を……」
「う、うるさいわね! 奴隷契約の儀式がまだだったでしょう?」
「儀式? そんなのあるんだ……それって、何をするの?」
「…………く、口づけよ!」
シャノンはファリレに両頬を挟まれた。頬を真っ赤にし、目元に涙を浮かべたファリレの顔が徐々に近づいていく。まだ身体に力が入らないシャノンは抵抗することもできずに、されるがまま顔を寄せる。
鼻先が触れ合うほどの距離で、二人の視線が結ばれる。躊躇うようにして目を逸らしたファリレだが、すぐに戻し、決意を固めたように瞼を強く閉じた。
唇が触れ合った瞬間、脳に電撃が走ったような感覚があった。それはファリレも同じだったのか、わずかに声が漏れる。回されていた足の締め付けが強まった。
瑞々しい弾力のある唇は、いつまでも重ねていたいと思わせる特別な魅力を秘めていた。
ファリレがシャノンの顔を持ち上げ、二人の唇は離れた。蕩けるような表情でシャノンを見つめるファリレ。それを見て、シャノンは自ら唇を重ねに行った。
「ちょ、んん――」
拒むような言葉を口にするファリレだったが、重なってすぐに受け入れたようで、甘い吐息のような声を漏らす。
「ねえ、お兄ちゃんいつまで――」
ノックもなく扉が開けられ、声とともに少女が入ってきた。あどけない顔つきに、薄い桃色のサイドポニーが可愛らしく揺れる。背は低いが、幼さにそぐわぬ大きな胸が印象的な少女だった。
シャノンは飛び上がりそうになりながら、唇を離してそちらに顔を向ける。
「サ、サリー、これはちが――」
サリーの方に行こうとしたシャノンだったが、腕に力が入らず、ファリレに倒れ込む。それを見たサリーが悲鳴が上げた。
「お、おおお兄ちゃん!? い、今、キ、キスして……そ、それは、な、何をやってるの? え、それ、は、入って――――い、いやああああああああああああああ」
羞恥で顔を真っ赤に染め、両手で顔を覆ったサリーは悲鳴を上げながら部屋を飛び出した。「お兄ちゃんの不潔!」という泣き声が遠ざかっていく。
「ファ、ファリレ、どうしよう。サリーが勘違いして――」
動けないシャノンはファリレに助けを求めようとするも、その蕩けきった表情を見て無駄だと悟った。漏れる吐息が妙に艶めかしく、シャノンは煩悩を追い出そうとファリレの額に頭突きした。
「いっ――――な、何するのよ!?」
ようやく我に返ったファリレに事情を説明すると、恥じ入る彼女に思い切り頬を打たれたシャノンだった。
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