光魔法の伝説(25)
魔族を倒した後も、5層の部屋を調べる作業は続けた。
でも、部屋の中は空っぽで、何もいない。
カーネルさんも、ナイトも、スケコマも、いない。ホネホネ軍団だけでなく、パワドゾンビも、ハイグールももちろんいなかった。
4層も、パワドゾンビのモンスター部屋だとわかっている部屋以外を確認。
ここも、空っぽだった。
ゲームのMMOイベントで、おれの記憶に残っている通りに、空っぽの部屋。
3層に戻る。
今日は、5層のリポップ日だったので、当然だけど、十字路の脇道には1体たりともパワドゾンビやハイグールは存在しない。
3層から、おれは知らず知らずのうちに駆け足で移動していた。
そして、3層の部屋も、モンスター部屋以外は、どこも空っぽだった。
何度も言うが、それがゲームのMMOイベント通りの状態だ。
ゲーム通りだから違和感は何もない。
それなのに、嫌な予感がめちゃくちゃする。
駆け足どころか、はっきりと走って2層へと移動する。姉ちゃんがきっちり追走してくる。
最初に飛び込んだ部屋は、やっぱり空っぽ。でもこれは、ゲーム通り。
そこで、姉ちゃんが口を開いた。
「……これって、ここにいたはずのモンスターが出て行ったってこと?」
……姉ちゃん。頼むから、おれの嫌な予感にとどめを刺さないでくれるかな? いや、考えてたよ? おれも同じ事は考えてたけどな? 考えてたけども!
空っぽだとおれが思い込んでいた部屋にはホネホネ軍団がいて、しかも、こいつらは攻撃しても動かないという特殊な状態にあった。
いくつかのホネホネ軍団を崩壊させると、ボスとして白衣の魔族がやってきた。
その白衣のボス魔族は動かなかったホネホネ軍団を動かした。
白衣のボス魔族を倒してからは、他の部屋は全部空っぽで、何もいないし、何もない。
もし。
もしかしたら、だけど。
あの白衣のボス魔族があの時動かしたホネホネ軍団があの部屋の残りのホネホネたちだけじゃなくて、このダンジョンの全部のホネホネだったとしたら。
各階層には7つの空っぽの部屋があって。
ひとつの部屋に50体のホネホネ軍団がいたとする。
7×50で、1層あたり350体の、しかも5層構造ダンジョン。
それが今、部屋を出てメフィスタルニアの町を襲撃しているとしたら?
この町は1000体を軽く超えるホネホネ軍団に襲われてるってことになる?
洗礼を受けた者でさえ、レベル5がほとんどだろ? まして、一般の人なんて基本はレベ1だよな?
レベル5で相手がスケルトンのHP20なら、1対1のタイマンなら、どうにかなるよな? でも、タイマンにはならねぇよな、そりゃ?
レベル1が集まれば数は上かもしんねぇけど、レベ1はHP10でステも各10ってとこだろ? 下手すりゃ、スケルトン相手に1撃で殺されるぞ?
大盾をうまく使って他の人が木の棒で殴るとか連携できればなんとかなるか? でも戦闘経験もない一般人のレベ1が何かできるかな? 逃げ惑うだけじゃね?
最悪、誰かを犠牲に逃げ回る? まして、13歳以下の子どもはステ値がより低いよな? いや、そもそもスケルトンじゃねぇよな。スケコマだったし?
メフィスタルニア伯爵家の騎士団にすっごく強い人がいたとしてもレベル10ぐらいか? スケルトンなら楽勝になるかもしんねぇけど……。
スケコマHP300として、装備が銅のつるぎ? いやはがねのつるぎか? 1対1なら、なんとかできそう?
ま、そもそもレベ10がいるってのは希望でしかないし? そもそもスケコマは1体じゃねぇよな?
スケコマどころか、ナイトやカーネルさんまでいる可能性が高いし? カーネルさんとか、レベ10が6人がかりでも厳しいよな?
ちゃんと練習してれば、3人でカッターのクールタイムスイッチなら……SP切れる前に倒せるとは思うけど? SP100だよな? いや、その前にレベ10が3人もいるはずねぇし……。
……うわあ。この予想、外れてるといいなぁ。
「急ぐわ、アイン」
姉ちゃんがおれを残して、先に走り出した。
おれは、小さなため息を吐いて、その後を追った。
もう、部屋の確認はしなかった。
宿屋に一番近い聖者の像へと転移したおれと姉ちゃんが見たのは、西門に殺到した住民が門から出られずにもみくちゃになっている上に、その後ろの方の人たちが、次々とスケコマの剣に刺されて倒れていく姿だった。
たぶん、住民同士で、踏み潰されて死んでる人もいるはずだ。
こういうのを地獄絵図とでもいうのだろうか。
パニック映画でも、こんなにひどくはないに違いない。
「えいへいさんは……」
姉ちゃんの言葉に、視線を動かす。
すると、槍を持ったまま倒れている人が何人かいた。
戦って、敗れたのだろう。
スキルもなく、レベルも低く、名前だけは衛兵と呼ばれても、ただの一般人でしかない。
モンスターを相手に戦うには、それだけの経験を積み重ねてレベルアップしておかなければ、スキルもなしに何かできるはずがない。
逆に言えば、モンスターもスキルなど使えない、使わないものが多いのだから、レベルを上げてある程度のステ値を持ち、武器補正がほどほどの武器さえあれば、もう少しなんとかなるのではないかと思った。
今さら、こんなところで言っても、どうしようもない。
それに……おれは、小川の村でそれをやり切れなかったんだからな。
少数のモンスターが多数の人間を蹂躙している。
逃げても、背中からやられる。
圧倒的だ。
まさに虐殺といっていい。
「アイン……」
「わかってるよ、姉ちゃん。でも、全員を救えるワケじゃねぇからな。それに、ヴィクトリアさんが心配だ」
そう言うと、姉ちゃんははっとして目を見開いた。
仲良くなっただけに、ヴィクトリアさんのことは優先して助けたいと考えたのだろう。
「とちゅう、出てくる分はつぶして、リアのとこに行くわ」
「そうしよう」
姉ちゃんが駆け出す。
おれもそれを追った。
スケルトンコマンダーがホネホネ軍団の中心兵力だということは、走りながら判断できた。やっぱり数が違う。
だが、そのリーダーとしてのナイトスケルトンや、さらにその上のナイトスケルトンカーネルはやっかいだった。
ばらばらになった住民をスケコマがそれぞれが追いかけている乱戦では、正直、できることがない。
対処してもきりがないからだ。
個々の住民を見捨てることになるけど、そこはあきらめる。
こうなったのはおれと姉ちゃんの行動の結果かもしれないけど、おれん中の歴史では、そもそも元からこうなるはずだったんだからな。
そう思えない姉ちゃんがどんな風に考え、傷ついてるかはわかんねぇけど……。
その代わり、一隊としてナイトスケルトンとスケルトンコマンダーが密集隊形で移動している場合は太陽神系範囲型攻撃魔法スキルのソルハやソルハンを放って、スケコマを一気に処理する。
これは効率がいいし、MP消費やSP消費も抑えられる。
それにスケコマの数が減った方が、全体の被害を少なくできるはずだ、と言い訳しておく。でも、これ、正しいと思うんだよな。言い訳だけど。言い訳だけどな! 言い訳だけども!
ただし、魔法の範囲に入るナイトスケルトンは1発では消えないので、結果としてタゲ取りをしてしまい、今、おれの後ろには追いかけてくるナイトスケルトンが3体ほどいるけどな。
しつこい。
フォレボとの経験上、2時間は追いかけてくる。
つまり、ヴィクトリアさんの屋敷、伯爵家の別邸まで、ついてくるってことだな。
ナイトスケルトンに追いかけられながら、姉ちゃんとおれはひた走る。
槍や剣での直接戦闘は避けて、かわして先へと進む。
スキルを使うと技後硬直で止まってしまうし、通常攻撃で仕留められる可能性はあるけど、時間をどうしてもとられる。
だから、駆け抜けるのが正解だろう。
門から中心へと進むほど、人間はみかけなくなる。
逃げようとして一気に門へと動いたのかもしれない。
ただし、動かなくなって倒れた人間は、悲しいくらい、たくさん見かけたけどな。
たどり着いた伯爵家の別邸は、すでに門を破壊されていた。
玄関も破られていて、中へ飛び込むと倒れた使用人が男女を問わず、目に入った。
気になるが、おそらく生きてはいないと思うことで先へと進む。
「リアの部屋は3かいってきいたわ!」
「じゃ、上だ!」
階段をのぼると、上からスケルトンコマンダーが1体下りてくる。
「姉ちゃん、止まって!」
言われて姉ちゃんが止まる。
おれは姉ちゃんを追い越して、魔法を使う。
『ソルハ』
範囲型だが、別に1体で使ってはいけないというものでもない。
スケコマが消えてチリリーンという音がするけど、タッパ操作で即アイテムストレージに収納していく。ここまでずっと左手のすばやい動きで対応してきた。
ちらりと下を見ると、トレインしてきたナイトスケルトンが3体、階段をのぼってきていた。
「姉ちゃん、先に!」
今度は姉ちゃんがおれを追い越して上へ進む。
『ソルマ』
階段で並んだところを貫通型でピーンと貫く。もともとソルハかソルハンで削った分があるからトレインしていたヤツらだ。ソルマ1発で十分倒せる。もちろん、チリリリリーンは回収。
そのまま姉ちゃんを追いかけて階段をのぼる。
のぼる。のぼる。のぼる。
3階へのぼった瞬間、使用人の男性がスケコマに刺し貫かれて倒れていくのが見えた。その向こうで扉が破られ、スケコマとナイトスケルトンが部屋へと入っていく。
『レラシ』
姉ちゃんが何の迷いもなく、回復魔法スキルを使った。
おれも並ライポを1本、ふたをへし折って投げつける。
通りすがりに、使用人の男性がまだ息をしていることは確認した。
でも、ここで声をかけてるヒマはなさそうだった。
……なんで、この屋敷が狙われてる? 誰かがホネホネに指示を?
部屋へ飛び込む。
窓の近くにヴィクトリアさんがいて、それを守るようにメイドさんとおじいちゃん執事が立ち、その1歩前で、女騎士が二人、スケコマと剣を合わせている。
しかし、多勢に無勢だ。
このままでは危ない。
「リアっ!」
姉ちゃんが叫びながら突進する。
「……イエナねえさまっ!」
……ねえさまって、ちょっと、おい、ヴィクトリアさん? ウチの姉ちゃんにどういう慕い方してんの? いや、そりゃさ、姉ちゃんの方が年上だけどな? 百合か? ユリ科の何かなのか?
「姉ちゃん、かわして、みんなの間に入るぞ!」
ナイトスケルトンが振り返って、剣を振り上げる。
「アインさまっ!」
おじいちゃん執事の鋭い声がする。
左側の女騎士が、スケコマの1撃をもらって膝をついた。
『レラス』
姉ちゃんは本当に迷いなく、回復魔法の光を放つ。
「癒しの御業をっ!?」
メイドさんの……名前なんだっけ……なんとかさんが驚いた声を出す。
おれは一瞬だけ足を止めて、ナイトスケルトンの前に立つ。
姉ちゃんがその横をすり抜ける。
ナイトスケルトンはほんの少しだけ姉ちゃんへ首を動かしたが、立ち止まったおれに向けて剣を振り下ろす。
おれは急加速して右斜め前にかわし、ナイトスケルトンの脇をすり抜けた。
ナイトスケルトンの剣が空気を切り裂く。残念だったな。
「ぐぬぅっ」
おじいちゃん執事がスケコマから1撃喰らった。
『レラサ』
すぐに姉ちゃんの回復魔法が飛ぶ。
回復魔法のキラキラのエフェクトは、なんともいえないロマンチックさがある。そのため、なんだか場にそぐわないよな。
その回復魔法とほぼ同時に、姉ちゃんが膝をついた女騎士の前の2体のスケコマを槍スラッシュの2連撃でまとめて消し去る。
……スラッシュは技後硬直2秒じゃん! 何やってんの! 何やってんの、姉ちゃん!
「や、槍の女神の……」
膝をついていた女騎士がそうつぶやきながら立ち上がって、おじいちゃん執事が相手にしていた1体のスケコマへと向かい、おじいちゃん執事に加勢する。動揺してる感じだけど、行動は意外と冷静だよな。なかなかの騎士なのか?
ナイトスケルトンが振り返って、技後硬直の姉ちゃんに気づいて、剣を振り上げながら接近する。
「イエナねえさまぁっっ!」
ヴィクトリアさんの悲鳴が響く。
……大丈夫。間に合った。いや、姉ちゃんはたぶん、1撃くらいならもらっても耐えられるけどな。
おれは右側に回り込み、もう一人の女騎士が相手にしている2体のスケコマと、姉ちゃんを狙ったナイトスケルトンを射線上におさめていた。
『ソルミ』
2本の光がぐるぐると回転しながらまっすぐに進み、2体のスケコマを消し去りながら、さらにナイトスケルトンも貫く。これで、剣を振り下ろす前におれへのタゲ取りは完了だ。
そして、呆然とした顔で突然目の前の敵が消えたことを確認している女騎士の前に踏み込み、肩の高さで構えた青白く光るバッケングラーディアスの剣をまっすぐ突き出した。
剣から飛び出たランツェの青白い光が、おじいちゃん執事の前のスケコマと、ナイトスケルトンを貫いて消し去る。
「……ひ、光、魔法? まさ、か? それ、に、剣神の、御業?」
……隠して戦うほど余裕があったワケじゃねぇーから、これはもうしょーがねぇーよな。
もともと、ヴィクトリアさんを助けて、この世界の歴史を変えることが最優先だし。姉ちゃんも回復魔法連発したし。
おれと姉ちゃんの技後硬直が解ける寸前……。
「……その者……気高く美しき聖女をともない……神聖なる光をもって……メフィスタルニアを……魔の呪いから……解き放つであろう……」
ヴィクトリアさんの口から、小さく、本当に小さく。戦闘が終結したばかりの静けさがなければ聞こえなかったんだろうなというくらい、小さく。
どこかで聞いたことのある、フレーズが聞こえた。
「い……」
「ぐわあああっっっ!!」
技後硬直が解けて、左手の小さな動きでタッパを操作し、金貨や銀貨をアイテムストレージに収納しつつ、今のは何ですか、と聞こうとした瞬間。
廊下から、大きな悲鳴というか、断末魔というか、そういう声が響く。
ひょっとしたら、さっき姉ちゃんが途中で回復魔法をかけてきた男性使用人かもしれない。
……ナイト1、スケコマが階段で1、ここで5だから、合わせて7だろ? 1隊7名を全部倒した計算になると思うんだけどな? そうすると、こいつは……。
「ひいっ!」
その、装飾が美しい剣とよろいを身に付けた威圧感のあるホネホネに、ヴィクトリアさんから高貴な令嬢とは思えない悲鳴が出た。うん。聞かなかったことにしてあげなきゃな。
やっぱりナイトスケルトンカーネルか。なんでこの屋敷に……。
一気に、室内の緊張感が高まる。
さっきのヤツよりも、明らかに強いヤツだと、はっきりと見た目でわかる強敵。
おじいちゃん執事も、女騎士も、さっきのヤツらを1体も倒せていない。
そこに姿を見せた、それ以上の存在。
心の底から感じる恐怖。
身近にある死を実感する。
硬直する身体。
そらしたいのに動かせない視線。
戦うことさえ、できない。
……まあ、おれたちに任せてくれれば何の問題もないんだけどな。
「アイン? ツインで? それともランツェ?」
ツインでクールタイムスイッチか、それともランツェをからめるクールタイムスイッチか、どっちで挑むのか、という意味だろう。姉ちゃんもかなりわかってきたよな。
ま、姉ちゃんにとってはカーネルさんはボスモンスターだという意識なんだろう。
でも、こいつは、鍛冶神ダンジョンの3層ボスのカーネルさんとは違う、モブのカーネルさんでしかない。モブカーさんはHP3000クラス。階級的にはパワドゾンビやハイグールよりも格下。動きはよっぽど速いんだけどな。
正直なところ、モブカーさんはもはや雑魚。
なんだか今にもちびりそうな顔してる女騎士さんのためにも、ソッコーでぶっ倒してあげないと尊厳が危険な感じがする。
「大丈夫」
おれはちょっとだけ、新しい装備、バッケングラーディアスの剣をアピールする。
「これがあれば楽勝だから」
おれの言葉が聞こえたのか、背後の視線が一斉にこっちに集まった気配を感じる。
「そう。じゃ、まかせるわ」
姉ちゃんが守るべき5人……女騎士もそこに含んでるのが本当は違和感なんだけど……の前に槍をかまえて仁王立ち。
おれはゆっくりと、スラッシュの予備動作をしながら、モブカーさんに近づく。
モブカーさんが、トライデルの予備動作を始める。
さすがに攻撃力2倍の3連撃など、喰らうワケにはいかない。おれは床を蹴って一気に加速する。
そして、モブカーさんが予備動作を終える直前に、青白い光をまとったバッケングラーディアスの剣による2連撃がモブカーさんを襲う。
ツインにつなげようとバッケングラーディアスの剣をおれが振り上げた瞬間、技後硬直がくる。
連続技のミスではない。
ナイトスケルトンカーネルはスラッシュ1発で姿を消して、チリリリリーンと何十枚もの金貨を落した。
技後硬直は2秒。
硬直が解けた瞬間、転がっていた金貨も含めて、小さな左手の動きによって不自然に消えるけど、みなさんにはそこを気にしないでもらえると嬉しい。
「い、1撃で……」
「すごい……」
どこから空気が漏れてるんだろうか、と心配になるようなささやき声で、ヴィクトリアさんの護衛の女騎士がつぶやく。声に出しているつもりはないのかもしれない。ちなみにスラッシュは2連撃のスキルなので正確には1撃ではないとも言える。
おれは、ゆっくりとこの屋敷の生き残りである5人を振り返る。
「遅くなりました。申し訳ありません」
おれはそう言って、頭を下げた。強敵をあっさり倒して得意満面などということはやらない。
もっとも重要なヴィクトリアさんを守るという意味では目的を今のところ達している。でも、この部屋にたどりつくまでに、何人もの使用人が倒れているのを見た。
おれとしては間に合ったと思うけど、それは間に合ったと言っていい状況ではないのだとも思う。
本当は護衛を頼まれてたワケでもないんだから、おれたちがここに来たのはあくまでも善意だ。もちろん下心はめっちゃあるけどな。あるんだけども。
だからこそ、自分の心のけじめとして、失われた命に対して一度頭は下げる。
そして、同時に……。
「オブライエン殿。護衛騎士のお二人には失礼なこととなりますが、どうか、私どもを、護衛として雇って下さい」
……できるだけ高く、おれと姉ちゃんを売らなければならないのだ。
この先。
隣国の大侯爵であるケーニヒストル侯爵の庇護を、可能な限りおれたちにとって都合のいい形で受けるために。
ヴィクトリアさんの救出と保護。
死霊にメフィスタルニアが占領されたとしても、優先するべきこと。
それが、おれの記憶の中から見つけ出した、大貴族の庇護を受けるためのもっとも簡単な方法。
そうして、姉ちゃんと、おれ自身をどっちも守る。
そのためだけに、おれはこの世界の歴史を変えてみせる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます