光魔法の伝説(18)


 10日間ほど、古き神々の神殿に潜る。


 いつものことなんだけどな。


 4層は、一度のぞいたけど、かなり危険だと判断して、手出ししてない。あくまでも3層ボスへの近道として渦だけを利用する。

 ま、4層は適正レベル35だからな。やってやれないことはないけど、まだ早いよな。無理し過ぎるとアイテム消費が増えるし。何事もバランスだよな。


 お預けしていた商業神ダンジョンの3層の攻略も済んで、ボックスミッツの上位魔法となる上級スキル・ボックスマックスも入手して、ボス戦ローテは鍛冶神3層でのサイフ回収を時間調整とする6体のボス狩りになっている。


 しかも、スタポのおかげで、これまでよりも長く1日の狩りを続けられる。SPを半分残して折り返さなくても、残り2割でスタポを飲んで折り返せば十分な安全マージンが取れるのだ。

 加えて、ここのダンジョンなら渦で脱出可能な分、残りSPに合わせて渦近くにいれば、かなり安全に帰還が可能だ。

 まあ、スタポ作成魔法であるリゲインズアワリゲインはクールタイム30日で、10日のマジポや5日のライポほどの数はないんだけどな。


 リタウニングのクールタイムの10日という間隔に縛られて、2か月で最大30日のダンジョン狩りだから、スタポはほどよく節約しながら使ってはいる。

 マジポやライポはかなり使っても余るからな。ライポは流通させる分も合わせて、それでも余るし。


 流通させる分は並ライポだけだから、素材の質を落として作成しても、上ライポができた分は売り物にならなくなる。

 まあ、医薬神ダンジョンで喰らうナナフシの不意打ちが何発か貯まったら上ライポ飲むんだけどさ。

 間違って1本、上ライポをガイウスさんに渡した時、ガイウスさんが飛び上がりそうなくらい驚いてたよな。

 もちろん、渡したからには上ライポの適正価格で売ったけど。そういや、魔族のわらわっ娘も上ライポには目を見開いて驚いてたっけ?


 一番ほしい矢の材料となるホネなんだけど、なんでホネホネ軍団からはドロップしねぇんだろうな? 最近、イエモンの狩場が見つからないから、ホネ不足なんだけど。まあ、矢は買えばいいか。


 今、おれはレベル31で、姉ちゃんの推定レベルは28か、29だ。姉ちゃんのレベルはライポの最大作成数で計算できる最大MPからの推定だからたぶん正解に近い。

 レベル30になれば、攻撃魔法スキルか回復魔法スキルの王級が使えるようになるから、王級の呪文さえあればレベルの推定はしやすいんだけど、王級の呪文の入手の方が難しいしな。


 今度、水の女神の古代神殿のダンジョンでチャレンジしてみるか?

 さすがに安全マージンが確保できないような……くそっ、地の神の古代神殿が近くにあれば、ドウマリ、ドウマルあたりが使えるようになって、水ダンジョンも楽になるのにな。

 大陸の反対側だからなぁ。水ダンジョン頑張って火ダンジョンで楽するってパターンだけだと、このままでは限界があるよな。


 やっぱ、『聖者が護るカタコンベ』の攻略が先か?

 あっこのレベ上げは効率、今ならめっちゃいいよな、たぶん。んで、資金も入ると思う。アンデッドダンジョンだし?

 その分、メフィスタルニア全体を危険にさらすんだけど……いや、どうせ何もしなかったら、メフィスタルニアは陥落するんだし、いいのか、べつに?


「むずかしい顔、してるわ? 大丈夫?」

「姉ちゃん……」


 一人で農業神ダンジョンの1層に行っていた姉ちゃんが戻ってきていた。でっかいとうもろこしを両手にかかえたままだ。収穫したてなんだろう。もぎたて焼いたらめちゃウマだからな。最近は、こういう単独行動も少しずつ増えている。弟離れ? まさか? え、そうなの?


「ここは、あたしたちだけ。もっと楽にして? 外でいろんな大人と関わってつかれた? でも、アインががんばってるから、いろいろとうまくいってると思うわ。ありがと、アイン」


 姉ちゃんの優しい一言に胸キュンです。


「……うん。大丈夫、姉ちゃん。ガイウスさんとか、いろいろやってくれて、ホントはすっごく、おれも助かってるからさ」

「そう? それより、今度、クレープ屋で会った女の子からさそわれてる・・・お茶会? あれ、行くんでしょう?」

「行くよ」

「気をつけてね」

「えっ? 姉ちゃんも呼ばれてるからな? 一緒に行くよ?」


 何言ってんだ、姉ちゃん! あのお茶会は姉ちゃんが重要なんだぞ? 言えないけど……。


「そうなの? だって、あたし、うまく話せないわ? あの子、き族なんでしょう?」

「この前、めちゃくちゃしゃべってたよ?」

「あれはあわててたから! それにき族だって知らなかったし……言葉づかい、苦手だもん」

「あの子、姉ちゃんの言葉遣いに、何も言わなかったよな? きっと今度も大丈夫だから。おれだけで行ったら、逆になんか変な感じになるしさ」

「……わかったわ」


 しぶしぶ、という感じ丸出しで、姉ちゃんが了承した。

 よかった、本気でとことん拒否されなくて。


「……そのかわり、メフィスタルニアにもどったら、クレープ」

「うん。いいよ」

「2枚」

「店ごとでも」

「………………それは、いらないわ」


 ……あれ? 今、ちょっと考えたんじゃね? 姉ちゃん? まさか店ごとほしいと思ってるのか? 前はそうじゃなかったよな?


 まさか、な……。


「…………でも、かじしんさまのダンジョンで手に入るお金があれば、たぶん店ごと買えるのよね」


 ……なんか、とんでもないつぶやきが聞こえてきたけど、気のせいだよな?






 さて、メフィスタルニアに戻り、宿屋に顔を出す。

 すぐに、誰かが宿から出ていく。


 ……まさかと思うけど、たぶん、そのまさか、なんだろうなぁ。


 おれと姉ちゃんが、部屋のカギを受け取ったところで、ガイウスさんが現れる。


「少し、話を……」


 そして、ガイウスさんについて、階段をのぼる。


 おれたちの部屋は2階にあるけど、ガイウスさんの部屋は4階だ。4階はこの宿の最上階で、ちなみに一番いい部屋、らしい。これって、本当に必要経費なの?


 まあ、商会の代表代理みたいな偉い人が、ちまちましたせまい部屋にいたらなめられちゃうんだろーけどな。商売人には見栄も大事か。


 4階の廊下には南側に大きなドアがひとつ、北側にドアがふたつ、合わせて3つしかない。


 ガイウスさんは南側のドアを開けて、どうぞ、とおれたちを通してくれる。


 入ったところはゆったりとしたリビングルーム? みたいなところで、ソファとソファテーブルがあって、メイドさんが控えてるんですけど、何この部屋? っていうか、廊下にひとつしかドアがないって、南側全部、ガイウスさんが借りた部屋ってことか? いや、ベッドルーム複数で、あとの二人もここにいるんだろうけど?


 え? いわゆるスイート?


「キミ、外してくれるかい?」


 ガイウスさんが声をかけると、メイドさんは一礼して部屋を出ていく。


 メイドさんが出ていくと、ガイウスさんはおれたちにソファをすすめて座らせ、ガイウスさんはドアにカギをかけてから戻って、それから座り、すぐに口を開いた。


「……単刀直入におうかがいしたいのですが、オーナーはケーニヒストル侯爵家とメフィスタルニア伯爵家の、どちらに取り入ろうとお考えでしょうか?」


 ……いきなりの爆弾投下。なんでそういう話が出る?


「……さっき、宿から出た者を見ましたか?」

「ああ、いましたね」

「あれ、ケーニヒストル侯爵家……の孫娘の関係の者のようです。オーナーとお嬢様の動向を確認して、領主の別宅へと知らせる役割でしょう。毎日のように、この宿に来ております」


 あ、そうなんだ。がっちり監視されてる? そこまで? なんで?


「……どうして、そういう情報を?」

「実は、こちらに取り込んだヤルツ商会の人間からの情報で……」


 ガイウスさんはゆっくりと説明してくれた。


 ヤルツ商会……ハラグロ商会と敵対しているライバル商会で、ここ、メフィスタルニア最大の、もっと言えば、このトリコロニアナ王国最大の商会だ。

 ライポの取引を軸に、王族、大貴族とのつながりを得て、商会主は爵位も授かったらしい。

 金で買った爵位で領地はありませんが、とガイウスさんはふんと鼻を鳴らして言う。


 ……爵位が金で手に入る可能性があるっていうのは、ありがたい情報だけど。


 で、ヤルツ商会に内部工作をしかけていくと、当然、メフィスタルニア伯爵家とはずぶずぶの関係だったのは調べるまでもなく有名な話なんだけですぐに判明。

 その跡取り息子の婚約者が大河をはさんだ隣国の大侯爵の孫娘で、今、メフィスタルニアに滞在していることを掴んだ、と。さらに、その婚約者と接触した同世代の子ども……女の子と男の子で、黒髪黒目……がいて。ヤルツ商会はその子どもが何者なのか調査しているという情報も入った、と。

 いや、オーナーとお嬢さま以外にそんな子どもはいないだろう、と……。


 これはオーナーが何かの意図で動いている。勝手なマネをして、オーナーの思惑から外れる訳にはいかないので、ということでここに来て頂いた、ということらしい。何ソレ? ガイウスさんすごい。有能過ぎます。


「……という訳で、すでにヤルツ商会から目をつけられております。どうせ、ウチとの関係もすでに知られているはずです。あくまでも、見習いのような下働き、ということですが」

「……すごいですね、商人たちの情報網って」


 ……っていうか、ガイウスさん、仕事早っ! もうすでにライバル商会に完全に食い込んでんじゃん! まだメフィスタルニアに入って20日も経ってないよ?


「クレープのお店でぐうぜん会っただけだわ? その子がそんな有名な? き族の子だなんて知らなかったもの」


 姉ちゃんが言う。

 ごめんなさい。おれは知ってました。言ってないけど。


「偶然……」

 姉ちゃんを見ていたガイウスさんがおれに視線を移す。「……ですか?」


 どうしてそこ、疑問形なの? ガイウスさん?


「……出会ったのは偶然ですよ。ただ、メイドと護衛騎士を連れた同年代の女の子だったから、この子とつながりがもてるといいかもしれない、とは考えましたけど」

「そんなこと考えてたの?」


 姉ちゃんがびっくりしたとばかりに言う。ごめん、姉ちゃん。本当はもっといろいろ考えてた。


「だから、どちらの家の方とかは、知りませんでした。お名前も、家名は名乗られませんでしたし。それで、彼女はメフィスタルニア伯爵家の跡取りの婚約者で、隣国の侯爵家の孫娘、なんですね?」


「……はい。ヴィクトリア・ド・フォルノーラル子爵令嬢です。フォルノーラル子爵は、ケーニヒストル侯爵の跡取り息子ですから、次期侯爵です。ヴィクトリアさまは末娘なので、侯爵も孫娘をかわいがってはいるようですが、まあ、一族の女は政略結婚の道具であるというのは貴族さまたちの常ですからね。かわいがっていても、出すべき時に、出すべきところへ出すものです」


「それがここ、メフィスタルニア伯爵家だ、と」


「ええ。隣国で最大の商都を支配する伯爵家ですから。ですが、ウチがヤルツ商会を追い落としていけば、メフィスタルニアの価値は下がるということも考えられます。オーナーのお考えが、ヤルツ商会の後釜としてメフィスタルニア伯爵家に取り入ろうとして次世代につなぎを作ろうとしているのか、隣国への進出のためにケーニヒストル侯爵家との直接のつながりを欲しているのかで、われわれの動きも変わります。おそらく……」


「おそらく?」

「……本当に偶然ということであれば、あくまでも、ヤルツ商会とともにメフィスタルニアも潰す方向で動かれるつもりなのだとは思いますが?」


 ……何ソレ? ガイウスさんってば、おれのこと、どんなヤツだと思ってやがります?


 ヤルツ商会を潰す? まあ、それは、似たようなこと、言った覚えもあるから、百歩譲って、そこはいいとしようか。よくねぇけど。


 でも、メフィスタルニアを潰す? それ何? 美味しいの? どっちかっつーと、可能ならメフィスタルニアは守りたい、ぐらいに考えてんだけどな?

 いや、そう簡単に守れるとは思ってないから、メフィスタルニアが死霊都市になるという前提での行動も選択肢には入ってるけどな? 入ってるけども! でも、それはおれがメフィスタルニアを潰すワケじゃねぇし?


「……ここに支店は作るな、というご指示でしたよね?」

「指示なんか、したことはないですよ、ガイウスさん」

「……ああ、そういう助言を頂きましたよね?」


 ……ガイウスさんにとって、おれの言葉は指示に当たるの? なんでまた? あ、いや、オーナーって言われてるからか? 確かに最大の資金提供者だし、オーナーにあたるとは思うけどな?


「では、隣国の大侯爵とのつながりは、どうなさるので?」

「……それは、彼女がそういう人物だとわかったからには、必要だと考えています」


 もともとそのために近づいたんだしな。クレープ屋で待ち伏せしてさ。

 そういう心の声はもらさないけどな。


 これ、初日でヴィクトリアさんに出会えてなくて、2、3日クレープ屋に張り付いてからだったら、ガイウスさんは偶然じゃないって確信してたか? 初日で偶然出会えてラッキーだったかもな。






「……では、これは王都に支店を出す資金としてお預かりいたします」


 ガイウスさんは、おれが並べた金貨2000枚を小袋に分けて自身のボックスミッツに収納していく。


「……これで、いずれは、世界最大の経済都市である港湾都市ケーニヒストルータにもウチは支店を出すんでしょうな。全ての商人の夢でもありますし」


 あ、そうなんだ。


 ケーニヒストルータ……大河に面する大きな町で、水路がたくさんあってゴンドラがいっぱい動いてる、水郷都市みたいって思ってた。

 全ての商人が店を出したいと憧れる世界最大の経済都市だったとは知らなかった。

 知ってることは、アニメでレオンが双子の妹リンネと再会する町だってことくらいか?


「あと、ご指示通り、本店からメフィスタルニアに4人、派遣するように手配は済んでます」

「……だから、指示とかしてないってば、ガイウスさん」


「ああ、そうでしたね。では、オーナーからお願いされたその件はきちんと進めております。ですが、奴隷にした者たちで本当によかったので?」

「奴隷になって買い取られた人たちは、商会を絶対に裏切れないんですよね?」


「そうですね。奴隷契約はかなり厳しいですし、逃げて奴隷であることを隠すのは難しいことです。他の商会が奪うようなことをすれば、その商会は自滅しますから、どこも奴隷には手出ししません。買い取ろうとすることはあるでしょうが、こちらが売らねばよいので」


「それなら、奴隷の方がいいですよ、やっぱり。あと、ガイウスさんたちの護衛は大丈夫ですか?」


「……正規の金額で雇える、信頼できる者はもちろんそろえましたし、とある方々に相談したところ、ずいぶんと優秀な護衛をつけてくださいました。まあ、ウチにはオーナーから頂いた豊富な資金がございますので。ご心配頂き、ありがたく思います。ま、はした金で動くような連中は、もうウチの馬車を襲撃してこないと思いますよ?」


「優秀な護衛?」

「……オーナーだから言いますが、何人かの貴族さまから騎士や兵士をお借りしております」

「そうなんだ……そういや、あん時の生き残りの、あの人たち、どうしたんです?」


 おれと姉ちゃんが乗ってた、ガイウスさんが御者を務めた馬車は、実は襲撃を受けている。その時、生かして捕えた者が二人いたんだけど、そいつらの話だ。


「元いたところへ帰らせました」

「え? 役人に突き出さなかったんですか?」

「それでは効果がありませんので」


 ガイウスさんが笑う。怖い怖い怖い、マジで。その笑いは怖いって! 役人に突き出したら効果がないって政治批判で行政批判だよな?


「……あの両手両足を見て、まだはした金で動くような者は、スラムにさえいないと思いますよ?」


 ……生かして捕えた二人は、ガイウスさんが尋問した。


 まあ、小銭もらって襲撃してくるような連中だから、実のところ、ほとんど情報は持っていなかったんだけどな。


 黒幕は誰か、誰に命令されたか、と問い詰めるにあたって、知らないと答える度に、尋問していない方の指を切り落とすという蛮行……それ見た姉ちゃんは平然としてたし、その襲撃で姉ちゃん、襲撃してきた連中を平然と殺してたけどな。

 人を襲うからには殺される覚悟はあるはずってのが姉ちゃんの考えだからな。

 生かして捕えた二人は、おれがたまたま相手にして、ビビッて殺しきれなかっただけだから。おれが見逃したヤツの中にも、姉ちゃんがとどめ刺したのがいっぱいいたから。

 異世界の常識は日本の非常識だからな? いや、おれが甘いってことはよーくわかってんよ?


 結局、問い詰めてる相手も、指にナイフを押し当てられてる方も、どっちも、本当に何も知らねぇんだ! と最初は大きな声で叫んでて……最後の方は消え入るような小さな声で、知らない知らない何も知らないもう許してくれ、知らないんだ本当に何も知らないんだ……みたいな感じでぶつぶつ言って、ぶつって指を切り落とされてたけどな……。

 かわりばんこに質問されて、知らないから知らないって言ってんのに指を1本ずつ、手足の指合計20本、×二人分で40本の指をガイウスさんはかわりばんこに切り落とした。

 おれ、それ見てて、貧血で倒れるかと思ったからな。いや、マジで。


 自分が知らないって言ったら、他のヤツの指が切られて、次は自分が切られる番とか、報復じゃねぇけど知らないって言われるだろ、そりゃ。そんな目に遭ったらどういう気持ちになんのか絶対想像したくねぇ……。


 ガイウスさんの話では、ガイウスさんたちは、メフィスタルニアのいろいろなスラムを回って、最後はそいつらが育ったスラムに投げ捨てたとか。

 そこらじゅうのスラムで、こいつはハラグロ商会の馬車を襲ったヤツだが、誰かこいつを知らないかー、それとこいつに依頼したヤツを知らないかー、知ってたら金をやるぞーって、ハラグロ商会の名前を宣伝して回ったらしい。

 最後にはウチの商会を狙おうって話があったら教えてくれれば悪いようにはしないからなーって。

 そんで情報くれたヤツに銅貨1枚の1マッセ払って、集まったスラムの連中がそいつらの血が固まった手足の指がないのを見てドン引きだったとか。

 手足の指を全部切り落としても依頼したヤツのことは知らないって言いやがるんだ、誰か知ってたら本当に教えてくれよって言って去っていくんだと。

 おれたちを相手にしたらこうなるけどそれでもキミタチはおかしな依頼を引き受けますか~? ということを伝えたいらしい。

 いや、言葉だけじゃ通じない相手は確かにいるけどな。いるんだけども!

 ハラグロ商会はもはや指切り商会だよ! 指切りするけど、約束守るとかそういうヤツじゃねぇからな! マジで!


「そういうことですんで、小銭程度で、うちの商会に手を出す者は、もうメフィスタルニアのスラムにはいなくなったと思いますから。聞くところによると、ヤルツ商会の連中も、20人近い人数が襲ってきてもあっさりと撃退する凄腕の護衛がウチの商会の馬車には付けられてるという認識のようですよ? オーナーとお嬢様に護衛の依頼が届くかもしれませんね? まあ、もう襲撃はしないでしょう。無駄ですから。では、3日後にはメフィスタルニアを出ますので」


 超こえーよっっ! 異世界スタンダードがっっ!


 ちなみにその凄腕の護衛はウチの姉ちゃんだよっっ!!





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