光魔法の伝説(12)



 古き神々の神殿。


 ゴーレム軍団に守られたこの神殿、実はここ、ゲーム『レオン・ド・バラッドの伝説』ではワールドマップの北東端に位置する。


 この神殿のさらに向こうに出ると、断崖絶壁の下に海が見える。

 ただし、今回はそこまで行くつもりはない。

 なぜなら、そっち側のモンスターが凶悪だから。今のレベルでは立ち入ると即死だろう。推定適正レベル55だからな。

 なんでラスボスの魔王がいる魔王城よりも適正レベルが上なのかは謎だ。魔王城は適正レベル45だから。ゲームクリアは多くの人がレベル50くらいで達成している。


 アイアンゴーレムが守っていた門柱を抜けて、10段ほどの階段をのぼる。


 古代ギリシア建築? そんな感じのあの柱? エターナルだか、エタノールスだか? ウィキとかで調べればわかるんだけどな?

 神殿の形は上から見ると正六角形で、6本のそんなふっくら系の柱に天井と屋根が支えられた石造りの中央神殿は安全地帯で、中心に女神像がある。


 その女神さまは創造の女神アトレーさまだ。スキルはなくて加護がある、格上の神さま? のはず。


 そのへんはそこまで詳しく覚えていない。アニメでは出てこない場所だ。


「きれいな人……」


 ……姉ちゃん、それ、人じゃねぇーから。女神さまだから。


 まあ、女神さまだけあって、ひとつの美の極致ではある。

 あと、アトレーさまは、ボンっきゅっボボンっっという大きくて、しまっていて、さらには安産型だな。悪くはない。悪くはないんだ、それも。


 おれは、うーん。どちらかというと、どうだろ、ほどよいサイズで美乳な感じの水の女神さまとか、そっちの方がいいんだけどな。


 あ、癒しの女神でもある月の女神さまはアトレーさまに近い巨乳系女神さまな。包容力があるってことだろうし。


 ちなみに戦の女神イシュターさまは、なんというか……とってもスレンダーなタイプだな、うん。ザ・えいかぁぁっっぷ! という感じだな。動きやすくて、戦いやすそうだし?


 入口となっていたテツコの庭は神殿の南西に位置する。アトレーさまの女神像はそっちを向いている。


 海へと抜け出るのは神殿の北東。入口側と同じく、10段ほどの階段と、門柱がある。外壁はない。門柱だけが残っているのか、そもそも門柱だけだったのかは、よくわからん。


 六角形のうち南西が入口で、北東が別の入口……出口かもしれないけどな。あと残りの四辺に、それぞれ創造の女神アトレーの眷属である四柱の神々の神殿が付設されている。


 テツコの庭側の入口から見て左から時計回りに、商業神マッセの神殿、医薬神メードの神殿、北東の海への出口、鍛冶神トンテの神殿、農業神クッタの神殿という配置になっている。


 それぞれの眷属神の神殿は正方形だ。


 ここに来た理由はいくつかあるけど、メインは呪文の収集。あとはレベ上げと、素材やアイテムの入手。もちろん、『はじまりの村』から近い神殿、というのも理由だな。


「……それで、これからどうするの?」


 ずっとアトレーさまの女神像に見惚れていた姉ちゃんが、おれを振り返ってそう言った。


「今日は、農業神の神殿のダンジョンの一層で狩りをして、あとは中央の神殿で休息する」

「ダンジョン?」

「うん。モンスターがいる、なんか不思議な場所が神殿にあるんだ」

「……それも、村長さんの家で?」

「そうだよ」


 目一杯嘘だけどな。


「じゃ、さっそく、行くわ」


 姉ちゃんが動き出して、すぐに止まる。「……で、どっちに行くの?」


「右側の一番近くの神殿。あれが農業神の神殿だから」

「ふーん」


 姉ちゃんが農業神の神殿を目指して歩いて行く。

 おれも、その後ろに続く。


 農業神クッタの神殿には、アトレーさまよりも小さく造られたクッタさまの神像があった。クワを持っているところぐらいしか農業神っぽくねぇけどな。


 アトレーさまの神殿よりも低くて狭い、4本の柱に支えられた神殿。この形は残りの3柱の眷属神の神殿でも同じだ。


 そして、神像の後ろに、謎の渦が、青白く輝きながら、ぐるぐるとしている。


「なに、これ?」

「ここに飛び込むんだ。こうやって……」

「えっ……」


 驚く姉ちゃんを追い越して、おれは渦へと飛び込んだ。


 着地した場所は明るい大地。

 川が流れる水音が聞こえ、広がる田園風景が見える。後ろを振り返ると青白い渦がある。この渦に飛び込めば農業神の神殿へと戻れる……はず。


 おれに続いて転移してきた姉ちゃんが、どこかびくびくしながら、周囲を確認している。


「……なんで、こんなとこに?」


 突然の田園風景に戸惑う姉ちゃん。いや、それがフツーだと思うけどな。


「さあ? 神さまの神殿で起きる出来事だから、理由はわかんねぇよ、姉ちゃん。でも、この古き神々の神殿に滞在してる間は、一日の最後に必ずこの農業神のダンジョンで狩りをする」

「?」

「まあ、すぐに理由はわかるけど」


 おれは、ずんずんとダンジョン内を進む。


 ダンジョンとはいっても、ここは迷宮ではない。

 一面に広がるのは田園風景。


「……これ、トゥラウティーヤ? あっちはタラタライモ? なんでこんなところに畑が?」

「農業神のダンジョンだから?」

「これって、とってもいいの?」

「いいと思う」

「わあ……」


 姉ちゃんがトゥラウティーヤ……おれの目で見たらちょっとでっかいとうもろこしなんだけどな……の畑に突入して、鎌を使ってとうもろこしの収穫を始める。さすが姉ちゃん。最初はちょっとビビってたのに、畑作業となると夢中になってる。


 家の手伝いでずっと畑仕事をしていた姉ちゃんは、めっちゃ早い動きでとうもろこしを収穫していく。


 しかもボックスミッツで3段ボックスを呼び出して、がんがんとうもろこしを詰め込んでいる。どんだけとうもろこし好きなんだ?


「アインーーっ! 手伝ってーーっ!」

「いや、おれは周囲を警戒してるから?」

「?」

「ここ、モンスター出るからな、姉ちゃん」

「そうなの?」


 姉ちゃんが手を止めて、周囲を見回した。

 ちょうどそこへモンスターが現れた。


 大きな豆から上へと太めの蔓が伸びている。ちなみに豆にはかわいい足がはえてる。


 ジャックジュニア……通称『まめ子』だ。HP20クラスモンスター。つまり、フォレボとかバンビとかと同格。今さら、経験値にはならない。弱点属性は火。


 おれはタッパを操作して久しぶりに木の枝を装備すると、剣術系上級スキル・トライデルの3連撃でしとめた。赤いつぼがドロップする。


「お、ラッキー」

「なに、それ?」

「これは、調味料だよ、姉ちゃん」

「調味料?」

「うん。味噌だ」


 赤いつぼは味噌。ちなみに黒いつぼなら醤油だ。フツーはかごに入った枝豆のドロップが多い。


 続いて現れたモンスターは、真っ白の猪、ホワイトボア……通称『ジョジョ』だ。HP50クラスでフォルテウルフ……群れイヌと同格。弱点は火。だけど絶対に火なんか使わずに倒す。


 こっちに気づいて突進してくるジョジョ。

 おれは木の枝でスラッシュを準備して、突進を喰らう前に2連撃をぶつけた。


 ジョジョ……ホワイトボアが消えて、特上肉がドロップする。なんと、こいつの特上肉ドロップ率は100パーだ。火の神系の魔法を使わない限り。


「こんどは、お肉?」

「しかも特上な」

「うそっっ!」


 さすがの姉ちゃんもビックリだ。


「ここって、のうぎょうしんさまの……? まさか?」

「何、姉ちゃん?」

「食べ物がしゅうかくできて、食べ物がモンスターから手に入るところ、なの?」

「大正解! その通りだよ、姉ちゃん! だからこの古き神々の神殿で修行する間は、一日の最後に必ずこのダンジョンに入る!」


 そうして、食糧を確保する。残念ながら、既に経験値は入らないクラスのモンスターなので、熟練度を上げるために物理中心で戦う。


「すごい……ゆめみたいなとこだわ」


 姉ちゃんが目をきらきらさせて、農業神のダンジョンを見つめていた。


 結局、姉ちゃんのとうもろこしといもの収穫作業が終わり、おれが熟練度上げとともに肉やら調味料やらをゲットして、農業神のダンジョンを後にする。


 アトレーさまの神像の後ろにある休憩所で、食事と宿泊をする。メインディッシュは特上肉で、とうもろこしは2本ずつ、あの後まめ子からドロップした醤油をぬって焼いたものを食べた。姉ちゃんは焼きトウモロコシ醤油味を大絶賛だ。


 アトレーさまの神像の後ろにある休憩所は、なんか、イメージとしたら小さな少年自然の家みたいな宿泊施設のようなものか? 子どもの頃、林間学校とかで行くようなとこ? カレーが作れるかまどと調理台があって、部屋には簡易ベッドもある。


 安全地帯……のはずだから、ゆっくり休める、と思う。


 明日から、本格的に各神殿のダンジョンを攻略していく。


「メインの攻略対象は、医薬神のダンジョンな」

「いやくしんさま?」

「ああ。ここは絶対攻略していく。今後、必ず役立つから」


 医薬神の神殿のダンジョンは森林ダンジョンだ。

 薬草が採集できるし、モンスターがポーションの素材となる薬草をドロップする。

 それに、医薬神の魔法スキルの呪文を回収できれば、MPを回復させるマジックポーションや、SPを回復させるスタミナポーションを作成することができるようになる。


 特にスタポは重要だ。スタポがあれば、通常の攻略も、ボス戦とかでも、とにかく楽になる。


 ダンジョンの2層で中級スキルのマジポ作成魔法、3層で上級スキルのスタポ作成魔法を見つけなければならない。

 4層の、HP、MP、SPを3つとも回復させるエクスポーションの作成魔法については、悩むところだ。4層は適正レベル35とかなり危険だからな。

 おれはまだしも姉ちゃんにはきつい。王級スキルを手に入れるのは難しいかもしれない。


 おれがゲーム知識として覚えてたらよかったんだけどな。

 さすがに初級スキル以外は、生産系にのめり込んでなかったら知らないと思う。初級スキルを覚えてただけでも大したものだと思うけどな。

 全ては創造の女神アトレーの加護をゲットするためだった。


「ほぼ同格で重要なのが鍛冶神のダンジョン」

「かじしんさま? どうして?」

「まずドロップに武器や防具がある」


 おれはにやりと笑う。「お店で買わなくてもいいし、『はじまりの村』で買える物よりも上のランクの武器や防具が手に入るんだ」


「それは、いいかも」

「あと、上級スキルで武器が作成できるようになれば、ためこんだホネとかキバとかで矢が作れるし、もうひとつの上級スキルはあのバイアトの強化版だからな」

「バイアトより強いまほう? バイアトが2ばいだから、5ばいとか?」

「そりゃすごすぎ。バイアトの上はトライアト、3倍だよ、姉ちゃん」

「3ばいかぁ……」

「3倍でもすごいからな」

「うん、わかるわ」


 わかってんのかな、本当に? 筋力3倍だからな? 60分間だけど。熟練度1の間は。

 鍛冶による武器や防具の作成での成功率を2段階アップさせる。

 中級スキルの防具作成魔法とか、上級スキルの武器作成魔法とかの成功率を高めるための魔法スキルなんだけど、ボス戦で自己強化に使われることの方がゲームでは一般的……だとおれは思ってる。


「第3目標は商業神のダンジョン」

「ボックスミッツのかみさまだわ」

「そう。その商業神。狙うのは中級スキルのリタウニングだな。行ったことのある町へと転移できる」


 商業神のダンジョンの2層で手に入る呪文だ。これ以外はまあいいか、という感じで。


「てん、い?」

「そ。一瞬で移動できるってこと」

「それが、てんい?」

「そうだな」

「それって……すごいわ。どうしてだい1目ひょうじゃないの?」

「んー……戦いに直接関係しないから、かな?」

「ええ? だって、それがつかえたら、すぐにシャーリーに会えるわ!」

「あ……」


 ……その発想はなかった。


「……残念ながら、そのスキルを身に付けた後に訪れた町とか村とかでないと転移できないんだ、姉ちゃん」

「あ、そうなんだ。じゃあ、シャーリーには会えないわね」


 そう簡単なことではないけど、ここの探索を終えたら『はじまりの村』に戻って、一度シャーリーのとこまで旅をすれば、可能ではある。


 ただし、あっち方面のモンスターではもう経験値が稼げないので、そういう意味では行く必要がないというのも残念だ。効率優先なら、あり得ない。


 レベル上げだけが目的なら、この神殿にしばらくこもるというのもありっちゃアリなんだけどな。


 実は、リタウニングの転移先には神殿関係も入るから、ここに来るのはリタウニングを手に入れればそう難しくはない。そこまでほしい呪文が他にはないってのも、あるけどさ。


「あれ? のうぎょうしんさまのところは?」

「あそこは毎日、最後に食糧のために入るだけ」

「えええ? じゅもんはいらないの?」

「農業神系の魔法スキルは、あんまり……上級スキルでも料理を作るとか、だからな。姉ちゃんは料理、得意だよな?」

「……ずっとおそわってきたから」


 ……うん。母ちゃんにずっと、教わってきたよな、姉ちゃん。


「……魔法がなくてもできるから、今回は1層の食べ物だけでいい」


 農業神系特殊魔法スキルは、創造の女神アトレーの加護のために覚えてた初級スキル・ハダッドヌール以外は、そんなに必要だと思わないというのが本音だ。食べ物はめっちゃ必要だけどな。


 中級スキル・ハサードノイエマタンは、ハダッドヌールで光らせた素材を収穫する魔法。自分で収穫すればMPもSPも節約できる。時短はそこまで求めてねぇし。


 上級スキル・ラディーズアクルは食品系素材を材料としてそろえると料理(食品アイテム)を作成することができる魔法。熟練度1で成功率3割とか、姉ちゃんが作ってくれたらそれていいよな?


 というワケで、農業神さま、ごめんなさい。


 いつか、洗礼前に時間があれば、また来ますから。






 翌日。


 確かに、アトレーさまの神殿は安全地帯だった。夜中に目が覚めてしまうのは相変わらずなんだけど、姉ちゃんにくっついたらよく眠れた。


 あれ? おれの安全地帯って実は姉ちゃんじゃね?


 ま、いっか。それはそれ。


 最重要課題はスタポ作成魔法の入手。


 とはいえ、いきなり医薬神のダンジョンへと突入して3層攻略を目指すというのは、なかなかに無謀な気がする。3層は適正レベル25で、おれはともかく、姉ちゃんはぎりぎりという危険度だろうし。


 まずは準備から。


 武器と防具を整える。ゴーレムのせいで、銅のつるぎや鉄のやりはかなり破損したからな。


 目指すは鍛冶神ダンジョンの1層だ。銅のつるぎやはがねのつるぎ、革のよろいなんかも落とすはず。


 ここでモンスターを狩って、武器や防具をドロップさせてから、医薬神のダンジョンの攻略を始める。


 ……そんなことを思っていたこともありました、と。


 いや、その。

 人間の欲望って、限りないよな、ホント。


 予定では初日に鍛冶神ダンジョン1層で武器や防具を集めたら、2日目には医薬神ダンジョンの攻略に入るつもりだったんだけどさ。


 ダメでした。

 おれが。


 2日間で、鍛冶神ダンジョンの2層まで攻略したよ、思わず。1日目で1層攻略、2日目で2層攻略だからな。一気に進めた。進めてしまった。


 鍛冶神ダンジョンは洞窟タイプで、たぶん鉱山をイメージしてるんじゃねぇかな。薄暗いけど周りは見える程度。なんでだろうか? 不思議だ。


 なぜか出てくるモンスターは骨アンデッドタイプと人形パペットタイプ。たぶん、武器や防具を使えるモンスターだからって、ことだと思う。


 1層はHP20のスケルトンとか、動くパペットとか、HP50のスケルトンファイターとか、踊るパペットとかが、武器や防具を装備してエンカウントしてくる。


 1層で銅のつるぎ7本、はがねのつるぎ4本、革のよろい5着、青銅の盾3枚、ゲットした。姉ちゃんの槍もほしかったけど、まだ予備もあるから、それでいいやってことになる……はずだったんだけどさ。


 いや、その、それがさ。

 ドロップしちまったんだよな。あれが。


 骨アンデッドから。

 しかも、毎回、必ず。倒す度に。


 そうなったら、なんてーのかな? もうテンションが上がっちまって。つい、な。

 いやでも、そりゃ、盛り上がっちまうだろ?


 だって……銅貨や銀貨がドロップしたんだからな!


 マジで!

 いやもう、大興奮だから!

 ゲームかよって思ったからな!


 倒せばチリリーン、倒すほどにチリリリリリーンだからな!


 え? アンデッドって、元人間って扱いだからかな? お金ドロップとか、今までにない状態に興奮しないワケねぇだろ? アンデッドとの対戦自体が初めてってのもあったけどさ?


 しかも弱点属性が光だろ? こいつら?

 太陽神系魔法で倒すとドロップ率が上がって、ばんばん銀貨が落ちるわ落ちる!


 1層無双で銀貨ほくほく! 剣術スキルの熟練度稼ぎを忘れちまうほど太陽神系魔法をピカピカ光らせてやったぜ!


 ハハハハハハハーーーーっって高笑いしながら走り回ってエンカウント増やして鍛冶神ダンジョンの1層を荒らしてやったからな!


 ……おれが夢中になり過ぎて、姉ちゃんがお金持ってないパペット相手に槍スキル振り回してSP残量2パー以下のせいでディレイするまでSP消費しちまったからな。そこは大反省だけど。なんだけども!


 2日目は姉ちゃんの槍がいる! というタテマエのもと、鍛冶神ダンジョン1層をソッコー突破してそのまま2層に突入。


 2層はまだ適正レベル15だからもう姉ちゃんでも余裕な? さすがに初日ほど興奮はしてなかったからな? 姉ちゃんディレイさせる気はないし? でも野望はあったけどな。野望はあったけども!


 HP200のスケルトンアーチャーとHP300のスケルトンコマンダーが組んで出てきたり、奥の方だとそれにHP500スケルトンコマンダーチーフまで加わったりもすっけど、こいつら銀貨どころか金貨までドロップしてくれんの、マジで。

 お金ドロップしないHP300の剣舞のパペットとか、HP400の長槍のパペットは姉ちゃん中心で勝負してもらって。いや、手伝うけどさ。


 1回、ホネだらけのモンスター部屋を見つけて、罠とか関係なく太陽神系魔法をぶちかまして大暴れしたな。金貨50枚以上ゲットだったから!


 もうこりゃ、死霊都市メフィスタルニアに行くしかねぇよな! そういう決意を断固たるものとしておれは抱いたからな!


 2層では7つの石版も見つけて、無事魔法もゲット。

 鍛冶神系特殊魔法中級スキル・トンカンヨタロテイは防具作成の魔法。消費MP16でクールタイム10日。

 呪文は『われ力溢れる鍛冶神に乞い願う、我らの防具を生み出し、守る力を、トンカンヨタロテイ』で、タッパのメモ帳に入力済みだからもう忘れません。

 ちなみに7つの石版のうち3つは同じく中級スキル・バイアトのものだったんだけど、こっちは覚えてるから最後まで集めなかった。


 はがねの槍5本、ウォーランス2本のドロップで姉ちゃんの武器も確保。おれ用の剣の予備も増えたし、1本だけだけど、ミスリルソードも入手。これはボス戦とかでうまく運用していく。


 モンスター部屋での大量の金貨ゲットで少し気持ちが落ち着いたおれは、鍛冶神の神殿はいったんここまでで探索を中断して、翌日からは医薬神のダンジョンへ行こうと姉ちゃんに提案。姉ちゃんがため息まじりに同意した。


 もちろん、2日目の夕方には農業神のダンジョンで特上肉とかを入手しましたよ。姉ちゃんをディレイさせたりしてませんから!






 3日目。

 メインイベントの医薬神のダンジョン。


 1層はHP20のジャマクサとHP50のウォークツリーが出る。どっちも薬草でライポの素材でもあるヒダマリソウをドロップする。まあ、ヒダマリソウとツキミダケはこのダンジョンの1層ならある程度採取できるけどな。


 でも、1層はじっくり探索せずに、一気に突破。

 そんで2層。モンスターは3種類でどれもHP400クラス。


 揺れるラフレシアはねむたい花粉での睡眠デバフ、ポイズンツリーは名前の通り毒攻撃という面倒なタイプ。

 毒攻撃はレジストできなかったら1分1ダメージが60分間続く。まあ、ライポ飲むだけだけどな。

 こいつらの弱点はもちろん火。マジポ素材のサリイソウをドロップするんだけど、ドロップ率が下がっても、ソッコーでおれが火の神系魔法で処理していく。眠らされたり、毒を喰らったりする方が手間が増える。


 一番面倒なのがビッグセブンスだ。こいつはでっかいナナフシ。

 まあ、森林タイプのダンジョンでナナフシとくればわかるよな?

 つまり隠密タイプで、先制攻撃をやられちまうのが困る。毒とかはないけどな。

 ドロップはマジポの高級素材であるサマンサダケ。なんでナナフシからきのこがドロップするのかは不思議な謎。フシギナナゾ。七不思議ぞ?

 いや、ひとつだけどな!


 2層は石版を探しながら、3層につながるボスの居場所も探す。


 とにかく、ここでマジポが作れる中級スキル・マナリスマナリオンスは手に入れておきたい。


 ボスは見つけて、石版は1枚~、2枚~、3枚~、で1枚足りな~い。でも、おれのSPが残り3分の1ではそろそろ折り返しポイントだ。


 1層と違って、2層ではボスを倒さないと3層には行けない。


 とりあえずボスを確認してから、戻ることにして、ボスチェック。


 2層のボスは人食い魔木。ボスだからHPは増し増しでこまる。

 HPバーは60本で6000だ。こないだのテツコに比べたらどうということもない。モブならHP1000なのにな。

 でも、今日のところはとりあえず撤退。どうせ弱点は火だから。ドロップ率は下がるけど、倒せればそれでいい。


 ただし、問題は、こいつが最後の石版をドロップする、というパターンの場合。


 まだ最後の石版が見つかってないけど、もし最後の1枚がボスドロップだとすると、火の神系魔法を封印して戦うのはちょっとだけ面倒になるよな。






 医薬神ダンジョンを脱出して、農業神ダンジョンへ移動。

 今夕の食材をゲットして、アトレーさまの神殿に戻る。


 ホワイトボア……ジョジョを倒してゲットした特上肉を焼いて、まめ子からドロップした醤油をつけて食べる。うまし。


 姉ちゃんも幸せそうな顔で焼きながら食べてる。おれの分を焼きながら、自分の分も焼いて食べる姉ちゃんの世話焼きにはめっちゃ甘える。ここにレオンがいたらおれはヤキモチ焼くけどな!


「……人食い魔木は、姉ちゃんにバイマナイスかけてもらって、おれが火で攻撃して倒す作戦かな」

「ううーん。まだえいしょうしょうりゃくできなから、じゅもんをかくにんしておくわ」

「頼むね、姉ちゃん」


 月の女神系支援魔法中級スキル・バイマナイスは、魔力を2倍にする支援魔法だ。

 魔法攻撃力がほぼ2倍になるし、人食い魔木の弱点属性は火だから、4倍にできるってことになる。

 熟練度1で60秒、2で120秒、3で180秒間、効果が続く。バイアトと違って自己強化はできない。バイアトは自己強化しかできないけどな。


 火の神系単体型攻撃魔法初級スキル・ヒエンガはクールタイム5秒だから11回か、12回、中級スキル・ヒエンギは10秒だから5回か、6回、威力2倍でぶちかませる。

 火の神系範囲型攻撃魔法中級スキル・ヒエンアイラセを組み合わせてもいい。敵が単体でも別に範囲魔法を使っちゃダメだってことはないからな。


 明日はボス戦だな。





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