光魔法の伝説(10)



 泣き止んだ姉ちゃんと、基本的な作戦を守るという約束をして、先に進む。


 広くなったスペースには2体のゴーレム。

 ストーンゴーレム……イシゴが2体だ。これは初めてのパターン。


「イシゴ2体、1にトライダンツとツラ、2にツリでお願い」

「うん」


 姉ちゃんが素直にうなずいて、弓矢をかまえる。


『ザルツリ』


 おれはイシゴ1にザルツリを発動。


『ザルツラ』


 さらに、イシゴ2にザルツラを発動。


 魔法スキルは使用時間というクールタイムはあるけど、物理攻撃スキルと違って技後硬直はない。そこをうまく使い分けていきたいところだ。


 風の刃がゆっくりと動くゴーレムを切り裂く。いや、切り裂けてるのかな? ダメージは弱点属性だからかなりあるけどさ?


 姉ちゃんがトライダンツをイシゴ1に放つ。矢は命中。今日はゴーレム戦でまだ一度も外してないな。的が大きいからだろうか。それともレベルアップの器用さアップか?


「…………『ザルツリ』、『ザルツラ』」


 技後硬直が解けた姉ちゃんが風の神系魔法を連続で発動させる。

 おれは2体のイシゴを確認しながら走って前進する。見極めるのは弱点の文字の位置。


 イシゴ1はおでこ、2はみぞおちに文字が浮かんできている。


 まずはイシゴ1に接近。


『ソルミ』


 2本の指先からのうねる光がおでこを捉えて貫くが、まだ倒せない。

 そのままイシゴ2へと移動して銅のつるぎを装備しながら、左手の人差し指でみぞおちを指す。


『ソルマ』


 1本の光がみぞおちを貫通する。でも、ゴーレムはまだ消えない。


「姉ちゃん、1に槍ツインを!」


 黙ってうなずいた姉ちゃんが弓を離して槍を拾うと、予備動作を行いながらイシゴ1に迫る。


 おれはトライデルを発動させて、イシゴ2を倒す。何もドロップしない。


 姉ちゃんが連続技のツインを振るうが、連続させる前にスラッシュだけでイシゴ1は消えていった。石がいくつかドロップした。


 別に使い道はないけど、とりあえずアイテムストレージに石を収納する。


「たおせた……」

「イシゴはガンゴより格下だからな」

「うん」


 でも、姉ちゃんは嬉しそうに笑った。

 よかった。さっき泣いたから、こうやって笑ってくれると、安心する。


「休憩してるとガンゴが出そうだから行くよ」


 そう言って先に進む。






 さっきまで左右どっちかにカーブしてた参道が、まっすぐに戻った。しかも、明らかに登りだとわかるくらいには傾斜がある。


 どうやら、最終ポイントが近い。


「たぶん、次が最後」

「そうなの?」

「でも、今日はまだ、本気でやらない」

「……本気でやらないとしぬわ」


 ……いや、それは確かに真理なんだけどな。真理なんだけども。


「なんていうか、本気でやるための下調べっていうか……今日は、この先の相手をよく確認して逃げるよ」

「……わかったわ」


 ……姉ちゃんが引き下がってくれて一安心です、はい。


 坂を登り切って、ぎりぎりのところに立ち止まる。


 おれの横に姉ちゃんが並ぶ。

 広いスペースの向こうには建物が見えていて、その手前に、ゴーレムがいた。


 今までよりも、でっかいヤツが。体長は6mはありそうだ。しかも、なんだろう、黒光りしてる?


 タッパの表示色は赤で、『SEFB』の文字がある。


 スモール・エリア・フィールド・ボス。フォルテベアスを相手にする度に目にするアレだ。


 敵はアイアンゴーレム……アインゴーレムではない。おれの物ではなくて。こいつの通称は『テツコ』で、そしてこのスペースは通称『テツコの庭』だ。部屋じゃなくて庭。


「姉ちゃん、ここから動かないで待ってて」


 そう言い残して、おれは前進する。


 近づくと、HPバーが浮かんできた。そして、ずっしーーーーんっっ、ずっしーーーーんっっ、と足音を大きく立てて動き出す。重さ抜群って感じだな。


「……そんで、またコレかよ」


 おれの視界は無数のHPバーに埋め尽くされていたのだった。






 HPバーの数を確認したら、とりあえず全力で走って撤退。


 姉ちゃんの手を引いて、このスペースから逃げ出す。

 下り坂を半分くらいまで走って、そこで待機。


「アイン……?」

「しっ。足音、確認して」

「……きこえなくなったわ?」


 そう。

 あの、ずっしーーーーんっっ、という音が聞こえなくなった。


 この参道にまで追ってくるのなら、次のスペースまで引きつけてトレインして、そこから回り込んで追い越し、戦わずに神殿へと入れるんだけどな?


 そう甘くはないらしい。


「姉ちゃん、猟師の弓を準備して」

「? どうして?」

「おれが衛士の弓を使って、アイアンゴーレムを引きつけるから」

「……わからないけど、わかったわ。やりは、とりあえずいらない?」

「そうだな」


 姉ちゃんがボックスミッツを使って3段ボックスを出し、槍と衛士の弓を片づける。そして、猟師の弓を取り出して装備する。


 おれは銅のつるぎを収納して、衛士の弓を装備した。


 猟師の弓よりも、衛士の弓の方が武器補正は大きい。同時に使えば、筋力も合わせて、タゲ取りはおれになる。


「今からアイアンゴーレムとおにごっこするよ、姉ちゃん」

「……なにが言いたいのか、わからないわ、アイン?」

「とりあえず、使う御業はダンツで。それで、アイアンゴーレム……テツコが近づいてきたら、姉ちゃんが先に逃げて、反対側へ回り込む」

「回りこめばいいのね」

「で、遅れておれが回り込むけど、その間にダンツを準備しておいて」

「わかったわ」

「そんで、それを繰り返して、テツコとの位置関係を何度も入れ替える。これを練習しときたい」

「れんしゅう、なのね」

「そう。でも真剣に。相手はこれまでのヤツより強ぇからな」


 こくり、と姉ちゃんがうなずく。そしてすぐに矢をつがえた。

 おれも矢をつがえて、姉ちゃんにうなずくと坂を登る。


 神殿前の広いスペースでは、テツコが元の位置に戻って立っていた。

 おれたちはすぐにダンツの準備に入る。


 予備動作は攻撃判定なので、テツコが動き出す。


「いけ!」


 姉ちゃんが矢を放ち、おれもすぐに続けて放つ。

 どっちも命中するが、おれの分だけノックバック発生。


「まだだ。もうちょっと引きつけて」


 テツコがずっしーーーんっ、ずっしーーーんと、近づいてくる。


「姉ちゃん、横に大きくふくらんで、円を描くように反対側へ」


 姉ちゃんが言われた通りに移動していく。移動しながら矢をつがえている。そういうセンスがいい。


 おれは、テツコが1m手前にきてから、姉ちゃんと同じように横へと逃げる。


 タゲ取りはおれの方だから、おれの動きに合わせてテツコが身体を動かしていく。腕を振るうが、おれはもう逃げているのでかすりもしない。


 それでもここまでの3種類のゴーレムたちよりは少し動きが速い。もちろん、全体としては遅いんだけどな。


「姉ちゃん、ダンツの準備!」


 姉ちゃんが弓を大きく持ち上げて、引き分けていく。


 姉ちゃんのかまえた猟師の弓矢が青白い光をまとった頃、おれは姉ちゃんの隣に並ぶ。そして、同じようにダンツを準備する。


 姉ちゃんが矢を放ってテツコに命中させる。ノックバックあり。でも、さっきからヤツのHPバーは動いているように見えない。たぶん、おれも姉ちゃんも、弓術ではダンツを使っても1ダメだ。


 おれも矢を放つ。命中。ノックバックなし。やっぱり、的がでかいとよく当たる。次のレベルアップで器用さが多めに伸びるといいな。


「だいたいこれぐらいの間合いで姉ちゃんが先に移動だから」

「おぼえとくわ」


 姉ちゃんが横へと移動して、回り込んでいく。タゲ取りがちゃんとできているから、テツコは姉ちゃんに気を取られない。


 テツコが1m手前になると、おれも逃げ出す。


 ダンツを20回分、繰り返して、最後は坂を下って逃げた。また、さっきと同じところで待機する。


「足音は?」

「きこえないわ」

「おれも聞こえない」


 ということは、また、元の位置に戻ったのだろう。


「なんとかなりそうかな。姉ちゃん、本番はクワドダンツの10秒、予備動作にかかるからな。慌てちゃダメだからな」

「10びょう……がんばるわ」

「おれはトロアか、クワドラプルを使って接近戦をする」

「……ええと、カッターでノックバックがなかったらトライダンツのまま矢をはなって、ノックバックすれば次のランツェをまって、クワドダンツで矢をはなつのよね?」

「トライダンツは別にクワドダンツになってもいいけどな」

「うん。おぼえたわ。でも、そのまえにクワドダンツをみにつけないとダメだけど」


 ……姉ちゃんのSP管理をおれがしとかないと、ボス戦でのディレイとか強制スタンはやべぇからな。


「そんじゃ、次だけど……」

「まだやるの?」


 姉ちゃんが驚いてるけど、安全マージンを考えながら戦うには、情報は必須だ。


 もちろん、いろいろと実験はやっとかないとな。






 いろいろ、とはいってもSPやMPの限界もある。


 とりあえず、風の神系魔法スキルがどれくらいテツコに通るのかは、確認した。


 姉ちゃんはザルツラもザルツリも、ほとんどHPバーが動かず。あれは1ダメだ。弱点属性なのにテツコの魔法防御を抜けない。


 おれは、ザルツラとザルツリを合わせて、HPバーを3つ削った。300ダメ。魔力値高いしな。けっこー、イケてる気になった。しかも、かなり安全に狩れる可能性がある。


 だから計算したけど、風の神系魔法スキルで勝負するなら、ザルツラとザルツリが64回ずつ必要になるとわかった。

 消費MP384で、消費SP256だ。残念ながら足りない。どっちも足りないからな。

 ボス戦まで途中のゴーレム軍団も相手にしなきゃだし。マジポとスタポがないって、かなりキツい。


 あ、ボステツコのHPバーは192本。HP19200だ。イミわかんねぇよな。HPバーだらけでよく見えねぇんだよ、あん時みたいに。

 いや、あん時以上か。モンスターとしての強さは、『見逃し仮面』の方が絶対に上だけどさ。


 あん時より装備はマシになったし、レベルも上がって、姉ちゃんがパーメンになったから、たぶんなんとかなるとはおもうけどな。


 ちなみに、テツコを無視して神殿に入ろうとしてみたけど、なんでか見えない壁みたいなのがあって入れませんでした。残念。倒さなきゃダメだってことだろうな。


 帰り道、イシゴとサンゴのリポップはなし。ただし、ガンゴとは2度遭遇して、始末しといた。


 そのまま、参道の外のモンスターも狩って、そこで野営準備。


 姉ちゃんが見張りの場合は、何かあったら必ずおれを起こすときつく約束させて、休息をとる。


 リラックス効果も求めて、食事は特上肉を焼いてもらった。うまかった。姉ちゃんもほっぺたとろけ落ちそうな顔して喜んでた。よかった。


「さむくなってきたわ……」

「冬まであとひと月半だからな」


 それぞれが毛布にくるまったままで身を寄せ合い、おれと姉ちゃんは交代で眠った。






 ゴーレム祭りの2日目。


 スタート時間を3時間、わざと遅らせる。今日はテツコに挑む気はないので、参道入り口付近のモンスターを狩って、経験値を稼ぎ、熟練度を上げておく。


 そして、3時間遅れの朝8時スタートで『おかわりゴーレムロード』に突入。


 サンゴ2体、イシゴ1体、サンゴ2体、イシゴ1体、サンゴ3体、イシゴ1体、サンゴ3体、イシゴ2体という広場のモンスターには変化なし。

 そして、姉ちゃんとの連携も馴染んで、銅のつるぎが折れた一戦を除けば、サンゴ戦とイシゴ戦はもはやパターンワークだ。そして、『テツコの庭』には入らずに折り返す。


 行き帰り合わせて、ロックゴーレム……ガンゴとは4度、戦った。そのうち2回はおれのカッターでも姉ちゃんのトライダンツでもノックバックが起こらず、おれが1発もらう展開。姉ちゃんがすんごい顔しながら『レラサ』かけて踏みとどまっていたのが見えて、おれは思わず苦笑する。


 姉ちゃんのメンタルはタンクだ。自分が傷ついて仲間を守るのはいいけど、仲間が傷つくのは嫌なんだろう。何も知らずにヒーラーを望んだけど、ダメージを受けて治療するよりも、ダメージそのものを受けてほしくないという感じ。


 まあ、おれとしても姉ちゃんがダメージを受ける姿は見たくないから、譲れないけどな。


 参道の入り口に戻って、周辺のモンスターで経験値稼ぎと熟練度上げをしていると姉ちゃんが口を開いた。


「……なんで、今日の朝はゆっくりしてからはじめたの?」

「ん? 実験だよ、姉ちゃん。明日の朝、参道のゴーレムがリポップしてなかったら、テツコの庭までガンゴの相手だけして進めるんじゃねぇかなって」


 もしリポップタイムがきっかり24時間だったとしたら、そういうことが起こる可能性もある。それならテツコに挑む本番はHP、MP、SPにゆとりをもって戦える。ゆとり大事。


「さすが、アイン……せこいわ」

「くっ……」


 わ、わかってる。わかってるけど、姉ちゃんヒドい!


 まあ、姉ちゃんがクワドダンツを身に付けるまではテツコにはチャンレンジしないけどな。






 ゴーレム祭り3日目。


 朝イチ5時で確認したらサンゴ2体がフツーにいた。リポップしてやがる。


 一度戻って、時間を潰す。残りSPを計算しながら周辺のモンスターを狩って、5時間遅れの10時スタートで参道に突入。


 各広場のゴーレムに異状なし。


 そんで『テツコの庭』の手前の広場でのんびりと休憩する。


 その結果、休憩は悪手と判明。

 だって、どんどんガンゴがエンカウントしてくる。


 休憩でのSP回復分以上に、ガンゴと戦ってSPを消耗する。これなら休憩をはさまずに『テツコの庭』へと突入した方がいい。


 まあ、ガンゴでコンビネーションの練習はできたけどな。相変わらず、ノックバックが取れずにおれがダメージを喰らった時の姉ちゃんの顔が……こっちが逆に心配になるくらいだ。


 7体目のガンゴを倒してすぐ、姉ちゃんが言った。


「……今、左うでも光ってたわ」


 弓術のダンツとその発展タイプは、光る部位の増加でわかる。基本となる予備動作は同じで矢を放つまでの待ち時間しか違いがないからな。

 ダンツは3秒で弓矢、トライダンツは6秒で弓矢と右腕、クワドダンツは10秒で弓矢と両腕が青白い光に包まれる。


 左腕も光った、ということは姉ちゃんがクワドダンツを使えるようになった、ということ。


 テツコ戦の準備がひとつ進んだ。






 ゴーレム祭り4日目。


 朝イチの5時チェックで、サンゴ2体がリポップしてた。


「もうあきらめるべきだわ」という面倒くさそうな顔をした姉ちゃんのセリフに、前日のスタートを遅らせて翌日は駆け抜けるだけという夢の作戦は断念することにした。


 その代わりに、『おかわりゴーレムロード』を一気に突破する。がんがんゴーレムを狩って、走って次のところへと向かう。


 結果、テツコの庭までにガンゴとの対戦は1度だけ。


 これなら、走り抜けた方が、SPが一番多い状態でテツコと戦えるだろう。まあ、参道の途中でレベルアップして回復するという手もありだけど、いつになることやら。


 戻って入口から一番近い広場で休憩しつつのガンゴ狩り。経験値はこの辺で一番多いのは間違いないので、レベ上げとしてはかなりいいかも。

 姉ちゃんにトライダンツからクワドダンツまでの4秒のタイミングを覚えてもらって、おれのカッターからランツェへの流れに合わせる練習も重ねる。


 おれがダメージを受けた時の姉ちゃんの表情は変化なし。






 ゴーレム祭り5日目。


 朝イチで『おかわりゴーレムロード』に突入してガンガン進み、テツコの庭へ。


 テツコの庭では、テツコ相手に小手調べとコンビネーションの確認。


 おれがクワドラプルを仕掛けて、カッターでノックバックなしだったら姉ちゃんからトライダンツ、カッターでノックバックありなら、次のランツェにつないで、そこでノックバックなしならクワドダンツ。

 姉ちゃんがノックバックを取れずにおれがダメージを受けたら一時退避で、レラサとライポによる回復をはさむ。


 HPバーの削れ具合から、クワドラプルによる与ダメージ計算で、テツコの推定物理防御と推定物理攻撃は判明。

 クワドラプルなら6~7回でしとめられるはずだし、一応、2発もらってもおれは死なずに耐えられると分かったので、本番は筋力2倍のバイアトをかけて、そのまま時間をかけて戦えば、なんとか倒せそうだ。


 スキル攻撃が混ざると危険だけどな。混ぜるな、危険。薬品か! ポーションほしいけどな! 特にスタポ! スタポ重要!


 撤退して、昨日と同じように入口付近の広場でガンゴを狩る。


 参道を出て周辺のモンスターを狩って野営準備。


 明日テツコと勝負する、そう姉ちゃんに言うと、姉ちゃんが首を横に振った。


「ダメ」

「え? なんで?」

「クワドラプルだとあぶない。ツインがいい」


 ホワイ? なんでだ? 姉ちゃん? 何言ってんのさ? はまった時の与ダメはクワドラプルがある意味最強なんだけどな? ツインだとちょっと大変だろ?


「アインってば本当にバカよね」

「えええ?」

「ねぇ、アイン? 今日はガンゴでどうのつるぎが2本おれたわ」

「ま、ゴーレムってヤツらは固いから、そういうこともあるよな」

「クワドラプルにはトライデルをつかうわ」

「使わねぇとクワドラプルになんねぇよ、姉ちゃん。ツインじゃ、クワドラプルほどダメージ稼げねぇしな」

「でも、トライデルのぎごこうちょく? は、4びょうあるわ」

「ん?」

「あたしのトライダンツが外れたり、当たってもノックバックなしなら、4びょうだとアインはテツコから3回か4回、やられる……」

「あっ……」

「わかった?」


 ……わかってしまった。


 姉ちゃんすげぇ。

 おれは気づかずに、危険に踏み込むとこだった。


 フツーの相手なら、問題ない。でも、ゴーレムのような装備破壊が起きる確率が高いモンスターだと、ここで問題が発生する。


 もしも……もしも、だ。もしもスラッシュやカッターでなく、トライデルで銅のつるぎが折れたら。

 連続技は武器が壊れたら中断して、技後硬直は武器が壊れた時のスキルで起こる。

 そして、カッターと違ってトライデル自体にはノックバック効果がない。


 技後硬直4秒はまずい。

 テツコから3発は危険だ。4発だと確実に死ぬ。


 ……ふうううぅぅぅわぁぁぁ。今日の実験でそれが起きてたら死んでたわ、おれ。やべぇ。マジやべぇな。考え抜いてるつもりでも、抜けはある。


 クワドラプル最強! って思いでそこに考えが固まってた。固いとダメだ。柔軟にいかないと。ゴーレムだけに。


 おれは今、姉ちゃんに救われた。姉ちゃんに命を守ってもらった。


「明日は、ツインでじっけんのやりなおしからだわ」

「……うん。ありがと、姉ちゃん」


 テツコ挑戦は後日となったが、おれはもう一度自分の知識と作戦を見直すのだった。





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