遠くをみつめる
十六夜 狐音
あれがみえる?
高校生の僕は教室の窓の外をみつめる。
みつめるというより
そんな時君は僕に問いかけた
「この学校から見える景色って田んぼかこの大空を飛行する飛行機かひこうせんかヘリコプターくらいだよね」
「そうだなぁ」
僕も問いに答える。
僕たちはお互い仲のいい友達と言ったところだろうか、いや少なくとも僕は【友】という感情のほかにもうひとつの感情は抱いているけれど・・・
「君にはあのひこうせんがみえるかい?」
空に浮遊するひこうせんを指さして僕は言った。
ひこうせんの機体には大きく【LOVE YOU】といかにもな文字が書かれている。
君は「いいえ」と答えた。それから僕は「あそこに書いてある文字が君へ僕が抱いている感情だよ」とか言ってから気が付くような恥ずかしいセリフを並べた。
「稲刈り直前の田んぼは素敵よね。私はあんな田んぼが好き。」
よくわからないが彼女はそういう。
「視力が低下したときにどうしても回復したいと思ってトレーニングをしていたの、遠くの緑を見るといいとか、遠くをみつめることが大切だとか、目を動かすことが近道だとか。どれも試しに試しまくったわ。すると低下前より視力がよくなった気がしたの。」
そういえば彼女はいつも眼鏡をかけていたっけ。僕は視力がいいほうだと思うけどあのひこうせんの文字が見えるのが限界といったところか...
そんなとき彼女は僕がしたように窓の外をみつめて指をさす。そうして君はこういう「あの看板の文字が読める?あれが私があなたに抱いている感情よ」
彼女が指さしたほうに看板などは無く、いや僕が見えないだけだ。その時僕は彼女に返答をする。「今はみえない」と
お互いの会話を終え放課後、かなり距離があったが看板のことが気になり自転車で見に行ってみることにした、だが帰り道とは逆方向。帰りの支度を終え当番だった教室の掃除、職員室へ名簿を届ける任務を終えて僕は早速看板の方へ向かった。
確かにここには看板がある。「こんな距離をよくもみえたな」そんな感情に陥りながら看板の文字を確認する【テナント募集】その文字を見て僕はきょとんとした。
テナント募集という感情は意味が分からない。
からかわれただけだと思い、看板に背を向けて帰ろうとする。
足元にミニ看板がある。【それ''私も''】と書いてある看板をみて僕の顔はスイカの中身くらいの赤い顔になる。それはいいすぎか。
後方に気配を感じて再び大きい看板の方を見る。そこには坂がある、坂の上には彼女の姿がありニコっとはにかんでいる。
「よろしくおねがいします」僕は叫んだ。
遠くをみつめる 十六夜 狐音 @Kaikus30
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます