2章:再会

面接から2日後の朝を、迎えた。

「あーっ、まだ眠いー・・・」

「やべ、もうこんな時間・・・」

時計は8:30を指していた。

慌てて支度を済ませ、自転車を爆速でこぎ、バイト先へ向かった。


バイト先の約束の場所である食堂に着いた俺は、とりあえずスマホの画面を眺めていた。

約5分後、社員と思われる一人の女が来て、一通り説明を受けた。

そして、3階の作業場に行くように指示される。


3階に行くと、再び聞き覚えのある声が耳に入ってくる。

「おばちゃーん、その荷物はそこおいといてー!」

声の聞こえる方向を向いたら、やはり思った通りだ。

その声の主は、三日前の深夜にコンビニで奇跡的に再会した、安野 栞だった。

「ど、どうしてあいつがいるんだよ・・・」


・・・


午前の仕事はいろいろなことを教わっているうちに、あっという間に時間がすぎていた。そして、休憩時間を迎えた。

食堂へ向かうためエレベーターを待っていたときのことだった。

若い女二人組が俺に話しかけてきた。

「ねー、ねー、君が新入りの子?」

「はい、そうですけど・・・」

「ってカネゴンじゃん!!」

「こんなとこで何してんの?」

一番恐れていた事態が起きてしまった。

安野に気づかれてしまった。

ただ、安野はそんな自分にあきれたそぶりも見せず、話しかけ続けてきた。

「ねーねー、この前嘘ついたでしょー」

「まぁ、別にどーでもいいけど、その分ごはんおごってよ!」

そんな彼女の気遣いなのか天然さなのかわからない優しさになんだか少し励まされた気がしたし、救われた。

「この前は嘘ついてすまん・・・」

「つい見栄張って嘘ついちゃったわ・・・」

「だからきにしてないって(笑)」

こうして、二人は運命的に再会を果たした。

・・・

午後も一通り作業を終えた。

・・・

時計を見ると、18:00を回っていた。


一方の安野はというと、

「今日も疲れたねーー(笑)」

「この後ご飯いこーよ」

と、しつこく俺に問いかけてくる。

俺は仕方なくも安野とご飯に行くことにした。

「まぁおごってやるけど、杉家の牛丼で勘弁して。」

「やったー!奢りあざーっす!」

こうして、二人は杉家へ向かった。

・・・

杉家についた二人はテーブル席に向かい合わせで座り、それぞれ注文をすませた。

「牛丼(大)一つと、・・・何にする?」

「私はチーズ牛丼(並)で!」

「じゃあそれも追加で・・・」

「ご注文は以上ですか?」

「はい、」

店員が去り、二人の間には沈黙の風がながれた。

俺がスマホに目をやろうとすると、

「ねー、女の子とご飯来てスマホ見るとかマナー違反だよー」

と沈黙を破ったのはやはり安野であった。

「す、すまん。でも俺こういう経験全然ないからどうしたらいいか・・・」

「へー、ないんだー(笑)」

「このド陰キャの俺にそんな経験あるわけないだろ。」

「ふーん(笑)」

「だからやめろって」

「まぁそれはおいといて、カネゴンは今どういう状況なの?」

「え、えーっと・・・」

「大学の時、なんかみんなが就職するからって自分もするのはなんか違うなーなんて思って、結局卒業後はニートだった。」

「ふーん、そーだったのか。」

「就活はするの?」

「バイトしながら今後ね・・」

「そっか、がんばってね!」

「お、おう」

とだけ返事をし、特に深く安野のことは聞かずに、牛丼をかき込むようにして食べ、二人分の会計を済ませその日は解散した。

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