セカンド・ステップ

あるごのおと

1章:社会不適合者は自己変革を試みる

腹が減った俺は、夜中にパジャマにサンダルで家をでていった。

いつものように、立ち読みをし、カップ麺と肉まんを買うためにレジへ並んだ。

「いらっしゃいませ、ポイントカードはお持ちでしょうか?」

俺はどこか聞き覚えのある声でいつもの台詞を耳にした。

「ないです。」と、答える。

するといきなり店員が

「あーーー! やっぱりカネゴンだよね!!

漢城大学の時、同じサークルだった栞だよ!

覚えてないの?」

女はやけに高いテンションで俺に話しかけてきた。

俺は確かに大学時代サークルに所属していたが、二年の後半からほとんど顔を出していなかった。

店員の名札を慌てて確認すると

安野やすの」と書いてあった。

安野 栞やすの しおり、サークルで俺とは対照的なくらいまわりにうまく溶け込み、輪の中心にいたリーダー系の女子だった。

当時、俺はそんな安野のことが好きだった。

「お前ここでバイトしてたんだ。」と、とりあえず返しておく。

「うん。まぁあと3つバイト掛け持ちしてるんだけどね。」

「カネゴンは今どうしてるの?」

今の自分のことなど到底話せるはずがない。そう思った俺は、とっさに

「普通にサラリーマンしてる。」なんて嘘ついた。

「まぁまた今度機会あったらご飯でもいこカネゴン!」

「お、おう・・・」

そして支払いを済ませ、コンビニを後にした。


見栄を張ったことを、今更後悔した。当時好きだった女の子を前に今の自分をさらけ出すこともできなかった。そして、このコンビニでの再会を機に俺は就活することを決心した。



二日後・・・

ピピッ、ピピッ、ピピッ・・・

「あー、眠みーな」

アラームの音に起こされた昌弥はとても憂鬱な気分で朝を迎えた。

時刻は午前8:00だ。


あの日、コンビニへ行った後とりあえず、いくつかのバイトに応募した。

今日はその面接が9:00からあるため早起きだったのだ。

(普通の人からしたら早起きでもない)

支度を済ませた彼が向かったのは5階建ての大きな建物だ。その建物の上部には、賀川運送と書いてある。

面接は予定通り始まった。

面接はあまりにもスムーズに終わってしまいすぐに結果が出た。

思わず驚いてしまったが、即採用らしい。


「いつから働けるの?」

「今週から大丈夫です。」

「じゃあ、あさってからよろしく。そこの右曲がったとこにある食堂に8:50にきてください。」

「承知しました。ありがとうございます。」

「では、今日はもう大丈夫ですのでまたあさってからに備えてください。」

「失礼します。」


こうして、引きこもりニートの自己変革が始まった。

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