フジ

 あなたは疑うことを知らないから、私が促すまでもなく、素直に鉄格子の中へ収まりました。細い手足に瀟洒な鎖がよく似合います。

「わたしは病気なのでしょう。だから、ここから出られないのですね」

 私の言葉を鵜呑みにした、あなたの大きな瞳が私を見上げます。そのむき出しの首に指を這わせても、あなたは震えもしません。私があなたを治療するのだと、信じきっているのです。

「ねえ、わたしはどんな病気なのですか。あなたにはうつりませんか」

 ふたり入ればいっぱいになる檻の中で、あなたは熱に浮かされたように呟きます。その言葉が耳元から頭に回り、ええ、ですから、私も病気なのです。

 その病気は、私にしか治せないのですよ、だから、あなたはここから出てはいけないのですよ。

「いつ、治りますか。どうなれば、治ったと分かるのですか」

 腕の中で、うわ言のように繰り返すあなたの熱い身体を抱き締めながら、私はそっと答えました。

「あなたの熱が、私と同じになったときに」

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