チューリップ(原種)
生まれてこの方十六年、「真面目」を貫いてきた私だが、今、その「真面目」を捨て去るべきなのかどうか、真面目に検討している。それと言うのも真面目な話、好きな人ができたからだ。
彼女は私に劣らず、いやひょっとすると私を凌駕するかもしれない勢いで真面目だ。私と同じく図書委員の彼女は、私が真面目に仕事をこなす横で、更に真面目に、誰からも指示されていない作業に進んで従事していたりする。その作業そのものにも真面目さが表れており、例えばパソコンに入力された文字には決して誤字脱字は無く、ブックカバーの貼り付けも完璧だ。彼女はその全てを、真面目な表情を崩さず遂行するのだ。
しかし、恋心というものが、こんなにも不真面目なものだとは知らなかった。真面目な私が授業中や委員会活動中に彼女のことばかり考えて、ともすれば口元に笑みさえ浮かべそうになってしまうなんて、恋を知らなかった私に聞かせたら唖然とするに違いない。
恋愛について真面目に勉強し、古今東西ありとあらゆるラブストーリーを研究した結果、分かったことは「恋愛に王道無し」ということだった。真面目すぎるが故に相手に窮屈な思いをさせてしまうこともあるようだ。だが、やはり今更、生来の真面目さを捨て去ることなど出来ない。ここは持ち前の真面目さを、むしろ存分に発揮すべきだ。
そう思い、一月ほど推敲を重ねた恋文を、真面目に直接手渡すことにした。
「好きです、私の真面目な気持ちを受け取ってください!」
彼女は驚きながらも真面目にそれを受け取り、目の前で開いて読み始めた。辞すタイミングを逸した私がどぎまぎしながら待っていると、読み終えた彼女はやはり、私より遥かに真面目な答えを口にした。
「真面目に、お友達から始めましょう」
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