ピレスラム
悪い虫が寄り付かないようにと、生まれてすぐ祈祷師にまじないをかけられたという彼女の周りには、いつも数多の「虫」たちが倒れている。学校一のイケメンや、不良や、その他ろくでもない男どもだ。そういう輩が彼女に近づくと、まじないが発動する。突然の腹痛に見舞われたり、眼鏡が消し飛んだり、先生に呼び出されたり、警察に職質されたり、急に用事を思い出したりして、彼女に声を掛けることもできないばかりか、酷い場合は彼女を視野に入れることすら出来ない。
「こんなんじゃまともに生活出来ない」
彼女はぼやく。それもそうだろう、今日だってどう考えても守備範囲外のお爺さん先生からもプリントを受け取ることが出来ず、気の置けない友人(私)を介さねば、授業すら受けられなかったのだから。
しかし、彼女には悪いが、私にとっては好都合だ。どうやら彼女にまじないを施した祈祷師は前時代的な価値観の持ち主であったらしく、「虫」認定は異性に限定されている。同性はどんな下心を持って近づいたとしても、払われない。
「私が側にいれば大丈夫でしょ」と言うと、彼女は花のような笑顔を見せる。
「そうだね、キクちゃんがいてくれれば大丈夫」
小さな頃から聴き続けてきた言葉の、甘い香りにくらくらした。
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