ドウダンツツジ


「あたしね、宇宙人なの」

 くりっとした大きな目で私を見ながら、アカリは言う。はいはい、聞き飽きたよ、と私はテキトーに頷いて、目の前のパフェに集中する。

「でね、この星に来たのは」

「素敵なパートナーを見つけるため、でしょ。少女漫画とSFアニメの見過ぎだから。流石に大学四年生でそれは痛い」

 就職活動だって本格的にしなきゃなのに、アカリだけはのんびりと、いつも通りに過ごしている。切羽詰まっている私が馬鹿みたいだ。

「アカリの話を聞いてたら、落ちたのも気にならなくなってきたなあ」

「でしょ。計画通り」

 にっこり笑うアカリは雑誌に載ってないのが不思議なくらい可愛いくて、思わずスプーンを落としそうになる。

 喫茶店を出ると、既に外は暗かった。それもそうか。午後四時に家のポストに入っていたお祈り通知を見てすぐにアカリに電話して、それからあちこち連れ回したのだから。

「アカリ、今日はありがと。急に連絡しても飛んで来てくれて、こんなに付き合ってくれるのなんてアカリくらいだよ」

「当たり前でしょ。……じゃあ今日最後に行く場所は、あたしが決めて良い?」

 アカリから提案するなんて珍しい。そう思ってついて行った先は、通っている大学の別キャンパス、それも屋上だった。私たちが通う都市部のキャンパスとは違って山に近く、空気が澄んでいる。

「ダメ元だったけど、鍵が開いてて良かった」

 アカリは言うが、見間違いじゃなければ、アカリが手をかざした途端、鍵が開いた音がした気がする。

「アカリ……」

「サラサちゃん! 上見て!」

 言われた通り視線を上げると、今まで見たこともない星空が広がっていた。山とは言え、こんなにもハッキリと星々が見えるなんてこと、あるだろうか。

「あたし達の星では、運命のパートナーと出逢った時、普通より星が綺麗に見えるって言われてるんだ」

 聞き飽きた、なんて口を挟むことはしない。アカリと星空から目を離せない。

「サラサちゃんには、この星空、どう見える?」

 微笑むアカリの後ろで、満点の星空が虹色に輝いた。

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