ニチニチソウ
その花を見ていると、とっくに忘れたと思っていた記憶が次々と蘇ってきた。
「そういう花なんですよ」
花を持って来てくれたデイケア施設の職員は、にっこりと頷く。その間にもまた一つ、つぼんでいた花がパッと開ききるように、胸の中に思い出が開いていく。
学生服を着た少年の、控えめな微笑み。
そうだ、どうして私は忘れていたのだろう。あんなにも友情を誓った仲だったというのに。
次の瞬間、彼を喪った時の光景とともに、その時の空虚な感覚までもが蘇った。それを忘れることで、私はここまで永らえてこられたのだということが分かった。
「花言葉は、楽しい思い出。それと……」
目の前が急速に暗くなっていく。背を向けて花を見ている職員は、私の様子には気付かず言葉を続ける。
「生涯の友情」
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